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密偵 1

 <密偵・その一> 


「ドレスト伯爵の監視を強化しろ」


 ドレスト伯爵の娼館で働いている女性が他国の令嬢だと判明し報告すると、更に「伯爵の監視の強化」を言い渡された。


 ドレスト伯爵の娼婦を大切にするあまり厳重に「保護」と認識していたが、今では「隔離」のように感じる。エーバンキール国の令嬢が自らの意思で隣国を訪れ娼館で働いているのかを調査したくとも、情報源の男は入れあげていた娼婦が取引先の貴族令嬢ではないかと知り怖気づき店を訪れてない。新な情報源は他の密偵に託し、俺は指示通り伯爵を監視している。


 そして今日は月に一度、伯爵がエーバンキール国に留学中の嫡男を尋ねる日。

 令嬢達が自らの意思で国境の検問を通り娼館の門を叩いていれば不審には思われない。だが、そこに犯罪が絡んでいた場合、検問でまずは発見される。人間一人を誘拐し運んだとなれば、気が付かないはずがない。


 伯爵の行動で令嬢達を調達できる瞬間は、隣国に留学中の令息を尋ねる時だ。

 毎回多すぎる程の土産を令息に送っているのも今になれば怪しく思える。もしかしたら、その時令嬢・令息の受け渡しが行われているのかもしれない。

 

 国境の検問は厳しく行われている。

 喩えお金を積まれても拒否できる人物でないと国境警備は任されない。その責任者がアセッドイン侯爵、彼は王族派なのでドレスト伯爵を見逃すことは無いだろう。ドレスト伯爵の荷物は彼が責任もって検査している。

 ドレスト伯爵を疑っているわけではないが、私も検問所の人間に紛れ込み伯爵の荷物の確認に向かう。


「おいっ、お前。どこの部署だ? 」


 ……アセッドイン侯爵に一瞬で見つかった。やはり、国境警備に隙は無いようだ。


「昨日付で配属されました」


「新人? そんな話は聞いてないが」


「これが任命書です」


 事前に準備していた王宮の署名入りの任命書を差し出す。万が一の為に用意していたものだ。王宮の印は本物で疑われることなく今を逃げ切れるが、その代わり伯爵の監視が出来ずここで働かなければならなくなってしまった。


「そうか……ここは私が確認する。新人はまず全員に挨拶して来い」


「はい」


 残念な事に荷物の検査も出来ずその場を離れ挨拶周りに行っている間に、伯爵の荷物検査は終わり国境を抜けていた。伯爵を追いかけることは共に任務を受けていた二人に任せることにして、俺は国境警備について詳しく調査する。怪しまれないよう真面目に警備にあたるも、不審な点は見つからず。


 残すは、伯爵の監視に任せるのみ。

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