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密偵

 <密偵>


 ドレスト伯爵の運営する娼館


 ドレスト伯爵が経営する娼館は鉄壁とも言える厳戒態勢。

 初見で女性に対し細かな要望がない者は、経験豊富で口の堅い女性が紹介される。

 大抵の店は絵姿だけで相手を決めるが、伯爵の店は踊りや酒の相手をして客は本日の相手を決める。

 客は宿泊や日帰りだっとしても、娼婦が店から出て見送ることは無い。

 誘拐されたり脅迫されることがないよう、徹底して女性達を保護している。

 授業員は本人が希望すれば伯爵が食事だけでなく宿も提供している。

 多くの者が伯爵の従業員施設を利用し安心して働いていると聞く。


 調査すればするほど伯爵が「善良な人間」だと、秘密裏に調査してここまで潔白な人間は珍しい。

 珍しいのだが潔白すぎて気になる。

 密偵の勘というものだろうか。

 伯爵の調査を引き上げるにはまだ早いと感じる。


 貴族のあるパーティー会場で気になる会話を思い出す。


「そこら辺の店とは格が違いますよね、教育が行き届いていますよ」

「入れるのは限られた人間だから安心ですしね」

「ドレスト伯爵は人を見抜くのが本当に素晴らしい」

「あの子達には気品が有りますからね」


 確かに伯爵の店は他の領地に存在する娼婦達とは一味違う。

 強引な客引きはしないし、詐欺を行うような人材もいない。

 娼館で指名が無ければカジノで清掃や酒を提供するなどもさせているので、切羽詰まったような雰囲気がない分接客には余裕を感じる。

 客も貴族や裕福な平民も多く利用することもあり、ある程度の教育もされているのだろう……


「ここ数年で貴族の駆け落ちなどが増えている。家族としては強引に連れ戻すつもりはないが生存は確認したいということで、もしかしたらカジノの裏方などで働いている可能性がある。調査してほしい」


 数週間前にアビゲイル殿下の指示により、駆け落ちとされる行方不明の貴族の資料が手渡された。

 予想していたよりも行方不明の人数は多く貴族社会で何か起きているのではないかと疑っているアビゲイル殿下の考えに納得する。

 他の場所も捜索対象なのだろうが、私が割り当てられたのはカジノと娼館の調査。

 だが、いくら調査しても不審な点は見つからず……

 娼婦達に教育を施しているのが行方不明の貴族という可能性もと考え内情を探るも、新参者が簡単に入れるような場所ではなく「娼館」については一般客が知ることが出来る情報しか入手できなかった。


 娼館の監視を続けていると、一人の娼婦に入れ込んでいる男が目についた。

 金銭を見せつけても靡かない娼婦を強引にでも攫おうと計画するも、厳重な警備により断念した男。

 彼は平民ではあるが父親の商会が急激に成長し、周囲に見せつけるように豪勢な振る舞いをするようになった。

 金持ちであるのを見せつける遊びの一つが、カジノと娼館。

 そして彼は遊びが本気になってしまった典型的なタイプと言える。

 だが、婚姻をちらつかせてみるも相手は靡くどころか自身が思い描いていた反応とは違う。

 立場上見下していた娼婦にまったく相手にされないことで、男は酒場で荒れている。


 女性物の香水の香りのする男は、きっと今日も娼館帰りだと予想し、酒をおごって近付く。

 すでに十分酔っていた男に素顔をさらしても問題ないと判断した。

 男は宿泊ではなく日帰りなところを見ると金銭的に問題が出始めたか、店のオーナーから警告を受けたかだろう。

 男は初対面の見知らぬ男の質問にペラペラ答えていく。


「娼館の最上階には特別な娼婦が存在するんだよぉ……それが本当にいい女で~……ヒック……常連客になればなる程、女のランクが上がるんだよ~そんでなぁ~オーナーに認められた特別客になればぁ、見た目だけでなく、気品を兼ね備えた……女を……紹介されんだよ……」


 男は眠ってしまい、それ以上情報を聞き出す事は出来なった。

 彼の話では初見では、お目に掛かれない女性が娼館には存在するらしい。

 どんな女性なのか本当にそんな女性が実在するのか掃除係の女性に接触し、それとなく尋ねるも誰も情報を漏らさなかった。

 従業員が本当に知らないのか伯爵の教育のたまものなのか、それ以上の情報は得られず実際に存在するかは分からない。

 もしかしたら酔っぱらいのたわ言に踊らされた可能性もある。


「特別と言われる娼婦は絵姿すらなく、オーナーに認められない限り彼女達の存在を拝めることもできない……」


 そんな娼婦が本当に存在するのか、男を利用し内部の調査を進めることにした。


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