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密偵

 まだ確証を得たわけではないが、男の情報は全てアビゲイル殿下に報告する。


「ドレスト伯爵が運営する娼館には、初見の客には紹介されない特別な娼婦が存在するようです」


「特別な娼婦……」


「未確認ですが情報提供者によると、絵姿などはなくオーナーに認められた人間のみが許される部屋が存在し会話のみの接客後、気に入った女性を個室に誘うそうです。

 特別客になるには、定期的に半年から一年は通い続けなければオーナーの許可は得られないとのことです」


「特別とされる女性達の特徴はどんなだ? 」


「外見的特徴はまだ入手出来ておりませんが、「教育の行き届いた気品ある女性」と語っておりました」


「教育……気品……その男に、行方不明となっている令嬢の絵姿を確認させろ」


「令嬢の……ですか? 」


 令嬢の絵姿を見せるという事は……つまり……


「あぁ」


 アビゲイル殿下の表情は真剣で思いつきで発言したようには見えなかった。 


「……了解いたしました」


 貴族の令嬢が娼婦になることはある。

 家門が没落し娘を売ってでも急ごしらえで金が必要な者や、働き口が見つからず仕方なくの場合。

 問題を起こしけじめとして娼館行きを命じられる場合。

 他には……駆け落ちの末、男に騙された時か?


 事前調査報告書では、行方不明の令嬢達の家門は財政的には問題なく存続危機が危ぶまれている事もない。

 ここ最近、娼館行きを命じられるような令嬢の失態も報告もない。

 だが、「駆け落ち」を選んだ令嬢の存在があるというのは確かだ。

 全てとは言わないが娼館で働いている可能性はある。


 ドレスト伯爵の娼館は管理が行き届き、素性を隠したい元令嬢が選ぶ事も考えられる。

 令嬢でもドレスト伯爵の娼館経営は耳にしていたはず。

 街中での客引きや、酒場での声掛けは裏道に連れ込まれたり金銭を奪われるだけでなく命の危険さえも付きまとう。

 事件が起きても相手が娼婦であればまともな捜査もなければ見て見ぬふりされることはよくある。

 だが、ドレスト伯爵の領地では相手が娼婦だろうと事件は事件として調査される。

 もともとドレスト伯爵の領地は大きな事件はなく安全と言われている。

 領民同士の繋がりも強いので、騎士が動く前に領民が解決している。

 過去の繋がりに知られることなく娼婦を行えるのはドレスト伯爵の娼館はもってこい。


 まさかと思い情報提供者の男に行方不明の令嬢の絵姿を見せることにした。

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