96話
その日は朝から、ギルド周辺に変な雰囲気が漂っていた。
それでも、言葉にならない違和感を感じるくらいで、せっかくの土曜日、みんな揃ってダンジョンに入れるこの日を、逃す訳にはいかない。
3階層での活動も安定してきたので、『ゴブリンの集落』はセオリーに従ってスルーして、4階層の入り口まで確認してきた。
この日の討伐数は、僕たちには過去最高の数を狩る事が出来た。にもかかわらず、ドロップの方も過去最高の渋さだった。
ゴブリンにアイテムを持ち逃げされた訳でもないのに、信じられないドロップの少なさだ。
「なんなのだ・・・、これは?」
「ミラ落ち着いて、編集のしかた次第では、前回の物を超えられるかもしれないよ!」
「このドロップでか?」
「このドロップ運だからこそだよ!」
うん、僕も遥君に同意だ。
これほどひどいドロップ運は、ある意味すごい。
だから、上手くやれば、見てもらえるかもしれない。
僕としては、正直辛いけどね・・・。
でも、人の不幸って結構笑えるんだよね。
僕は、遥君のプロ根性に脱帽だよ。
こんな日もあるよ!とかみんなを励ますかと思いきや。
これは、笑いが取れるって、すごすぎるでしょう?
「もう、今日は帰ろう・・・。」
「そうですねぇ。」
エミリアやソフィアですら、このテンションだ。
ミラさえ納得してくれれば、僕は帰る一択なんだけどね。
せっかく撮影してくれているから、僕も丸投げしてる立場としては、協力せざるを得ない。
なんと、遥君はミラに、2人の撃沈してる様子を撮らせた。2人は気がついていない、仕方ないので僕も、体育座りで遥君の期待に応えた。
ミラの、地面に突っ伏す姿には敵わないけど、絶望感がしっかりと伝わると思う。
まあ、半分は演技じゃないしね・・・。
遥君の仰向けに寝転ぶ姿も見事だった、もう、目が死んでたね。
ミラと遥君の姿がインパクトがあり過ぎて、僕らは皆さんの記憶には残らないかもしれない。
君たちも、演技じゃないんだね・・・。
この日、僕らにしては、早めにダンジョンを出る事になった。
続けられなかったんだよ、・・・精神的に。
「今度こそはと思ったのにぃ・・・。」
「仕方ないよミラ、7階層遠征部隊の入場映像には勝てないって。」
「そんなのが上位に幾つもランクインしてるんだぞ!?あれがなかったら、もう10位は上にいたはずだ!!」
うん、僕らの投稿は結構頑張ったと思う。沢山の人に見てもらえて、週間、日間、ダンジョンの部門で100位入りを果たしたし、応援メッセージなんかも頂いた。
だけど、先週は一大イベントがあったんだ。それが、7階層遠征部隊のダンジョン入場だ。
日本の『インペリアル・ブシドー』は世界的にも有名だし、それが、公然と姿を現す数少ないチャンスなんだ。当然各国はこれに注目する。
だから、先週上位を狙いたければ、これを撮影して投稿するのが正解。
「せめて、学校のある時間でなければ!私もコネをフルに使って撮影したのに!!」
「ミラ、さすがにそれはちょっと・・・。」
ミラの負けず嫌いが炸裂している。
時間さえ合えば、自分もその手を使ったと、なりふり構わないほどの負けず嫌いだ。
短い付き合いだけど、まさかこれほどとは思わなかった。
そこから、ダンジョンから出た僕は、違和感を確固たるものだと感じ始めていた。




