結局
私は令嬢達を見送ることなく、共にサーチベール国を目指している。
サーチベール国に向かっている時間、帰る時も同じ時間を要するのかと思うと憂鬱だ。
最近宿泊した記憶のある宿に滞在して休憩しながらサーチベール国を目指す。
以前と違うのは食事は令嬢も一緒という点だ。
長い馬車移動は皆自身の馬車を利用するが、食事と休憩だけは会話する。
何日も掛けて私達はサーチベール国に戻って来た。
王都に到着すれば令嬢達と挨拶を交わし二人は久しぶりの屋敷へと向かっていく。
二人も私がパーティーに参加することを婚約者から聞いているのか別れ際は「それではパーティーで」と手を振って別れた。
今頃二人は家族と感動の再会をしているに違いな……私の方はアンドリューと共にフォーゲル伯爵の屋敷に到着してしまう。
どんなに快適にもてなされても、他人の家では休まらない。
伯爵夫人は私を見つけると喜んでくれるが、なにかを企んでいるのではないか? と疑ってしまう不自然さを感じた。
刻々と時間は過ぎていき、約束のドレスが届く。
「早く、開けてみて」
私よりも夫人の方が贈られたドレスに興奮している。
「はい」
箱を開けると、今回も素敵なドレスが届けられた。
前回と同じように紫色のドレス。
「まぁ、素敵ねぇ」
「……はい」
周囲にどう映っているかなんて気にすることもなく、私はこのドレスを着用して王宮に行くのか……という思いでいつまでも見つめていた。
そして、直ぐにパーティー当日になる。
今回も夫人は「産後」を理由に欠席する。
約束通り王宮からの馬車が到着すると、何故か私一人が乗せられアンドリューとフォーゲル伯爵とルースティンは伯爵家の馬車に乗り込んだ。
王宮に辿り付き馬車が停車し騎士のエスコートで馬車から降りれば、先に到着していた貴族達の視線が私に向いている事に気が付く。
「なに? 」
続いて、三人も到着して合流すると私は貴族達の視線から隠れるように王宮へと足を踏み入れる。
入場時間まで時間があるので、四人で控え室へ向かうと騎士により王族専用控え室に案内される。
私は向かっている先が王族専用とは知らないので案内されるまま歩いているが、察知したフォーゲル伯爵親子は緊張感を漂わせていた。
「え? もうし……」
扉が開くと既に使用中で、部屋を間違えてしまったのだと察知し謝罪して逃げるとする。
「アンジェリーナ様」
呼び止められるとは思っておらず、瞬きを繰り返して確認すれば見知った令嬢の姿がある。
「エメライン様……アイリーン様も」
その場にいたのは、エメラインとアイリーンで、よく見ればサーチベール国を出発する前に挨拶を交わした二人の親であるブルグリア侯爵とルトマンス伯爵だということを思い出す。
いつまでも私が扉付近で立ち止まっているので、ソファーに座るように促される。




