表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/144

二人目の攻略対象者とヒロインの関係

 王子とマーベルを他人事のように怪訝そうな表情で観ていますが、次はあなた方の番ですよ。


「ある時から、手紙には別の方の事も記されるようになりました」


 王子は俯き、マーベルは次に私が何を語るのか拳を握り睨みつけている。

 私は攻略対象である側近の二人に視線を移す。

 まずは宰相の息子で公爵家の跡取り常に冷静沈着、熟慮断行のイーリアス・ゴードン、貴方からよ。


「試験の為に図書館にて勉強中のイーリアス・ゴードン様に、マーベル様からお声がけしたのですよね? その日からお二人だけの秘密の勉強会をされるようになったとか」


 イーリアスは元々感情を表に出さない人物。

 図書館に縁のない私からの発言に相当驚いているよう。

 ゲーム中、イーリアス・ゴードンはアンジェリーナを睨むことはあっても、そのような表情を見せることは無かった。

 見下している相手に個人的な情報を握られるなんて、考えもしなかったことだろう。


「試験最終日、図書館二階の一番奥の窓辺」


 それだけでイーリアス・ゴードンの顔がみるみる青ざめていき、マーベルも口を開けたまま私を凝視する。


「なっなっなっなっ、何か勘違いされているんじゃありませんか? 私とイーリアスは真面目に勉強していただけです。ア、アンジェリーナとは違って長時間勉強しますので、息抜きに誰も居ない場所を選ぶのだって仕方ありませんわ。誤解されるような言い方はやめてください」


 ここでも、イーリアス・ゴードンが発言するよりも先にマーベルが否定する。

 イーリアスの事も名前で呼ぶのは二人が親密な関係なのか、それとも咄嗟の事でゲームで呼んでいた癖が出てしまったのか。

 それでも、周囲はその些細な事で二人の関係を誤解する。

 マーベルは周囲の僅かな疑惑にも気が付かず大きな声で反論する。

 私達は一メートル程の距離にいるので、そんな大声を出さずとも聞こえています。

 マーベルが焦りすぎてとても早口となり分かりやすく動揺している姿が面白い。


「私が目撃したのは試験最終日ですよ。試験が終わっても勉強するなんて本当に素晴らしいですね。それにお礼の仕方も優秀な方は違うのね」


 私がこれから何を口にするのか、マーベルは察しがついた表情を見せる。


「試験が終わっても、答案用紙が返される前に見直しなどあります勉強を教えて頂いたら御礼するのは当然です。それにあの場には誰も居なかったはず、妄想で話すのは止めてください。覗き見だったとしても気持ち悪いです。万が一見えていたとしてもアンジェリーナが考えているようなことは何もしていません。全ては見間違い……誤解です」


 私はまだ正確な事を発言していないのに、必死に否定すればするほど怪しくなるのに反論せずには居られない様子。


「私の見間違いだったのでしょうか? そこがお2人の初めての口づけ場所ですよね? 」


 王子との関係を『真実の愛』と先ほどマーベル自身の口から宣言していた。

 にも関わらず、王子の側近のしかも婚約者のいる男性と口づけしていたことが明らかになった瞬間会場内は予想通りどよめく。

 今まで存在を消していた王子も突きつけられた真実に二人を交互に確認する。

 愛した女性と幼い頃から共にいた仲間の裏切り。

 人って想像を超える展開になると、本当に声が出なくなるよう。

 王子の先ほどから口をパクパクさせる姿に、ちょっと面白いと思ってしまっている。


「嘘よ嘘。全てはアンジェリーナの嘘です。皆さんこんな人の言葉を聞く必要ありません」


 マーベルは大袈裟に振る舞い私の言葉を否定する。

 イーリアスの方は秘密をばらされ青白くなり、微かに震えているだけで無言を貫いている。


「私が嘘をついているかはゴードン様が一番良く分かっているのではありませんか? 」


 イーリアスは名前を呼ばれるも何も答えることができずにいる。


「試験が終わった後も図書館のあの場所は二人の密会場ですよね。手紙の指示通り図書館に毎回向かう私も私ですが、何度お二人の口づけを観させられたことか」


 イーリアスは静かに瞼を閉じ、現実逃避に走る。

 彼の反応からして私のゲームでの知識は当たっていたはず。

 ということは、このヒロインは逆ハーレムルートを辿りながら個人ルート並みの親密度を上げている。

 それはとても苦労だったことだろう。

 ゲーム通りに実行すれば現実ではかなり目まぐるしい日々を送るはず。

 私がマーベルの行動に思いを馳せていると、二人の真実を知り一人の男が荒い呼吸で三人を見つめていた。

 そして私を確認し、凝視というよりも縋るような視線を送ってくる男がいる。


 そうよ、次はあなたの番よ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ