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ウィリアル・ドレスト (兄)

 <ウィリアル・ドレスト>


「逃げろ」


 父からの手紙をいつものように開ければ、その文字だけが書かれていた。

 きっと俺達がエーバンキール国の第二王子を次期国王にし権力を握ろうとしていたのを掴まれたのだろう。「謀反」などをでっち上げられ第二王子を処分に動き俺達も巻き添えになるという意味の「逃げろ」に違いない。王妃は第二王子をかなり疎んでいるのは有名だ。

 だが、毒殺や暗殺しては国民への印象が悪い。王妃は自身が周囲からどう見られているのかをとても気にする人だった。

 なので、自身が被害者となり、どうにかして側室と第二王子を排除できないか常に考えている人という印象だ。


「くそっ」


 第二王子派の娼館やカジノはとても順調で好評だと聞いていた。

 しかも近頃第一王子派の人間が留学やら怪我での療養やらで王都を離れる者が続出しているので、今が形勢逆転のチャンスだと油断していた。


 エーバンキール国を利用してサーチベール国を支配下に置いてやろうと思っていたのに、やっぱり第二王子は無能だった。第一王子への対抗意識が強いわりに、勉強など疎かにし過ぎで学園での評価は低い。

 愚かな方が操りやすくとも、限度というものがある。


 一度第二王子派だが婚約者のいる令嬢に迫り公衆の面前で振られたことがあった。恥をかかされた第二王子は令嬢に王族の権限で罰を下そうとした事があった。第一王子が助けに入った事で何事もなく終わったが、その時の暴れっぷりには辟易した。

 最近ではその令嬢を見かけていないので第二王子も大分落ち着いていると思ったが、俺の知らないところで何か計画を実行し失敗したに違いない。


「あれほど、何かする時は俺に相談しろと言っておいたのに……全く……」


 俺がわざわざエーバンキール国に訪れたのはこんな男のご機嫌を取る為じゃない。俺はアビゲイルを蹴落とすためにここまでやって来たんだ。 

 昔からアイツは王族というだけで俺の努力をいつも踏みにじる。パーティーでも俺が輪の中心でいたのを横から掻っ攫う男で気に入らなかった。


「俺達が対等の立場であれば、誰もが俺を選ぶはずなのに……王族という肩書だけで生きてきた男」


 アイツを俺に跪かせたかった……


「結局俺は、生粋の王族に負けたんだな……」

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