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手紙

 <国王陛下>


 以前と同じ人間が執務室に集結している。


「エーバンキール国から報告書が届いた」


 国王は行方不明となっている者達の絵姿をエーバンキール国に送り確認を待っていた。

 その報告書をヴァージルに手渡し読むように促す。


「娼館の女性達の中に以前送られた絵姿の令嬢達の姿を……確認……致しました」


 その一文は、そうではないかと思っていても否定したい事実だった。

 何故なら、エーバンキール国から確認の為に送られていた絵姿の令嬢達も娼館の最上階で働いていた者達と合致していたからだ。


「ここで確認できたのは令嬢のみ、令息は確認できず」


 それも、我が国と同じ報告書と言える。

 そして、その後には残酷な提案が書かれていた。


「娼館で働く令嬢達を保護するにも、両国が同時に令嬢の保護に踏み入れないと犯人に気が付かれる恐れがある。更には令息の生存が分からない今、令嬢を保護してしまえば令息の居場所どころか命まで危ぶまれる。なので、令息の居場所が分かるまで、令嬢の保護は待ってほしい……」


 それは、令息の居場所が分かるまで令嬢達には客を取らせ続けるという事の提案だった。

 飲み込みたくない提案ではあるが、令息の居場所が掴めていないのは確かなので我々は残酷な決断を下さなければならない。

 令嬢の家族には申し訳ないが、令息にも家族がいる……娼館で働いている令嬢には、もう少し耐えていただくしかない。


「あの……」


「なんだアビゲイル」


「今回の娼館ですが、第二王子派の娼館ではありませんか? 」


「報告書には……あぁ、そうだな。第二王子派の娼館だ」


「そうですか……」


「なんだ、気になることがあるなら言ってみろ」


「我が国で令嬢が発見されたのはドレスト伯爵の娼館、あちらでは第二王子派の娼館なんですよね? 確か、ドレスト伯爵の令息は第二王子と学園で親しいと……」


 アビゲイルの発言で室内がピリつく。


「そこの二人が繋がっていると? 」


「その可能性があるのではないかと……なので被害者がどんな立場なのか確認する必要があります。もし私の考えが正しければ、令息達の居場所に辿り着けるのではないかと」


「そうか……それにしても、よく気が付いたな」


「……アンジェリーナ嬢との会話で気が付きました」


「ほぉアンジェリーナ嬢」


 アビゲイルがアンジェリーナの名前を出すとスタンリーが楽し気な表情でワイアットを覗き見る。


「なっ、なんだよ」


 スタンリーに覗き込まれるとワイアットは照れたように顔を背ける。


「ん? どうした? 」


 三人の様子にヴァージルも興味深々のよう。


「誰だ? アンジェリーナとは? 」


 国王という顔ではなく、今は父として彼らの会話に興味があるようだ。


「ワイアットの……」


 スタンリーが揶揄うようにワイアットの名前を出す。


「兄さんっ」


「ほぉぉ」


 その様子にヴァージルと国王も気が付く。


「違うよ。知り合いってだけだ」


 疑ってもいないのにワイアットは否定する。


「知り合いかぁ」


 兄弟や父は今まで令嬢に一切興味を示さなかった末の弟の反応が面白くて仕方がない様子……いや、先程の殺伐とした空気を振り払っているようにも感じる。

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