【第05話】仮入部3
あー、むかつく。
むかつくむかつくむかつくむかつく!
あたしはお兄とツキ子姉を置いて早足に学校を出た。
道は薄暗くてちょっと怖かったけど、あの二人とはとても一緒にいられなかった。
物心ついたときには一つ上のお兄は保育園の教室で空手をやってて、
あたしも年少になるとすぐに教室に入った。
稽古は大変だったけど、お兄と一緒のことができるのが楽しかった。
どちらかが試合に勝つと自分のことのように喜び合った。
そんなときがまだ、まだまだ続くと思っていた。
なのに、ロボットなんて!
ツキ子姉もツキ子姉だ。
隣の家に住む年上の幼なじみで、頭がよかったツキ子姉は、
高校に入ってから部活でロボットを作り始めた。
あたしには絶対そんなことできないし、すごいと思っていた。
なのに、まさかお兄をロボット部に引き込むなんて!
「ぐわっ!」
「えっ!?」
考えごとをしながら早歩きしていたせいか、
ちょっと勢いがついて頭突き気味に誰かの背中にぶつかってしまった。
「誰かと思えば、岩田リク二年生の妹の、岩田ウミ一年生ではないか。」
この芝居がかった口調は少し前に聞いた。
振り返ったのは、お兄たちのロボット部の部長だ。
「あっ、すみません。」
「我輩は大丈夫だが、今後はもう少し気を付けて歩くことだな。
岩田リク二年生は一緒じゃないのか?今日は妹の付き添いと聞いていたぞ。」
あたしが黙っていると、部長は口元をつり上げてにやりと笑う。
「ははあ、兄妹喧嘩か。
見学会でも未練たらたら恨み節といった感じだったものな。」
「あなたに何がわかるのよ!」
ただでさえイライラしているところに、このにやけ顔だ。
あたしは一発入れそうになるのをこらえつつ怒鳴った。
「知っているさ、少なくとも岩田リク二年生が我がロボコン部に来た理由はな。」
「えっ?」
「知りたいか?」
知りたい。
にやけ顔が憎らしくて一瞬だけ躊躇したが、あたしは結局屈した。
「知りたい…… です。教えてください。」
「断る。」
「はあ?」
部長は再びあたしに背を向けるとゆっくり歩きながら捨て台詞を吐いた。
「知りたかったら本人に頼んでみたらどうだ?大好きなお兄ちゃんに。
はっはっはっはっ。」
……。
…………。
………………はあ?
この部にはあたしの神経を逆なでする奴しかいないのか。