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伯爵夫人となりました

 <アンジェリーナ・カストレータ公爵令嬢、改めアンジェリーナ・セルガディオ伯爵夫人>


 ワイアットと婚姻し、家名もセルガディオという名を頂いた。

 そして私はサーチベール国に移り住み、ドレスト元伯爵の屋敷と領主を引き継いでいる。


 ドレスト元伯爵の屋敷は、王都も領地も丁寧に管理されている。職はなんであれ経営能力は優れていると語られていた。なので、伯爵の屋敷の管理は行き届いており取り壊すとしても、新たにまた建築するのは時間が掛かり過ぎると言われた。私としては元伯爵の屋敷は取り壊しが必要なほどではないので、気に入らないところは都度修繕するという事になった。


 私が気にしているのは屋敷の事ではない。領地の方だ。


 仕事もだが、それよりも住人の方だ。もともと、娼館とカジノは貴族令嬢に嫌悪される職業で多少の嫌味も覚悟していたので今のとこは私の想像通り。

 それよりも私が懸念しているのは住人だ。


 元伯爵の管理が素晴らしく、徹底した教育がなされていた。彼らは領地を訪れる者に対しての監視と報告が身についていた。これを正しく管理出来れば問題ないが、悪用しようと考えた時カジノでいくら使用しているとか娼館に誰が通っているのかも合わせると大変なことになるだろう。


「誰でも管理できる場所じゃないところね……」


 ワイアットが基本対応するが、私も補佐という立場にいる。


「なんか……転生者の小説やゲームだと、悪役令嬢が逆転起こすと大抵皆に尊敬されるというか認められるような職を任されるのに……私はカジノと娼館……」


 前世の私は料理が得意なわけでもなく、経理や企画能力が優れている事もなく、医療知識のある医者でも法律に詳しい弁護士でも正義感溢れる警察官でもない。

 私はただのパチンコ店に勤めていた人間。


「これと言って、この世界に生かせる能力って共通してないのよね……共通しているのは……あっ」


 思い出した。私は前世『パチンコ店』に勤めていた。『パチンコ店』。パチンコ店は風営法で管理され、風俗と同じ分類となる。


「あぁ……それで私がカジノと娼館なのね……」


 神様って転生者の前世を把握し、そこまで気を使ってくれるんですね。


「悪役令嬢、カジノと娼館を経営する……うわっ悪役っぽい」


 だけど今回の私って悪役の割には、そんなに悪役にされることなかったのよね……攻略対象は断定できないが、第三王子と第四王子は入っているだろう。それに最後に登場したエーバンキール国の王子。ヒロインなら必ず接触するものなに……そもそもマデリーンが養女となったドレスト伯爵はラスボス的な扱いだった。そんなところの養女になるなんて、今回のヒロインはハードモードに思える。


「なんか私がヒロインだったりして……あれ? 私が……ヒロイン? 」


 私……確か、パーティーでドレスにワインを掛けられたことがあった。

 令嬢・令息の失踪及び最高級茶葉アヘン混入事件の解決に奔走し……今では友人となった令嬢の健康回復の補助……


「なんか……本当に、ヒロインっぽくない? 」


 私常々思っていたことがある。

 ヒロインは何処に行っても「ヒロイン」は、ズルい。

 続編ではヒロインと悪役令嬢は立場を入れ替えるべきだと……私がヒロインで、マデリーンが悪役令嬢だと考えると……


「あの子は……令嬢にアヘン入りの紅茶を出して……でも、婚約者はいないのよね。大抵悪役令嬢には婚約者は必要不可欠……あっ、ヒロインと婚約者の座を狙って争うってのがあるか……婚約者……ワイアット……うわっ鳥肌」


 私はヒロインで、マデリーンが悪役令嬢。

 そして、ワイアットが攻略対象だったのではないかと仮定すると全てが腑に落ちる。


「攻略対象が一人というのは寂しい……」


 最後に現れたエーバンキール国の王子はシークレットルートのように思えるので、他に二人とか三人いてもおかしくない。


「ほかの攻略対象候補と言えば……」


 私の周囲には対象となりえそうな人物んい心当たりがある。だけど、彼らには良好な関係の婚約者がいる。

 もし、私が事件解決に乗り出すのが遅れていたらどうなっていただろうか? 

 二人の令嬢はアヘン中毒であることが発覚するも手遅れにより回復できず、ルースティンとアビゲイルは……婚約解消していたかもしれない。

 彼らは、伯爵令息と王族……まさに攻略対象と言える肩書……


「もし、アビゲイル殿下が攻略対象だったら悪役令嬢はエメライン……ルースティンが攻略対象の場合はアイリーン……二人はアヘンを盛られていた……令嬢二人は悪役令嬢……というより、二組は婚約解消を選ばざるを得ない環境となり攻略対象の乗り越えるべき過去の後遺症のような……本編が始まる前段階のようにも……思えなくもない。え……私……本当に……ヒロイン……だったの? 」


 もし、あの時、「シュタイン国にサーチベール国からの留学生」の存在を否定していなかったら誰も調査せず、今回の事件が発覚した頃には、とても仲の良い二組の婚約が解消されていた可能性がある……

 私はハーレムなどは望まない。子供っぽい理想かもしれないが、皆が程よく幸せであってほしいと思っている。


「私は穏やかな幸せが欲しい」


 映画のように身を焦がすような恋愛に憧れはあるが、実際の私は家族が幸せで程よく豊かを望む。

 深く他人の人生に関わるのは恐ろしい。

 私の行動で誰かが不幸になる姿は見たくないし、責任を負えない。


「皆さんに告げます。乙女ゲーム……経験者の私から言える事は、転生はおすすめしない」


 国を移動すると続編に移行するのであれば、私はもうサーチベール国とシュタイン国にしか行かないと宣言する。

 続編の続編もお断りなので、喩えエーバンキール国の王子から事件解決し「この度、立太子した」という祝いのパーティーの招待状が届いていたとしても、私は参加は見送らせてもらいこの国から出ないと誓う。


「……絶対に出ない。私の乙女ゲームは、ここで終わり……だ」



【終わり】


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