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王族

 <アビゲイル・サーチベール>


 我が国で他国の貴族令嬢が娼婦として働いている事実に衝撃を受けた。

 令嬢が娼館で務めるようになることは、珍しいことではあるがないことではない。

 何かしら犯罪を犯し国外追放となり、働き口が見つからずそうなる場合もある……

 今、我が国で起きている貴族失踪と他国の令嬢が関係している確かな証拠はないが、確認する必要があるのではないかと感じる。


 密偵から報告を受けてから、どうも胸騒ぎがして落ち着かない。

 私だけ手に負える事件の範疇を超えているので、国王とヴァージル兄さんに報告をする。


「それは、本当か? 」


 既に我が国でアヘンが蔓延している事については報告済みであり、第一容疑者がドレスト伯爵だが隣国という可能性も捨てきれない、と……

 今回は隣国の令嬢がドレスト伯爵の娼館で働いている情報を得た事も話した。


「はい」


「最近アビーやウィアーが動いているとは思っていたが、そんな事件が起きていたとは……」


 スタンリー兄さんだけ、ワイアットの事をウィアーと呼ぶ。

 国王には話していたが、長男のヴァージル兄さんと公爵家に婿入りし王宮にいないスタンリー兄さんには報告していない。

 この件を知っている王族は、私とワイアットそれに国王のみだった。


「初めはシュタイン国の令息カストレータ様の妹君にワイアットが我が国の留学生の事を尋ねたところ、我が国からの「留学生の存在はない」という発言が発端で調査を開始しました。直接家門まで出向き確認したところ留学ではなく「病気療養」や「駆け落ち」だったと判明しまいた。そこで解決したと思ったので、兄さん達には報告しておりませんでした……」


「その者達全員がアヘン常用者だったのか? 」


「……はい。家出したことで部屋を調べたところアヘンを発見し、犯罪を隠すために「留学」としたことが分かりました」


「それが事実なら、かなりの家門がアヘンに手を出していた事になるな……」


「はい。それで家出した者達があまりにも多かったので捜索していたところ、ドレスト伯爵の運営する娼館には特別な娼婦が存在することが判明しました」


「特別な娼婦……そこに? 」


「そこには家出した貴族は確認できませんでしたが、エーバンキール国の令嬢に似た人物が働いている可能性が浮上しました」


「エーバンキール国の……」


「仮定の話ですが……もしかしたら、エーバンキール国でも我が国と同じようなことが起きているのではないかと……」


「アヘンが蔓延し、貴族が行方不明になっているという事か? 」


「はい。アヘンを所持していたと発覚するのを恐れ、皆……口を噤んでいるのではないかと……」


「……あちらが情報を提供するとは思えないが、手紙を送ってみるとしよう……」


「はい。お願いいたします」


「……それと、アビゲイルの婚約者エメライン嬢もアヘンの被害者だと聞くが容態はどうなんだ? 」


「隣国のカストレータ公爵の領地にて静養中で、アンジェリーナ嬢の話では回復に向かっていると」


「……そうか。だが、令嬢の容態次第では婚約解消も考えておきなさい」


 父ではなく、国王としての判断は報告する前から予想出来ていた。

 予想出来ていたからこそ、ワイアットの二人で解決するつもり。

 だが隣国の可能性が出てきた今、そんなことを言っている時ではないと判断。


「……はい」


 婿入りする立場とはいえ、相手が……薬物中毒であれば、婚約解消は致し方ない。

 王族がそのような相手と婚姻となれば貴族派に隙を作ることになる。

 三番目とはいえ、感情を押し通すことは出来ない。私の一目惚れで婚約を結んだ令嬢……

 アヘンなんかで婚約解消などしたくないが、令嬢の回復を祈るしかない。

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