手紙
<国王陛下執務室>
エーバンキール国から再び手紙という名の報告書が届く。
いつもの人間を集め開封しヴァージルが読み上げる。
「第二王子を調査したところ、長い間王家が所持している使用していない領地でアヘン栽培を指示していたのを確認。そこで農夫のように働いていたのが、我が国で失踪とされていた令息と……サーチベール国で家出扱いとなっていた令息だと確認できた。彼らもまた……アヘン常用者であるとされる。今回の調査で行方不明の令息・令嬢の生存を確認したので、彼らの保護に動く為にも両国で一斉同時検挙を行いたいと考えている」
エーバンキール国からの手紙を読み終える。
「では、これらは第二王子とドレスト伯爵の計画という事ですか? 」
ワイアットが質問する。
「いや、まだドレスト伯爵が関与していた証拠が確認できていない」
今回の事件は他国と綿密な打ち合わせを必要とする為、アビゲイルとワイアットから国王とヴァージルに主導権が移された。そして報告の全てをヴァージルが統括している。
「ヴァージル兄さん、いいかい? 」
「なんだ? 」
「ドレスト伯爵に付けていた密偵から報告が上がりました」
アビゲイルはアンドリューの言葉からドレスト伯爵に独自の密偵を付けていた。
「……報告してくれ」
「ドレスト伯爵が第二王子と直接密約を交わした現場に遭遇はありませんでしたが、隣国から戻るドレスト伯爵の荷馬車に縛られ意識を失った令嬢を確認したそうです」
「それは確かかっ? 」
アビゲイルの言葉に四人が驚く。これは決定的な証拠と言える。
「はい」
「その令嬢は保護したのか? 」
「……いいえ。保護してしまえば伯爵に気が付かれると判断し、密偵は動きませんでした。私としては彼の判断は失踪者を助ける為には間違っていないと判断します……ので、罰することは……」
あの場で令嬢を発見した密偵であれば、令嬢一人を助けることは出来ただろう……令嬢の家族からすれば、見過ごした彼に恨みをぶつけたくなるかもしれない。だが、漸くここまで真実を捉え行方不明者の居所を掴み多数を助け出せると考えれば、密偵の判断は正しいかは分からないが間違っていなかったと訴えるアビゲイル。
「……そうだな。全員を救出する為には仕方あるまい。密偵には「よく耐えた」と伝えてくれ。それで、令嬢には目撃されていないのだよな? 」
「はい。令嬢は眠っていたので目撃はされていないと聞いています」
「そうか。これから、エーバンキール国と共同し失踪者奪還に移る。今後は慎重に……派手に動く事がないように」
「はい」




