94話
ダンジョンから戻った僕は、鑑定室を使って『ホブゴブリン』のドロップを鑑定した。
スポーツをやる人なんかが着てる、黒い半袖の下着にしか見えない物だ。
『羅シャツ』
薄い布地のシャツ、羅刹の愛用する肌着。
DEF:1
MDEF:2
力+1
げ!?
また、すごい物が出て来た!
それにしても、何て読むんだ?らシャツ?
能力アップ系って、ベラボウに高いのに・・・。
お前のおかげか?
僕は、幸運の名を持つウサギの尻尾を撫でる。相変わらずの手触りだ。
それにしても、装備って幾つまで着けることが出来るんだろう?
アクセサリーは、分かってる。いや、超人と言われるLv10を超えたら、3つ目とか着けられるかもしれない。そもそも、Lv0とLv1で着けられる数が違うんだから、そのくらいの事は、あってもおかしくはないだろう。
装備の制限がないのなら、コットンシャツの重ね着とかDEFが高くて、なおかつ軽いからお得な感じがするけどね。
いつものお姉さんがいたら、聞いてみたかったんだけど。
ここ数日、お姉さんの姿が見当たらない。
ついに、ダンジョン内に配置変換されたのだろうか?
日本も、ついに7階層に挑むって話だから、お姉さんみたいな強者を、遊ばせておく訳にはいかないだろう。
また、お姉さんがストレスを溜めてないといいけど・・・。
僕がショップを覗いていると、髪の長いお姉さんこと、静香さんに手招きされた。
(「幸太君、無料での鑑定は行なえないわよ?」)
わざわざ顔を近づけて、声を潜めて話しかけて来る。
このお姉さんは、僕をなんだと思っているんだろう?
「ちゃんと、鑑定室で鑑定して来ましたよ。」
「あら?そうなの?てっきりその為に来たのかと。」
「内緒にするって、約束しましたよね?」
「感心だわ!舞なんて、直ぐにアイテムを持ち込んで来たのよ!?」
お姉さん、あなたは何をやってるんですか・・・。
お姉さん繋がりで、僕も信用がない訳か。
それじゃあ、この反応も仕方ない気がする。
「そうだ、その都築さん最近見かけませんけど・・・、あ、分かりました、聞きません。」
このお姉さんは、ポーカーフェイスを少し練習した方がいい。
何しろ、まずい情報で、話せないって、デカデカと顔に書いてある。ここまでくると、顔芸の領域だろうか?
それとも、私の顔を見て悟れというサインだろうか?
「えっと、そうだ。装備って幾つまで着けられるんですか?」
「明確には決まってないわよ。だけど、8〜10個が限界だなんて言われてるわね。重量もあるけど、着膨れしてたら、動けないわよ?」
「なるほど!」
確かにその通りだ。このゴワゴワのコットンシャツも、10枚はとても着ていられない。
腕の可動域を、著しく制限するハメになるだろう。
スパイダーコットンでは、今度は防御力が足りなくなる。
「最初はいいけど、探索を続けて行く気なら装備選びは慎重にね。」
「はい、ありがとうございます。それで、これを調整して頂きたいのですけど。担当の方おられます?」
僕は、さっきから手に持っている、『羅シャツ』をお姉さんに見せて尋ねる。
「それドロップだったの?鑑定して良い!?」
「ダメです。あれ?お姉さんでも見た事ないんですか?」
「ないわね〜。ギルドのショップで働いてても、世界中に出回るアイテムの、3%〜5%も見られれば良いところよ。」
これは、さすがに意外だった。
てっきり、アイテムのほぼ全てを網羅しているものだとばかり思っていた。
ダンジョンの1割がある日本だけど、1割しかないとも言えるわけで。まして、未だ1個しか見つかっていないアイテムだって、幾つもあるはずだ。
情報の売り買いの重要性が、認識出来るところだ。
「珍しいアイテムを隠すのは、基本ですよね?」
「ダメかぁ〜。」
このお姉さんは、都築さんと違って、警戒心を呼び覚ます為にやってる訳じゃなくて、本人の好奇心でもって言ってるようだ。
気をつけよう。
「おっと、サイズ調整だったわね。今野さ〜ん、お客さ〜ん。」
今は、今野さんといわれる人の担当時間らしい。




