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先輩少女を可愛がったら一生離れられなくなった話  作者: 月白弥音
Summer Vacation 〜運命の出会い〜
3/9

2.初めての出会い

定期的にカップル2人の襲撃を受けて昼食を提供したり、学校の夏期講習に参加したりしているうちにあっという間に7月は過ぎ。

8月に入ってからも変わらず襲撃を受け。

夏休みだからといって交友関係の狭い凛翔は予定が追加されることもなく、気がつけば8月後半に差し掛かろうとしていた。


「あっつ……」


真上から燦々と照らす太陽に恨めしそうに睨む凛翔。

夕食に作ってみたいから、と日中に買い出しに行ったのは間違いだったかもしれない。

茹だるような暑さを我慢しながら自宅マンションに辿り着く。

ふと周りに目を向けるとマンションの玄関近くにトラックが止まっていた。

CMでよく見るコアラのマークを掲げたトラックに凛翔は引越し業者のトラックだと気づいた。

新しくくるのか、出ていくのかわからないが、近所付き合いもない現代においてはほぼ関係のないことだった。

凛翔の交友関係のなさも相まって隣にどんな人が住んでいるのか、彼は知る由もなかった。






「さてと……」


買ってきたものを片付けながら今日作るつもりの料理の工程とレシピを思い起こす。

今日のメニューはキッシュとクリームパスタ。

作り慣れたものの一つとはいえ、唐突に作ろうと思ったら材料が揃っているわけもなく。

ついでに他の不足していたものの買い物を済ませてきたのだった。


「うし、やるか」


買い物前に冷やしておいた材料を計量し混ぜ合わせる。

温まらないように手早く粉っぽさがなくなって粒状にまとまるまで混ぜ合わせる。

まとまってきたら一つにまとめてラップに包んで冷蔵庫に入れる。

これだけでキッシュのベースのタルト生地の仕込みは完了。

夕食を食べるときに残りの工程はすればいい。

掃除や洗濯といった家事は午前中に全て終えているし、課題も7月中にほぼやり終わっている。

まだ高校に入りたてで将来をイメージできない凛翔は課題以外の勉強をする気持ちにはならなかった。

つまり、暇なのである。

テレビやゲームなどの基本的な娯楽は揃っているが、夏休みとはいえ平日の日中に男子高校生が好む番組は放送されておらず、1人でゲームをあまりしないため、今日もスマホを片手に時間を過ごすことにする。


「勉強、しないとなぁ……」


動画サイトをスワイプしながら2学期になってすぐにあるテストを思い出す。

しかし、まだ2週間近くあるから、一瞬顔を出したやる気はすぐに息を潜めた。

今日のところはソファに身を沈めることを選んだようだった。

再びスマホに目を落とすも特に目的のものがあるわけではなく、ただ流れてくるものを流し見している。

長期休みならではの無意な時間の過ごし方。

贅沢な時間の使い方をしていると不意に電子的なチャイム音が鳴った。

マンション入り口からのチャイムではなく、玄関からのチャイムに凛翔は首を傾げる。

マンション入り口は住人がロックを解除しなければ入れないはずだが、凛翔が解除をした記憶はない。

不審者? そう考えながらも一旦ドアホン越しで応対することにする。


「はい、どなたですか?」


不安を抱えながらも冷静に対応する。


『えっと、今日からお隣に引っ越してきたのでご挨拶を……」


聞こえてきたのは鈴のような可愛らしい女の子の声。

モニター越しに映るのも中学生くらいに見える少女であり引っ越しの挨拶というのは間違いなさそうだった。

さっき見たトラックはこの子たち家族のものだったか、そう思いながら玄関に向かう。


「お待たせしました……って君1人?」


玄関を開けながら声をかけるとそこには先ほどの少女1人だった。


「初めまして、今日お隣に引っ越してきた葵瑠奈(あおいるな)です。よろしくお願いします」


緊張しているのか、硬い表情のまま挨拶をする少女、もとい瑠奈。

白いワンピースに身を包んでいる彼女は凛翔に比べて頭ひとつ小さく、中学生程度に見える。

肩につく程度の綺麗な髪。

表情こそ硬いも二重で目が大きく整っている。

そんな彼女は世間一般から見ても可愛い部類に入るだろう。


「こちらこそ初めまして、俺は朝霞凛翔。あまり付き合うことはないかもしれないがよろしくな。……ところで、ご両親は?」


凛翔も人のことは言えないが、中学生の一人暮らしは流石にありえない。

転勤か何かで家族で引っ越してきたのだろうと確認する。


「あ、えっと……両親は……」


突然歯切れの悪くなる瑠奈。

何かしらの事情がありこれないのだろうことを察した凛翔。


「家で何かやってるのか? 別に俺は構わないから気にしないでくれ」


「あ、はい、ありがとう、ございます……」


少しほっとしたように表情が緩む。

その柔らかな表情に凛翔の心臓が不意に跳ねる。

それを抑えて冷静に話す。


「そっちは角だから隣はうちだけだらわからないことがあったらお手伝いします、とご両親に伝えてくれ」


「は、はい、伝えますね……」


社交辞令的に頼ってもいいことを伝えておく。

実際に手伝うなんてことはないだろうと思いながら。

そんなことを思う凛翔は嬉しそうに見上げる瑠奈に気づかなかった。

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