佐藤君side
僕の名前は佐藤大地。
ちょっとコミュ障気味ではあるけれど、パッとしない地味な何処にでもいるタイプの人間だと思う。
昔から運動が苦手で本ばかり読んでいた。
自分が弱いからか強い人物に憧れていた。
一番好きなのは三国志で戦国時代などの歴史に関わる戦術系の作品が大好きなライトオタクの仲間だと思う。
ゲームにものめり込んだし、ゲームを通じてなら友達もできた。
ただ、学校に友達はいない。
小学生の時にいじめられっ子だった経験があり、それから人との距離がわからなくなってしまった。
中学生からは校区外の学校に通う事にしたので
いじめられる事は無くなったけれど、それと同時に友達もいなくなった。
でも、いじめられるくらいなら友達なんていない方が良いと思っていた。
…そして、中学校の新しい学年とクラスにも慣れてなんとなく自分の立ち位置が安定してきたと思っていた時にそれは起こった。
なんと、クラス召喚に巻き込まれたのだ。
…それを知った時は、少しだけファンタジーに良くある特別な力を期待してしまったのも事実だ。
けれど、現実は残酷で…勇者や賢者、聖女などのスキルが出ている中で僕のスキルは“良眼”だった。
良い眼…
確かに眼は良い。
眼鏡はかけているけれどこれは伊達メガネだ。
人と眼を合わせるのが苦手だから掛けていたのだ。
「おい、佐藤。お前、良眼ってなんだよ!目が良くなったのか?」
「…あ、えっと…」
「…ちょっと、これかせよ!」
「あ…」
気が付けば眼鏡を取り上げられていた。
眼鏡を持ったまま離れると胸ポケットから何かを取り出した。
どうやら今日の小テスト答えが書いてある紙のようだ。
「ほら、見えるか?」
「み、見えるよ…」
「本当に見えてんのかよ!じゃあ、何が書いてあったか言ってみろよ!」
「…小テストの答え…」
「マジか!本当に目が良くなってんだな…」
だって元々見えていたし…
「…つーか、…お前のスキルってそんだけのモノなのか…
……なんだか…かわいそ…」
見下したような哀れみの視線を向けると満足したのか眼鏡を返された。
「俺は“農耕”だったからな…生産系ではあるし……まぁ、お前よりはマシだな…」
「…」
結局、他の人のスキルに比べてパッとしないスキルだったから更に下の相手を見つけて安心したかったのだろう…
現実なんてこんなものだ…。
「…うわ、一般人だって…」
そんな時、スキル鑑定の様子を伺っていた別のクラスメイト達の会話が聞こえてきた。
「…一般人て何?スキルはないってこと?」
「…なんか、良くわかんないけどとりあえず特別では無いって事じゃない…?」
ヒソヒソと話しているようだったけど、後ろに居た僕にはよく聞こえてきた。
「…山田さんってちょっと浮世離れして感じがえるからなんか凄いのが出るかと思ったのに…」
「…あぁ、わかる。でも、結局現実はそんなモノかもね…」
「ねー…」
どうやら、山田さんが僕以上につまらないスキルを獲得したようだった。