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ギルドとの連携


「……情報屋からの報告を受けたんだけど、王城の中はだいぶ荒れてるみたいね…」


そう言いながら、ルミエール様は静かに書類に目を通しています。



私たちは今、ギルドの一室で作戦会議のようなことをしていました。


ルミエール様からのお話を聞いてからは、佐藤くんのスキルと私のプチ知識を活かしながらギルドからの依頼という形で協力体制をとる事が増えました。


そして、今日もまたルミエール様の執務室にお邪魔しております。


佐藤くん考案の魔物の特性を理解した上での罠や討伐方法は最低限の人数で順調に成果を上げているようです。


その為、最近では特に魔物の動きが活発になっている地域の各ギルドと連携しながら村の防衛や討伐対策を考える事が増えました。


そもそもルミエール様がこちらのギルドへと足を運んだ理由も元々は活発になった魔物対策の為だったようなので、今の状況はルミエール様には都合が良いそうです。


そして、私達的にもこの国の情勢がわかる上に佐藤くんのスキル磨きが出来て、金銭的にも困らないという環境の為とても助かっています。




「…えっと、召喚者達の件で…ですよね?」



私がそう尋ねると、ルミエール様は小さく頷きます。


「ええ。召喚された者たちの事で、内部対立が起こっているようだわ」


「……対立?」


思わず聞き返していました。


「…まだ詳しくは分からないのだけど…国王たちは勇者を全面的に支援しているのに、それに対して一部の貴族が反発しているようね。…それに、召喚された者同士でも派閥のようなモノが出来ているとか……」



その話を聞いた瞬間、横にいた佐藤くんが小さく呻きました。


「……ふざけた話…だね」


「佐藤くん…」


彼の目には、複雑な感情が浮かんでいるようでした。悲しいような怒りのような嗤うような……きっと、どんな感情を持って良いのか本人もわからないのだと思います。


「結局、自分たちで自分の首を絞めてるんだ…。

僕たちを追い出しておいて…いや、追い出したからこそ揉めているのかな……」


そう呆れたように言うその声も…何処か複雑そうな響きを持っていました。



でも……自分を嘲り追い出した相手に対して、強い怒りを向けないなんて元が優しい子なのでしょうね…。


佐藤くんを温かい目で見守っていたら、こちらへと視線を向けられました。



「……山田さんはさ…あいつらに対して、なんかないの…?」 


「へ?」


佐藤くんからの質問に少し驚きましたが、確かに私も改めて考えてみました。



……勇者やクラスメートたちからは追い出される形となってしまったのですが……


それでも……うーん…



「……みんな、大丈夫でしょうか」



「え?」


思わず口をついて出た私の言葉に、佐藤くんが驚いたような顔をします。


「…え…いや、だって……。この世界で生きるのって結構大変だし……

私たちはこうして無事に過ごせてるけど、みんなが無事にやれているのか……ちょっと心配で……」


「……はぁ」


佐藤くんは呆れたように息を吐きました。


「山田さん、追い出されたんだよ。…なんでそんなこと気にしてあげてるの……」


「えっと、うーん……そうなんだけど」



そもそも私は追い出された事に関しては何も気にしていなかったので…


むしろ、落ち着いてからあちらの様子を見に行くつもりでした。



「……ほんと、山田さんって変わってるよね」


佐藤くんが少し呆れたように言います。



え、いやいや。私は変わってなんかいないですけど…。


今世ではとても素敵な家庭に産まれたごくごく普通の一般人のはずです。



「まぁ、山田さんはそのままで良いんだけどね。僕は山田さん程には優しくは思えないけど……それでも、まぁ、もうそこまで恨んだりもしてないし…」


佐藤くんが、少し困ったように私を見ました。



「…でも、山田さんを追い出した罰が当たったんだと思うと…少しだけザマァみろって思っちゃった…」


へへっと笑う佐藤くんは何処かスッキリしたような顔をしていました。


「…そっか、ふふ」


私もなんだかつられて笑えてきました。



ルミエール様はそんな私たちの会話を静かに見守ってくれていました。


どうせ後々知られることになるかと思い、私達がクラス召喚でこちらの世界へと来た事は既にルミエール様には伝えてあります。



あ、もちろん聖女だった事は言っていませんし、今後も言う予定はありません。





「…それより、今は魔物の方が問題だね」


私は地図を広げながら話題を戻します。


「…そうだね」


「えっと…どうやらこの周辺の村で、魔物の目撃情報が増えてるみたいですね。王都の騒ぎに紛れて、対策が遅れているのかな…」


「……なるほど。それなら、やはりこちらから人員を送り、早めに対策出来るように手配する事にした方が良いわね…」


さっきまでは静かに聞き役になっていてくれたルミエール様も魔物対策の話になるとすぐに参加します。


「はい。佐藤くんの《良眼》が、また役に立ちそうですね」


そう言うと、佐藤くんは少し照れくさそうに視線を逸らしました。


「……出来る限り、役に立てるように頑張る、よ…」


「ふふふ、頑張りましょう」


「…2人とも頼んだわ」



こうして…私たちは王都の騒ぎを横目に穏やかな空気の中、魔物討伐の準備を進めるのでした。






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