【第02話】新入生見学会2
がしょんがしょんがしょん、ぷしゅー……。
なんて音を立てて鈍重に動く機械を想像していただろうな。
おあいにく様、新入生たちよ、度肝を抜いてやるぞ!
俺は物置を勢いよく飛び出すとジャンプ。
空中で一回転して、部長の隣に着地した。
おおー、と歓声が聞こえる。
気持ちよい。
「ちょっとちょっと、部室が壊れちゃいますよ。」
遅れてツキ子先輩が小走りで近づいてくる。
うおお、とまた歓声。
……って、さっきより声、大きくない?貴様ら、美人好きか?
制服の上から作業着を羽織り、顔には丸メガネと洒落っ気のない格好だが、
それでもわかってしまうぐらいツキ子先輩は美人だ。
たぶん学年三位には入る。
などと考えながら新入生たちを眺めると、
俺の回転ジャンプもツキ子先輩の容姿も見慣れていて動じない、
我が妹と目が合った。
「お兄、ずいぶんノリノリじゃない」
「どうだ、格好いいだろう」
妹の難癖を軽く流していると、部長がまた新入生全体に向けて口を開いた。
「刮目せよ、これが我が部が誇る装着式ロボット、ツキカゲ。
そして、パイロットの岩田リク二年生だ!」
装着式ロボットは人の体をベースにロボットパーツを装着させる。
俺は今、学校のジャージ上下を着て、
頭はヘッドギア、
両拳と両足のひざから下は金属製サポーターで覆われていた。
このヘッドギアは通信機能で試合中にアドバイスが聞けるし、
搭載されたAIがサポーターを制御し、
俺の体の動きをより速く、より強くしてくれる。
「……ダッサ」
妹がジト目で言うが、ほかの新入生の手前、俺は笑顔を崩さない。
我ながら役者だ。
「ツキカゲの設計リーダーをしているのが、メカニックの江波ツキ子三年生だ!」
「装着式ロボットはほかのロボットより運動能力に優れ、
バッテリーの持ちもよいんですよ。
さっきの岩田くんみたいな動きが、練習すれば誰でもできます。
興味があったら、是非仮入部に来てくださいね。」
部長の紹介を受けて、ツキ子先輩が一歩前に出てツキカゲの説明をした。
うおお、と再び歓声。
新入生には妹以外の女子もいるが、男女問わず美人は人気らしい。
これ、ツキ子先輩がツキカゲ付けて出るのが一番よかったんじゃないか?