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緊張する散歩

 アンドリューの言葉通り先程私達がいた部屋から確認できる場所を散歩している。


「アンジェリーナ嬢」


「はい」


「パーティーの事なんだが……以前パーティーで令嬢のドレスにワインが掛かってしまった事があっただろう? 」


「あぁ……はい」


 確かそんなこともあった。事件に振り回されてすっかり忘れていた。


「あの犯人は……マデリーンだったことが判明した」


「マデリーンが? 」


 ワインを掛けるのは悪役令嬢の仕事であって、ヒロインがすることではない。

 最近ではヒロインが自ら被る自作自演もあるようだが、掛ったのは私。

 こういう物は被害者にならないと、攻略対象との距離は縮まらないのではないのか?

 もしかしてワイン被るの失敗したのか?


「アンジェリーナ嬢の姿を目撃したことで反射的に行動してしまったと語った」


「そうですか……」


 まぁ、私の「道連れ」に華麗に巻き込まれたから、逆ハーレム成功と油断していた彼女にとっては私の反撃は許せるものではなかっただろう。

 それによりゲームにはない「国外追放」となったのだから。


「それでだが、あの者の処罰は……国外追放となった」


「国外……追放……」


 またしてもあの子は「国外追放」という結末になった。


「ドレスト伯爵の計画を全く聞かされていなかったのと、紅茶にアヘンが混入していたのは知らなかったそうだ。それを伝えたにも拘らず紅茶を出したのだが、あの者には変化が見られなかった」


「アヘンの紅茶を飲ませたのですか? 故意に? 」


 アヘン入りの紅茶だと教えて飲ませるなんて……一種の拷問なのでは? 

 あっ、犯罪者の養女になってしまったので拷問されるのは仕方がないのか? 


「あぁ確認の為に。あの者はアヘンに対して耐性でもあるのか、全く変化が見られなかった」


「ほぉ……」


 それはもしかして、ヒロイン補正? 

 病気にならないとか中毒にならないなど、ヒロインに与えられた特権かもしれない。


「あの者は学園で真面目に過ごしていた事や、伯爵の事件に自らの意思で関与した訳ではないので処刑は見送ることに。だからと言って、令嬢達にアヘンを振る舞ったのは事実として「国外追放」という事になった。エーバンキール国にもあの者についての報告書は届いているので、そちらにも足を踏み入れる事は出来ないだろう……これで、アンジェリーナ嬢は安心できるだろうか? 」


「私ですか? 」


「アンジェリーナ嬢は、あの者に婚約破棄にまで追い込まれたのだろう? 今回のこともあり「処刑」の声もあったのだが、他国での罪は問わず我が国での行動のみで処罰が決定されてしまった……申し訳ない」


 もしかして、私の事も含まれていたらマデリーンは「処刑」されていたの? 

 私はそんなことは求めていない。


「いえっ、過去の罪は「国外追放」という罰を受けており、今回の件のみで処罰を決定するのは当然ですのでワイアット様はお気になさらず」


「アンジェリーナ嬢は優しいな……」


 これは優しいというのだろうか? 

 前世の記憶があるので、「処刑」に抵抗があるだけで……優しさとは違う。


「今回もドレスを贈らせてほしい」


「えっ、そんな。以前もミューリガン公爵にドレスを頂いてしまったので、頂けません」


「……その日、エーバンキール国の者も招待している。今回の事件を発見し、協力してくれたアンジェリーナ嬢とアンドリュー様に挨拶をしたいと」


「挨拶……ですか……」


 他国の人間と挨拶なんて緊張でしかない……私の事など言わなくてもいいのに、皆さん律儀だ。


「その時に二か国を救ってくれた令嬢を紹介するので、素晴らしいドレスで参加して頂きたい」


「それでもドレスは……」


「私からは受け取りたくないか? 」


「いえ、そういう意味ではなく……」


「なら、贈らせていただく。それとだな、迎えの馬車も王宮から手配する。後は……」


 ワイアットは強引に話を変えるも、その後の言葉も簡単に了承していいものか分からない内容だった……が、全てワイアットに主導権を握られていた。


 彼ら三人を見送る姿はそれぞれだ。

 令嬢二人は婚約者を愛おし気に見つめ、アンドリューは何故か鋭い目つきでワイアットに視線を送る。

 私は、他国の人に挨拶をしなければならないパーティーの参加が決まっている事から目を逸らしたかった。

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