第一話 君の未来は
辺りが焦土と化している。
幼い姿をした僕は抱きかかえられている。
僕は目の前にいる傷だらけの男を見つめ、込み上げてくる切なさと悲しみを言葉にする。
「いかないで……。」
彼は僕の頭を撫で、僕を他の人に渡した。
僕は彼にしがみつこうと手を伸ばす。しかし、幼く短い手は何も掴むことができなかった。
やがて僕は水の入った装置に入れられ、泣き疲れた僕は眠りへと落ちていく。
「おきて!! おきてよ!! しなないで!!」
少女の声で僕は起きる。僕は黒い服にサングラスをかけた大人の人に殴られ、意識を失っていたようだ。
「よかった……。いきてた……。」
この少女と僕には名前も親もいない。ただ二人だけの信用し合える仲間だ。
僕たちの生きているこの街は、僕を殴った大人のような格好をした人や、“60分20000G ホ別” と書かれた紙を首から下げた女の人たちが立っていたりする。(どういう人たちなのかは察しがついている。)
僕たちみたいな子供が歩いていない街の人気のない路地裏で、僕たちはレストランの残飯をもらって(勝手に)食い繋いでいる。
「ちょっとまってて。いまばんそうこうもらってくるね。」
そう言って彼女は路地を抜け、奥の通りに面する(なぜか僕たちに優しくしてくれるお兄さんがいる)診療所へと向かった。
連続した爆発音があたりに響く。何かが近くのビルに直撃したようだ。瞳の中でそのビルはゆっくりと倒れていく。
次の瞬間、粉塵はあたりを飲み込み、同時に焦げた匂いを僕に持ってくる。戸惑いと焼け焦げた匂いはいつかの夢を思い出させ、名前がわからない大切な人を連想させる。
「シーベルヌースの連中だ!!!」
大人の叫びによって現実に引き戻された僕は、急いで路地から抜け出そうとする。しかし、目の前に大きな影が立ち塞がった。
「なんだぁ? がきぃ?」
ヒョロガリの兵士が言った。
「どうちたんでちゅかぁw? こんなちあんのわるいところであそんじゃだめでちゅよぉぉぉw? ままのところに かえりまちょうね〜?」
デブはこちらを煽っているようだ。
「おいおい、こんなところに住んでるガキの親なんていないもんだろ。」
ヒョロガリが返す。
「だったら殺してあげた方がいいなぁ。」
デブは銃を構えて言った。
「そこの兵士さん達。」
この場にそぐわない爽やかで、どこか懐かしい声が兵士の背後から聞こえた。
「どうしてあげた方がいいって?」
その声に反応して兵士は後ろを向く。だが、声の持ち主は同時に二人の兵士の腕を切り離して無力化した。
「大丈夫?」
青年は屈んで僕に目線を合わせ、再び声を発した。
僕は首を縦に振ったのち、
「おにいさん、おんなのこをしらない?」
と尋ねた。
「ごめんね。僕は見ていないんだ。だけど、今この街に、僕の仲間も来ている。僕たちの目的は逃げ遅れた子供を保 護することだから、見つけたら絶対に会わせてあげられる。」
「ほんとう?」
「本当だよ。」
「やくそくしてくれる?」
「うん。約束する。」
僕はお兄さんに背負われ、街の外れにある大きな家に連れてきた。
「ここが、今日から君が暮らす家だ。」
「こんなおやしきに…?」
「ああ。君の他にもたくさん子供がいるけどね。 僕もここで育ったんだ。」
「そういや、君の名前は?」
「なまえは…ない…。」
「じゃあ僕がつけてあげよう。う〜ん。フ…フラ…フラム! フラムってどう!?」
「フラム?」
「うん。たしか…どこかの国で『前へ』って意味だったはず。 大人になっても、前を向いて生きられますようにっ て。 未来の君への、僕からのプレゼント。」
「プレゼント! ありがとう! いっしょうだいじにするね!」
「はは。これからよろしくね。フラム。 ちなみにだけど、僕の名前は、ロイっていうんだ。」
「うん! よろしくね! ロイ!」
その後、ロイは僕を大きな家に預け、逃げ遅れた子供を保護するべく街に戻っていった。
今回初めての投稿で、文章など拙い部分もあるのですが、暖かい目で見守っていただけたなら幸いです。次回は一週間後までには投稿するつもりなので、そちらの方も見てみてください。あとやっぱり伏線を仕込むのって楽しいですね。基本的には狙ってやっていますが、たまたま伏線になった時はほくそ笑みます。この物語はまだまだ始まったばかりで、これからどんどんキャラや展開を出していきます。読んでくださった皆さん。何卒よろしくお願いします。