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先輩少女を可愛がったら一生離れられなくなった話  作者: 月白弥音
Summer Vacation 〜運命の出会い〜
9/9

礼儀の行方

驚愕で頭にあったものが全て消え去った凛翔のテストは散々なものだった。

家に帰る今でも頭の中には???で埋め尽くされている。

確かに中学生の義務教育期間に一人暮らしは違和感があった。

しかし、家事能力の低さと見た目で自分と同じ高校生、ましてや年上などとは全く考えていなかった。

だからこそ、年下だと思って接していたし、敬語なんて使っていなかった。

そう言うわけで。


「これから、どう接しよう……」


頭の中で考えたことが口をついて出た。

これからがあると決まっているわけではないが、隣同士である以上顔を合わせる機会もあるだろう。

年上だと分かった以上敬語で接するべきだろうが、今更変えるというのは違和感がある。

かといって今まで通りの接し方というのも……

そんな考えが頭を巡っている間に自宅マンションへ到着した。


「まあしばらく会わないだろ」


そんなことを言いながら、地下の駐輪スペースに停めて、エレベーターで4階へ向かう。

自宅まで直通とはならず、1階のエントランスでエレベーターはドアを開いた。


「あっ」


「あ、え、ええ……?」


開いたドアの向こうにいたのは今絶賛凛翔の頭を悩ませている張本人の瑠奈だった。

瑠奈も凛翔が着ている制服で同じ学校の生徒だと認識したのだろう。

2人はお互い箱の内と外で硬直し。


――ガコン


2人を遮ろうとする扉で我に返る。

凛翔は慌てて「開」を押し、できた隙に瑠奈が入り込んだ。


「あ、ありがとう、ございます……」


「いや、全然、大丈夫……です」


なんとなく、敬語になる凛翔。

誤解を解かなかったにしろ、まさか同じ学校の生徒だとは考えていなかった瑠奈。

次に扉が開くまで、時間にしては1分程度だが、2人は数十分にも感じた。


「あの、私のこと見た……んですよね?」


2人の部屋の前に着いた時、突然瑠奈が口を開いた。


「え、ええ、まあ……」


「んー……じゃあ改めて私は葵瑠奈、高校2年生。一応生徒会に入ってるから定期的に前に出る役をやってるの」


「俺は朝香凛翔、高1です。勝手に年下だと決めつけてタメで話してて本当にすみません……」


「それは大丈夫、私ってこんな見た目だから年相応に見られたことないから……」


瑠奈の口から自嘲するようにポツリと言葉が溢れた。

凛翔が考えている以上に改めて口にされるのは辛いのかもしれない。


「すみません……」


大丈夫とは言われたものの、重ねて謝罪をしていた。


「いいって、私もまさか、自分より年下で一人暮らしなんかしてないと思ってたから敬語で喋ってましたし」


「まあ確かに……でもそちらの方が年上なんですから敬語はやめてください」


「そんなこと言うならあなたもやめて欲しいな。今更敬語もなんだか違和感で……」


「わ、分かった、そういうことならそうさせてもらうよ」


「じゃあそういうことで。またね、朝香くん」


「あ、はい、また」


そんなやりとりの後に開かれたドア。

ドア越しに見える瑠奈の部屋は心なしか以前よりものが散乱しているように見えた。


「あのさ」


「ん? どうしたの?」


「勝手に見たのは申し訳ないんだけど、なんか前より部屋散らかってきてないか……?」


「え、そ、そんなこと……あるかも?」


「片付けくらいしろよ……」


「あはは〜、耳が痛いこと言うね。掃除とか家事とか()()()()()()()()()わかんないんだよね」


「やったことがない? それでよく一人暮らしなんかしようと思ったな……」


「あー……まあ、色々あって……」


笑顔に包まれていた顔が突然曇る。

事情を聞きたいわけではなかったが、瑠奈からすれば事情を聞かれたように感じただろう。


「あ、悪い、不躾だった」


「ううん、全然大丈夫! できないなりに頑張ってはいるんだけど、中々ままならなくてね」


すぐに笑顔が戻り、話し始める瑠奈。

そんな様子にどこか違和感を感じながらも、凛翔は気のせいだとそれを頭から振り払った。


「最初は大変だよな、俺もそうだったし」


「なんだか意外、なんでもできるのかと思ってた」


「なんでもなんてできないよ。ある程度の家事ができるだけだ」


「確かに、ご飯美味しかったもんね。尊敬するよ」


「褒めても何も出ないぞ、というか、食事を集ろうとしてないか?」


「え、していいの?」


迂闊だった、表情にこそ相変わらず出ないが内心頭をかかえる。

校内で有名らしい彼女と関わりを増やすのは凛翔にとって得策とは言い難い。

しかし、自分でそう言ってしまった手前、断ることもしにくい。

つまり。


「ちょっと待ってろ」


「やったー!」


夕食を詰めたタッパーを渡すことしか選択肢はなかった。

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