9話
僕はやっと1匹のゴブリンを倒した。
落っことしたペットボトルが、まだダンジョンに消えていない事に安堵して、回収して座り、喉を潤す。
たった1匹倒しただけで、正直ヘトヘトだ。
僕は、木の棒で叩かれた箇所を確認しながら、セルフ反省会をする。叩かれた所は少し赤くなっている、だけど、それだけだ。
これならば、腫れる事も、痣になる事もないだろう。
DEF6に感謝だ。
今思い返すと、バタバタだった。
こちらは躊躇してしまうのに、ゴブリンは何の躊躇もなく木の棒でぶっ叩いて来た。
普通、人間ならば相手の痛みを考えて、意識的、無意識的に手加減してしまうものだ。だけど、ゴブリンにはそんなもの一切感じられなかった。
ただただ、敵意、悪意、殺意、それだけだった。もちろん、僕がそういうものに敏感だって訳じゃない。だけど、居るよねクラスに1人くらいは、そういう嫌な雰囲気を放ってる奴。
そんな奴でも、最低限の社会性は身につけているものだけど。
ゴブリンは違う。
暴力を悪い事だなんて、ゴブリンは思っていないのだろう。
僕だって、暴力を完全に否定したい訳じゃない。身を守る為に、秩序を守る為に必要なものだって分かっている。
それでも、軽々しく振るって良いものじゃないと、理解しているだけだ。
だけど、ゴブリンは無邪気に邪悪だった。
あれとは相容れないと、心に刻み込まれた気分だ。
だけど、悪かった事ばかりじゃない。
ゴブリンが、躊躇なく叩いて来てくれたおかげで、こちらも躊躇いを捨てられた。
今度から、僕はゴブリンを殺す事に、何の躊躇いもなくやれるだろう。
手応えも、角煮の仕込みくらいに、思えるようになると良いのだけれど。
豚バラ肉のブロックに、フォークをブスッと刺して、味が染みやすくするんだ。縮み難くする効果もあるとかないとか。
まだ、気持ちの悪い手の感触が離れない。
「あれ?人だ。」
「残念、ゴブリンじゃなかったわね〜。」
「仕方ない、次に行こう。」
僕は俯いてて、人が近づいて来るのに気づくのが遅れてしまった。
顔を上げると、そこには3人の女性が居た。
「・・・あっ、ども・・・。」
軽く会釈だけしておく。
「休憩中でしょう?大丈夫大丈夫、そのまま座ってて。」
3人とも外国人だった。
背の大きい順に、モデルさんかと思うくらい背が高くて、美人な茶髪の人で、ヒスパニック系なのか少し黄色がかった肌の白人風女性だった。
真ん中の僕に声をかけてくれた人は、僕よりは背が高いけどモデルさんほどじゃない、眼が大きくて緑色、金色の長い髪で、3人の中では1番スタイルが良い。
超美人!
3人目は明らかに僕よりも背が低い、スレンダーな体型にジト目が標準装備なのだろうか?こっちをジトッと見ている。
「ねえ、この辺のゴブリンはみんな狩っちゃった?」
「いえ、・・・僕がさっき1匹倒しただけですね。」
「そっか、ありがとう。探してみるよ。」
モデルさんの質問に、僕は緊張しながらも何とか答えた。
「じゃあね!」
美人さんが手を振ってくれたので、僕も振り返しておく。
ジト目さんもヒラヒラと手を振ってくれた。
あの人、最後までジト目だったな。
会話出来ていた理由は、次に持ち越し。
ジト目で終わりたかったからね!
ヒロインついに登場!やったね!
ヒロインが居ないと、書いててもつまんないんだよね!