86話
久々に、制服に袖を通して登校する。
そんな、学生なら当たり前の1日のはずなのに、むしろ違和感を覚える僕がいる。
学友と挨拶を交わし、少しずつ学校生活の方に身体を慣らしていく。
「えー、みんなも気づいたと思うけど、沼田の奴は、ゴールデンウィーク中に問題を起こして、しばらく自宅謹慎処分になる、お前らもくれぐれも気をつけるように!分かったな?」
沼田の奴が謹慎処分とか笑える。
退学じゃなかったのは残念だけど、一体あいつ何をやらかしたんだ?
先生の話を、適当に聞き流してた僕だけど、さすがにこれには興味を惹かれた。
お昼休みには、当然奴の話題が上がった。
「お前らも新聞くらいは読めよ〜。数日前に、深夜の豊田ダンジョンで、婦女暴行殺人未遂事件があったんだよ!」
「マジかよ!?俺その日、ダンジョンに行ってたかもしれねえじゃん!」
どっちなんだよとか言いたい。
僕は、その日も間違いなくダンジョンに行っていた。
何しろ、毎日欠かさず行ってるから、間違いない。
「まあ、身勝手で悪質ってんで、主犯格は実刑なんじゃないかって話だ、年少じゃなくて務所行きの可能性もあるんだってさ。そいつらのグループに、沼田の奴もいたって訳よ!」
「でも、謹慎処分で済んでるんでしょう?」
「つるんでただけって事か?」
「沼田だし、下っ端なんじゃね?」
「あー、あり得る!」
「あいつLvも上げて・・・」
「・・・、・・・。」
僕は考える。
沼田ってどんな奴だ?
僕の印象では、卑怯な奴だ。
それも、僕が今まで見た事もないほど卑怯な奴だ。
自分が助かる為なら、何でもやるような、そんな奴だってイメージだ。
司法取引・・・、今回の件、認めて構成を喋る奴が居た方が、立件しやすい。
沼田の奴なら、ある事ない事ペラペラと喋ってくれる事だろう。
それで、自分の刑が軽くなるなら、いくらでも。
あれは、自分は悪くないと、信じて疑わない輩だ・・・。
僕の辞書では、そういう奴を『変態』と定義している。
世界に蔓延るクソ野郎の事だ!
僕は、奴に対する警戒心をMAXまで引き上げた。
必要なら、殺す、その覚悟を・・・。
この荒んだ心は、母親によって作られた。
あれは『変態』だ。
他人を理解しない、異常者だった。
あれのいない世界を、僕は望んでやまない。
だから、僕はダンジョンに惹かれるのだろうか?
暗くなる意識の中で、僕は親しくなったヒトを見つめ続けていた。
僕は、女性が怖いのかもしれない。
実体験です!
幼少期に殺しておけばと、何度思った事か!!
そんな大人には、なりたくないですね〜。




