95話
僕は『羅シャツ』の調整を頼みに来たら。ギルドの奥から、今野さんといわれる方が、呼ばれて出て来た。
調整や修繕を行ってくれる、『錬金系』スキルの持ち主だ。
この豊田ダンジョンには、数人配置されてるはずだけど、今はこの女性の方の担当時間らしい。
顔色が悪そうで不満タラタラだ、どうしたんだろう。
「あのハゲ、無茶な勤務日程押し込んどいて、テメエは定時だと?ふざけんなよ!今度ストライキ起こしてやるからな!テメエの頭の毛を、全部毟りとるまでぜってーやめねえからなぁ!覚えてろよ!!」
ブツブツと怖いのですが。
「えっと、お忙しいところ申し訳ありません。装備の調整をお願いしたいのですが、大丈夫でしょうか?」
主にこの人の、心身の健康が不安だ。
「あ?おお、悪いな、子どもにまで心配かけちまって。大丈夫だ、大人に気を遣っても良い事ないぞ、もっと自由にやれよ。」
「はあ、どうも。でもそれだけ顔色が悪いと、心配にもなりますよ?」
「はっはははは!こんなものは、あのハゲを吊るせば直ぐにでも治るってもんだ!心配要らないよ。」
人を吊るすのに、どうやったら心配要らないんだろう?
僕には、人生経験が足りないようだ。
「やるなら、首に縄つけて吊るしてね。」
「もちろんだ!」
静香さんも賛同のようだ。
ここは、出直した方がいいかもしれない。
ギルドは意外とブラック職場のようだ。
「おい、お前お茶淹れて来い。」
「はっ!」
え?警備の自衛隊員の人に、お茶汲みさせてるよこのお姉さん。
スキルがある訳だから・・・。そっか・・・、このお姉さんたちも、実は、自衛隊員か何かなんだ。
「スキルがない方が自衛隊は楽だからな。坊主も気をつけろよ?間違ってスキルなんか持っちゃうと、あたしたちみたいに、こき使われるからな。退役しようにもフリーは危ねえし。はぁ〜、あたしはLvだけ上げられれば良かったのによぉ。何でこんな事に・・・。」
・・・スキル持ちのお姉さんは、濃い人が多いよね。
自衛隊員さんが持って来たお茶を飲みながら、お姉さんが聞いて来た。
「それで?調整してほしいアイテムってのは、どれだい?」
「これです。」
僕は、もちろん『羅シャツ』を出して、お姉さんに見せる。
「おいおいおい、初見のアイテムだなぁ。静香、鑑定はしたのか?」
「断られました。」
「〜っん!しゃあないか!情報は力だからな。売る気になったら言えよ坊主。」
カラッと話しやすいお姉さんだ。
「はい。情報料が上がったら検討する予定です。」
「はっはは!ちゃっかりしてるねぇ!嫌いじゃないよ。それで?ぴったりに仕上げれば良いのかい?」
「どうなんでしょう?肌に直接着る予定なのですが、余裕があった方が良いですかね?」
さっきまでも触っていたけど、お姉さんは本格的に素材を確認しだした。
「直接か・・・、ふむ、肌触りも悪くないし、収縮性もバッチリだな。数ミリ小さく作って、ピッチリ着る方が良いかもしれないな。好みもあるからな、どっちでもいいぞ?」
「じゃあ、ピッチリ着るのを試してみます。合わなかったら、また持って来ますね。」
「おう!任しときな。金はもらうけどな。」
「もちろんです。」
その後、僕はササっと採寸されて、サイズは直ぐさまアイテムに適応された。
採寸はあくまでも目安らしい、その方が調整が上手くいくんだとか、話してくれた。




