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90話

 僕らは、モンスターのやって来る方向へひたすら前進した。

この3階層のどこかに、『ゴブリンの集落』が幾つかあるって話だ。


 集落内のゴブリンは、ここまでの奴とは一味も二味も違い、Lvも3階層に出て来るモンスターとは思えないほどだと聞いている。


 世界中のダンジョンで『ゴブリンの集落』は度々見られ、その都度、ひどい被害を出しながら攻略されて来た。

 今では、スルー推奨の筆頭だ。

 人的被害を含め物資など資源を消費して、得られる物と釣り合わないと言われている。


 銃弾もタダじゃないしね。

 RPGじゃあ、遅くて避けられる可能性すら出て来る。

 ダンジョンに戦車を持ち込んで、攻略した国もあった。戦車の分厚い装甲が切り裂かれ、結局ダンジョン内に破棄するハメになったとか。


 それでも、威力に任せてごり押しすれば、ドロップごと破壊する事になりかねない。

 これでは、ただの出費だ。


 その上モンスターの数が多くて、事故が起こりやすい。

 日本も、東京ダンジョンの4階層で見つけ、これに挑んで、手痛いしっぺ返しを受けている。


 その為、今では、過去の武装だけで挑むのは愚行だと言われて、『ゴブリンの集落潰滅』はダンジョン産装備で身を固めた探索者の、一つの達成目標だと言われている。




「『ゴブリンの集落』攻略が頓挫とんざしたところから、『インペリアル・ブシドー』が注目され出したんだよね。」


「『ゴブリンの集落』の攻略は、当分無理だって言われ出した矢先に、攻略を成功させちゃったからね。」


「思った以上に数が多いぞ。あわよくば攻略してやろうと思っていたのにな。」


 そんな事だろうと思ったよ、いやにミラが、『ゴブリンの集落』に興味を示してるみたいだったからね。

 でも、ほら、見てよ!


「見慣れない武装のゴブリンが結構いるな!」


「あれは、先日エミリアを七転八倒させたシャーマンですね。複数いますよ・・・。」


「うげぇ!?」


 エミリア、「うげぇ」はないでしょう。

 ミラも突然苦しみ出して、ソフィアと2人で慌てたものだ。それなのに10分程度経ったら、2人ともケロッと復帰した。


 アレがデバフの効果だ。

 本人たちに聞くところによると、ひどい吐き気や目眩めまいに襲われたそうだ。ゲームでいうところの毒の効果だと思われる。HPじゃなくて、体調に表れるんだね。


「幸太あっち!長い杖を持ってるの、『ゴブリン・メイジ』じゃない!?」


 遥君の声に視線の先を追ってみると、確かにそれらしき姿の奴がいる。

 僕らにとってメイジといったらミラだ。あんな魔法を叩き込まれたら、人間なんてひとたまりもない。

 冗談みたいな戦力だ・・・。



「ヤバイ・・・、族長みたいなのと、その取り巻きがいる・・・。」



「・・・みんな、撤退しようか。見つかったら洒落しゃれにならない。」


 返事はなかったけど、みんな直ぐに撤退を開始した。

 そうだよね、あれは見るからにヤバかったからね。


 しばし無言で『ゴブリンの集落』から距離をとる、遭遇戦もなし、追っ手もなし。

 それなのに、かなりの冷や汗をかいた。



「・・・今日はここまでだね。ミラ撮り忘れはない?良ければダンジョンを出よう。」


「特にはないな、しっかりと編集して投稿するからな、楽しみに待ってろ。」


「ミラ、何か手伝える?」


「そうだな・・・、次回までの間に一つ、今回の踊りのレクチャー動画を挟もうか。いつも通りで構わない、ポイントを押さえた手本と、通しで1本行こう。きっと興味を持つ奴がいるはずだ。」


「それを撮って、次までに送ればいいかな?」


「そうだな、出来れば投稿は週2以上が望ましいが、それも厳しいからな。まずは週1で視聴者に忘れられないようにしないとな。」


 僕が言い出したはずの配信なのに、もう完全にミラに丸投げだ。

 しかも、ミラはしっかりと考えて動いている。僕の見切り発車とは訳が違う。


 カムフラージュのはずのダンス配信が、何か本物に化けそうな気配です。


 まあ、遥君のスキルがばれなければ、何でもいいんだけどね。

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