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ルースティン・フォーゲル

 <ルースティン・フォーゲル>


 ドレスト伯爵の調査はアビゲイル殿下が行い、ドレスト伯爵の養女マデリーンはワイアット殿下が接触。

 アヘンの被害者であるアイリーンとブルグリア令嬢は、カストレータ公爵家の領地でアンドリュー先生とアンジェリーナ嬢のもとで療養している。

 僕はといえば殿下達の補佐、そして令嬢達の回復状況をアンドリュー先生から手紙でやり取りし把握すること。


「僕だけ何もできない……」


 事件解決のために「僕に出来ることをしなければ」と内心焦っている僕。


「上がった報告書を誰かと話すことで頭の中が整理される。誰にでも相談できる事ではないので、ルースティンはそのままでいてほしい」


 アビゲイル殿下に唐突に告げられた。

 アビゲイル殿下も婚約者に被害があり全ての時間を犯人捜索に充てたいだろうに、同じ状況に置かれている僕の心配までさせてしまったことに自身の能力の至らなさを痛感する。

 僕も伯爵家の当主として学んでいるのに、同じ年のアビゲイル殿下はアンドリュー先生のように冷静に状況を見据えつつ周囲にまで心配りをしている。

 上に立つ者としての手腕を見せつけられているような気分だった。

 これは相手が王族だから受けてきた教育の違いや、公爵家・侯爵家と伯爵家の違いだけではない。


 本人の資質……


 殿下に慰められていたのかと、落ち込むもアンジェリーナ嬢を思い出す。

 令嬢は事件に詳しくないが令嬢のふとした疑問が事件が浮き彫りになった。

 令嬢のような視点はないが、疑問に感じたことは相手が殿下であろうとぶつけることにした。

 今まではアイリーンの為にも事件を解決しなければと前のめりではあったが、立場上殿下に対して一歩引いていた。

 これからはその態度を改め違和感は全て口にするようになると、殿下との答えのでない会話から次に僕達が何を調査しなければならないのか浮き彫りになる。


「エーバンキール国の内情を注視する必要がある」


 王族同士では、情報交換をするも相手に弱みを見せまいと表面上の会話しかできない。

 エーバンキール国とサーチベール国は建国祭など互いに招待しているので良好な関係を築いていると思っていた。

 貴族ではあるが、王族でないことで周辺国との関係性を神経質に意識したことはなかった。

 実際エーバンキール国が我が国に対してどのような感情を抱いているのかは不明。

 もしかしたら戦争を引き起こして属国にでもしようとしているのか……

 アビゲイル殿下の話では既に密偵をエーバンキール国に送っているが、そのような動きは見せていないと話す。


「留学中のドレスト伯爵の令息ウィリアル様はどうなのでしょう? 」


「彼は……第二王子と親密ではあるが経営について助言しているだけで怪しい動きはないと聞く」


「そうなんですね。殿下は彼と親しいのですか? 」


 僕達は皆同じ年ではあるが、ウィリアル令息とはパーティー会場で遭遇する程度で親しくは無かった。

 それは殿下も同じで、今回の件が無ければ婚約者同士が仲がいいだけで僕達はほとんど接触は無く卒業したに違いない。

 殿下とウィリアル令息については分からない。

 ウィリアル令息は学園に入学したがすぐに留学したと記憶している。


「いや、全く。挨拶程度はしたと思うがこれと言って親しい訳ではない」


 アビゲイル殿下には側近という者はおらず、広く浅い人付き合いをしているように把握している。

 ウィリアル令息は伯爵と同じように顔が広く、幼い頃から優秀な人物という印象。

 彼なら殿下の側近も務まるのではないかと勝手ながらに思っていた。

 それでも二人が親しくなる事はなく、令息は隣国へ留学。

 彼もまた領地経営などを学ぶ為に自らの意思で旅立った。

 同級生でありながら二人の行動力に圧倒される……


「ウィリアル令息にエーバンキール国の内情を調査を頼むというのは……」


「それは出来ないっ」


 以前から留学で滞在しているウィリアル令息の方が調査しやすいと感じたが、殿下にはきっぱりと却下された。


「……ドレスト伯爵の疑いが晴れたわけではない。令息から伯爵に情報が流れ、我々が調査していることに気付かれ証拠を隠滅される可能性がある」


「そうでした。すみません」


「いや、私もつい強く言ってしまった」


 ウィリアル令息に依頼すればそれだけ早く内情を知ることが出来ると安易に考えてしまったが、伯爵の容疑が晴れていない現状では危険があることを僕は軽視してしまった。

 早く解決したいあまり、令息への警戒心を怠ってしまったのを殿下に窘められる。

 調査報告書をもとに冷静な判断をする為に僕を指名してくれた殿下を裏切ってしまったようで申し訳ない。

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