パーティー
「カストレータ嬢、この度は娘をありがとう。令嬢には大変感謝している」
ブルグリア侯爵が礼を述べると夫人だけでなく、ルトマンス伯爵夫妻と令嬢二人も頭を下げる。
「いえ、私よりも令嬢二人が耐え抜いた成果です。ですから頭をあげてください」
「いや……娘の体調不良の原因に心当たりがあり治療法もあると殿下を通し提案してくれたにもかかわらず、私は一度令嬢の提案を撥ね退けてしまった。何人もの医者に診せ判断が付かなかったのに、令嬢に分かるわけがないと決め付てしまった……令嬢と……娘にも謝罪しなければと思っていた。私が失礼な態度を取ってしまったにもかかわらず、娘を救ってくれた」
そのような事実、言わなければ分からないことなのに……
エメラインの父は、エメライン同様誠実な方だ。
「私は……そんな人物ではありません……婚約者を……大切に思うルースティン様と殿下の熱意がなかったら……私は、きっと……何もせずシュタイン国に戻っていたと思います」
「アンジェリーナ嬢……」
ルースティンに名前を呟かれる。
私が「婚約者」と発する時に変な間を作ってしまったから、何かを察したに違いない。
そこになんの意味もないのだが、ここにいる人間で私が「婚約解消」をされているのを知っているのはアンドリューとルースティンだけ。
「私は二人の想いに動かされたにすぎません」
ルースティンに私は「平気」と分かってもらうために笑顔で頷いた。
「カストレータ公爵にも改めて感謝の礼をさせてもらう」
「私からも感謝を見える形で受け取ってほしい」
私が頑なだと思ったのかお父様経由で何かを贈られるようだ。
娘を助けた礼なのだろうが、貴族の礼は私の想像を遥かに超える物なので気が引ける。
私としては菓子折り程度でいいのだが……
「アンジェリーナ、ここは受け入れるところだよ」
どうにか断れないかと思考を巡らせると、アンドリューに受け入れるように促されてしまったので私の答えは……
「はい」
コンコンコン
「皆様、お時間です」
使用人に呼ばれ私達の入場の時間が知らされる。
「今回はカストレータ公爵家のお二人は、王家からの貴賓として紹介させて頂きます」
前回の私達はフォーゲル伯爵の「おまけ」のような扱いで入場したが、今回は「カストレータ公爵家」として参加することになった。
すべての来場客が家門ごとに入場し終え、私達兄妹の出番となった。
「アンジェリーナ」
「はい」
アンドリューのエスコートで、私は沢山の視線を受けながら会場に入場する。
後は王族が入場さえしてくれたらこの視線からも解放されると期待している私の前に、エメラインとアイリーンが近寄りカーテシーをする。
その瞬間、周囲が勝手に私達の序列を判断する。
表情に出してはいけないと分かりながら「やめて~、そんな事しないで~」と叫び首筋が浮き上がる。
私もすかさず二人に見様見真似のカーテシーをと思った瞬間、周囲の視線が外れる。
王族の登場で私の計画は台無しとなった。
壇上に見知った顔のアビゲイルとワイアットを発見すると、彼らが王族だったのを実感する。
隣国のカストレータ家の領地までわざわざ来て事件の報告だが「対等な意見」を交わしていたので、つい友人感覚になりがちだったが全く住む世界が違う人。
「こっちが現実なのよね……」




