アビゲイル・サーチベール
<アビゲイル・サーチベール>
再びサーチベール国に戻るが、シュタイン国を去る前にエメラインとルースティンの婚約者にも挨拶をしてからにした。ルースティンとは別に動いているが、彼も事件調査に忙しく会いに来ることが難しい。それに私達が頻繁に会いに来ては、犯人側に二人の居場所を知られてしまう危険性がある。出来るなら「解決したら迎えに来る」と格好良く約束したいが事件の真相に近付いているのか分からない現状、気軽にエメラインと約束は出来なかった。
解決する気はあるが、解決できなくなり約束した手前「会いに来ることが出来ない」なんてことになったら耐えられない。今回のように事件が進展しカストレータ兄妹に報告を名目に訪れるのが精いっぱいだ。
「ルトマンス令嬢も回復したようで良かった」
「この度は私もエメライン様の療養に同行させていただき感謝しております」
「いや、私もエメラインの体調には気が付いていたがルトマンスが行動してくれた事で原因が判明した。彼の行動には私も感謝しているんだ。シュタイン国に到着した時に訪れたのだが、あれからルトマンスは来たか? 」
「いえ、彼は一度だけです」
「そうか……今回の事件は信頼できる者にしか話しておらず、今彼には私の補佐として解決の為に奔走してくれている」
「はい。彼からも事件解決を優先してしまうことを聞いております」
「そうか……悪いな」
「いえ、お気遣いありがとうございます」
ルトマンスも同じ状況でありながら私一人で訪れてしまったのを申し訳なく感じている。
今の調査が落ち着いたら、一度令嬢に会いに行くよう伝えよう。
「アビゲイル様……無理なさらないでね」
「あぁ。エメラインも焦らず、ゆっくりでいいからな」
「はい」
「アビゲイル殿下、お気をつけて」
「事件解決に奔走するあまり、殿下が心配です」
見送りに来てくれているカストレータ兄妹には去り際に心配されてしまう。
「あぁ、気を付ける。二人にはこれからも頼む」
「「はい」」
馬でサーチベール国を目指す。
エメラインの体調を確認できたことで、再び事件に対峙することが出来た。
帰りの道中、国に戻って何をするべき他頭の中を整理する。
「第二王子とドレスト令息の関係……」
二人が繋がっていると考えれば、二人が所有する領地に失踪中の令息の存在が確認できるかもしれない。
アヘンの栽培場所も発見できれば事件は解決するだろう。




