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私の目指すノンビリ生活

「? 」 私は今、前世とは全く勝手の違うお風呂に困惑している。

 私としては一人でゆっくりお風呂を堪能するつもりでいたのだが、使用人数名掛かりで全身を洗われる。

 一カ月も入浴しておらず匂いも気になるところなのに、使用人は誰一人嫌な顔をせず仕事を熟していく。

 よく知らない私の体だが、やはり裸を見られるというのは恥ずかしい。


「あの……」


「はい。なんでしょう、お嬢様」


 私が声を掛けると使用人は私からの指示を待っている。

 アンジェリーナの厳しい口調を使用人達は恐れている様子。

 今回も私が彼女達に無理難題を発言すると予想しているのだろう。

 そう思うと彼女達の顔も少し怯えているようにも見えなくもない。


「一人でゆっくりしたいのだけど……」


「はい、では手早く終えます」


 私としては、『自分で洗えます』と言いたかったのだが、使用人の言葉は私が望むものではなかった。

 貴族令嬢は体、特に髪は自身で洗わないというのを思い出す。

 私がもっとはっきり言えばよかったのだが、その言葉で伝わると思い込んでしまった。

 きっと使用人達なりに主の想いを察しての対応なんだが、環境が違えば常識も異なるのだと納得してしまう。

 彼女達の誠意に押し切られてしまったので早く終わってほしいと願うも、彼女達は丁寧に私の体を隅々余すとこなく洗っていく。

 使用人の手際の良さに感心していると、髪を洗われる頃には眠気に誘われていた。


「……お嬢様……お嬢様」


「ふぇっ……」


 お嬢様との呼ばれ方に慣れず、私ではないと眠りに誘われると再び呼ばれ目が覚める。

 これは危険と判断し湯舟を出れば既に清潔な服が用意されていた。

 一カ月ぶりのお風呂に感動し自室に戻り、ベッドを発見すると自然と吸い込まれていた。


「お風呂に入って、気持ち良かったぁ」


 地下牢のベッドは布団などなく直接寝るしかなかった。

 冷たい床に直接ではないだけまだましだと思っていると、数日後には布団が届く。

 罪人にしてはかなりいい布団を配給されたとは思っていたが、国外追放になる私への最後の施しなのかと思い疑うことなく有り難く好意を頂いた。

 今私が寝ている布団は、その時の布団に近い。

 お金持ちの悪役令嬢の布団と同じということは、王宮はかなり良いものを配給してくれていた。


「……柔らかくて、フカフカだぁ……お日様の匂い……」


 地下牢でいやという程寝たというのに、柔らかい布団に包まれると眠気が襲う。

 ほとんど考えられない頭で振り返っていた。

 ゲームとの相違を考えると私への処罰はかなり譲歩されたのではないだろうか。

 もしかしたら最後の私の人生を懸けた『道連れ劇場』が利いたのかもしれない。

 私一人ではなく、ヒロインも攻略対象三人を選んだことで何かしらの処罰が下ったのかもしれないと考えると、素直に嬉しい。


「……んふふ」


 ゲームでは国外追放なのだから住む家があり安全も多少は確保されている場所での生活に感謝しなければならないのに都合よくゲーム内容が変更になり希望をみてしまう。

 この世界の中央都市を堪能することが出来ないのは残念だが、国外追放で頼れる人もいないところに一人放り出されるよりかは断然ましだ。


「王都にさえ近づかなければ……自由」


 それは領地に引きこもっていれば問題ないということ。

 会いたい人も友達もアンジェリーナにはいないから、王都に固執する必要はない。

 お貴族様なら王都追放は貴族追放を意味するのだろうが、元日本人からすれば王都に興味はない。

 転生して即断罪・地下牢行きを経験すれば、どんな田舎だろうと暮らしていける。


「……もぅ……だ……め……すぅぅぅぅ」


 眠った。

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眠り姫
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