88話
何とかトイレに逃げ込んで、僕は社会的な死を免れた。
時間がかかったのはしょうがないんだ!エミリアの体温を思い出すたびに、トイレから出られなくなったんだよ!
トイレから出るには、立ったままじゃダメなんだ!!
僕が教室に戻る頃には、お昼休憩は終わっていた。
うちのクラスは、Lv1以上の人がいっぱいだ、みんな空いてる時間でダンジョンに通っているからだ。
お小遣いや、美の追求、好奇心、付き合い、理由は色々あるだろうけど、みんなそれなりにダンジョンに潜っている。
だから、授業の合間の話題だって、ダンジョン関連のものが必然的に多くなる。
「幸太!3階層に挑んだって本当か!?」
「うん、エミリアに聞いたの?」
「ああ、さっきお昼休憩に、エミリアさんが話してくれた。マジなのかよ〜!」
勢い込んで聞いて来た和田君が、のけ反るリアクションを見せている。
これは、悔しがっているの?それとも、他の何かなのかな?
いまいち分かり難いリアクションだと思う。
「次の階層に挑むって、どんな感じなんだ!?」
「ん〜、僕としては、行けると思ったから行ったんだけどね。2階層はともかく、3階層は舐めてちゃあ死ぬね。これは、脅しじゃないよ、本当に死ぬかと思ったんだ。」
和田君に、僕の本気が伝わるといいんだけどね。
なかなか難しいよね。
「僕は今日から、3階層に行くのかな?」
「いや、遥を入れて2階層から連携を確かめて行く。遥を入れて、誰かが死んだら嫌だからね。そんなの、僕には耐えられないよ。」
遥君のナイスアシストを、僕はしっかりと受け止めて、みんなに届けられたと思う。
これでダメなら、そんな奴は知らないよ。
ダンジョンは自己責任なんだからね!
「次の階層といえば、ついに日本も7階層に挑むって話聞いたか!?」
「やっと重い腰を上げたか!」
「ドイツやオランダの要請を無視出来なかったんだろ?」
「連中、何かと先に進みたがるからな。」
「えー、そうやって日本も引っ張ってもらってるじゃん!」
「命大事に、は日本のお家芸だからな〜。」
「お家芸の使い方、間違ってるだろ。」
「俺は、ガンガン行こうぜ!派だから、オランダのやり方を応援しちゃうけどなぁ〜。」
「それも良し悪しだろ?」
「日本は『インペリアル・ブシドー』も動かすんだろ?これで、他の国に追いつけるんじゃないか?」
「『インペリアル・ブシドー』って正式名称になってないだろ?今は何だっけ?」
「どうせ、そうのち正式名称になるよ!JAPANと同じさ、幾ら日本だって言っても、外国じゃあ通じないしな。」
「海外メディアが適当に呼んだ名前が、世界に広まった所為だよね。機械的な日本の名付けよりオシャレだと思うけどね。」
「まあな〜。」
ヤバイ、情報の部分でみんなに負けてる。
ダンジョンにばっかり潜って、踊ってたらついて行けないかも。
『インペリアル・ブシドー』の話は僕も知ってる。
日本中の道場から呼び寄せた、剣道や剣術の達人たちだ。
日本最強の『上泉 信綱』のいるあの部隊を、日本は動かすって事だろう。
両国の要請があったのなら、場所は豊田ダンジョンで間違いないだろう。
これから、さらに賑やかになりそうだね。




