髪色マケインの法則②
衝撃の転校生デビューを果たした俺はこれからどんな学校生活を待っているのか楽しみで仕方が無い。
もういっそ、このまま不登校に戻ってやろうかと思うほどに今の状況は最悪だ。
でも、親父にも新しい母さんにも迷惑をかけてらんないし、そろそろ教室に戻るべきだろう。
そして俺は額から目元にかけて覆い被さっている濡れタオル(?)らしき物を取り、視界を確保した。
「知らない、天井だ。」
俺はそんな冗談を呟きながら辺りを見渡す。
恐らく、保健室に運ばれたものだと察する。
継続して辺りをキョロキョロしてると、登校中に親切にも学校のことを教えてくれた優しい青髪美少女が俺の寝ていたベットに寄りかかる形で寝ていた。
考えるに、俺の事を看病しに来てくれたのだと思うが、同じクラスだったのかと驚きもある。
俺は片手で彼女の右肩を軽く揺すり、起こすことを試みた。
すると、彼女が「んぅ〜」と眠そうに目を手の甲で擦り、両手を天に大きく掲げて背伸びしていた。
俺は彼女の右手が俺のこめかみに直撃しているのを無視して、看病してくれた感謝と先程の疑問を投げかけた。
「あっあの看病してくれてありがとうこざいます。
そっそれと、もしかしておっ同じクラスだったんですか?」
相変わらずろくに目も合わせられず、たどたどしい言葉で話しかける。
そう話しかけると、彼女は眠気がまだ残っているのかトロンとした表情でゆっくりと口を開き俺の感謝と疑問に答えた。
「転校早々にあんなことが起こるなんて、気の毒で気が気じゃ無かったわ。それと、私は貴方と同じ二年六組よ。」
俺はあんな無様な格好でいた俺を馬鹿にするのではなく、心から心配してくれた彼女の懐に深さに感銘を受けつつ、同じ組だったことに予想していたながらも驚く。
ここで俺は重大な事実に気づいた。
彼女の名前を知らないことに。
なぜ登校中に聞かなかったのかと思い返すが、ただたんに聞く勇気が無かったことを思い出し、自分の対女性コミュ障に怒りの矛先を向けつつも、この際だから聞いてみたいという気持ちが一層に強くなった。
「あっあの、そういえばおっ俺達ってまだ、お互いの名前しらないですよね?」
もう何度も考えると憂鬱なので、俺のコミュ障っぷりは気にしない事にする。
「あっそういえばそうでしたね。私はロベリア 綾音ですわ。貴方は何て言うんですか?」
俺はやはりあの可憐な顔つきは日本人とはどこか違うと感じていたがハーフだったのかと少し驚いた。
それにしても、登校中も気になっていたがちょくちょく上から目線になったり、お嬢様口調みたいになるのは少し気がかりだ。
そんな疑問を抱きながらも俺は初めて同級生としかも飛びっきりの美少女に名前を言うというこの状況に心は緊張で縛られていた。
「おっ俺は式部 紫音っていいます!」
彼女は俺の名前を聞いた途端に僅かに眉をひそめた後に、再び優しさのある表情に戻った。
「あら、珍しい苗字ですね。それにしても、なぜ式部君はあんなにも彼女に嫌悪感を示されているでしょうね?」
彼女…あっ俺の息子を二度も痛めつけた雷獣野郎か。
嫌悪感を示される理由なんてとてもじゃないが目の前の純粋無垢そうな彼女には言えない。
むしろ、言いたくない。
客観的に考えて、人にぶつかって地面に尻を突かせたのにも関わらず、明らかに下着の方に向かって挨拶をし、彼女が激昂している最中に「ちっこい」と馬鹿にする様な発言をしたなんて口が裂けても言いたくない。
しかしながら、あんなにも人の生殖器を蹴り飛ばす事に執着するはあまり理解できない。
とりあえず、目先の彼女にはそれとなく己の非礼を説明する。
「じっ実はロベリアさんと会う前に、あの子と一悶着ありまして…そっその、俺の不注意で彼女を転ばせてしまって、混乱してしまって彼女に失礼なことを立て続けにしてしまったんですよね。」
してしまって、してしまって、俺は今も混乱している様だ。やはり、若い女性と話すのは慣れない。
それを聞いた彼女は少し間を開けてから、俺に質問を投げかける。
「そうだったんですね。あんなにも彼女を怒らせる失礼なこととはどの様なことなんでしょうか?」
やはりこの問いかけからは逃げられなかったかと頭を悩ませるが、彼女に正直に話すべきかどうかという問題が俺をさらに悩ます。
俺は数秒ほど悩んだ挙句、正直に話す事にした。
彼女ならこういった話を周りに言いふらす様なことはしないと思うし、なんなら一緒にこの問題の解決方法を相談することにした。
「そっそのぉ…非常に言いづらいんですけど━━━(略)」
俺は事の顛末を包み隠さず話した。
彼女は俺の話を顔色一つ変えずに聞いてくれた。
なんなら、温かみのある笑みを浮かべて俺を慰めている様にまで思えた。
彼女は変わらずゆっくりとした口調で話す
「あら、そんなことがあったんですね。それにしても、式部さんって大人っぽい下着の方が好み何ですか?」
俺は予想外の発言に思わず「えっ」と声を漏らしてしまった。しかも、目に見えて分かるぐらい耳の先まで真っ赤に染め上がっていた。
さらに俺はあまりの展開に血迷ったのか、
「おっ俺はロベリアさんならガーターベルトが似合うと思います!」
と自分の性癖を暴露する愚行を犯してしまったのだ。
これまで驚きの一つも見せなかった彼女もこれは予想外だったのか一瞬目を大きく見開いた。
「そっそうなんですね。式部さんはガーターベルトが好みなんですね。しかも、私に似合うと。どうですか?実際に確かめて見ませんか?」
彼女は俺をからかっているのだろうか、それとも俺に気が…
などと、十七年間貞操を守り続けた俺の気が動転してしまうのには十分すぎる刺激だった。
ここで本日何度目か分からない気の迷いを再び犯す。
「いっ今ガーターベルトを持ってるなら、おっ俺が着替えさせてましょうか?」
もはや、コミュ障であるはずの俺が同級生の女の子にセクハラまでし出す様になってしまった。
俺は半日にも満たない時間で人はこんなにも変貌するかと恐ろしく思う。
俺がこんなことを脳内で巡らせている間に彼女の手には見事な純白のガーターベルトが握られていた。
俺は「どこから出したんだ」、「なぜ持ち歩いてるんだ」という疑問を置き去りにして、「漢になる時が来た」そういう意識が芽生え始めた。
俺は「学校であんな情けない姿を晒したんだから今更…」と投げやりな気持ちで彼女に、ロベリアさんを見つめていた。
「ふふっそれはとても愉快な提案ですね。でしたら、下僕みたく私のおみあしに敬意を払って着せなさい。」
と彼女は先程の温かみのある声とは一変して人を嘲るような鋭い声色で言った。
そして彼女は俺が面食らった顔を尻目に自らの両足を俺の丁度腰あたりに差し出した。
俺は彼女の足を目の前にして、額から冷やせではなく興奮による汗を垂らしていた。
そんな呆然と足を見下ろしている俺に彼女は容赦なく、
「さぁ、早くなさい」
と命令する。