82話
「呆れたわ。まさか『ゴブリン・シャーマン』に気づかないまま、3階層を戦い抜く猛者がいるとはね。」
「あははは・・・、何か、対策をとっておいた方がいいんですよね?」
心底呆れた様子のお姉さんに、僕は頑張って問いかける。
ソフィアたちに気圧されてた、髪の長いお姉さんも2人の意識が逸れて、ホッと一息ついている。
「そうね、精神アップ系の装備かMDEFを上げるのが主流ね。デバフ耐性系は確認されているってだけで、出回ってないし、精神アップ系も高すぎるわね。だから、現実的なのは、MDEFを上げる事一択って訳。」
「ああ、それで、あの怪しげな装備たちが売れる訳だな。」
確かに納得だ、僕なら絶対に着けないあれらの装備が、なぜ、あれほど高価に買い取りしてもらえたのか、分かった気がした。
話が一区切りついたので、お姉さんがその手に持っている逸品に話を移す。
さっきから、気になってたんだ。
「それで、お姉さんのその手に持っているのは、『小鬼丸』ですよね?なぜそれがここに?」
「ふっふ〜ん、当たり♪どっかのバカが1度買って、もっと反りの入った物が良いとか言って、返品してきたのよ。もっとも返品不可だから、買い取り直す形になったんだけどね?差額で国は潤い、ギルドには商品が充実して、探索者には良い武器が渡る。良い事ずくめね!」
商品を見て買った訳じゃないのか?
高額な物だし、金持ちが欲しがって、他の人が買いに行くって事もあるのかな?
理由は分からないけど、偽物って事はないよね?
「見せて!」
早いなミラ。
「まだダメ、鑑定書を作ってからよ!静香お願いね。」
「了解、直ぐ作るわ。待っててね!」
あの髪の長いお姉さんは、静香さんというらしい。
静香さんは、刀をサッと検分して、直ぐに鑑定書を書き出した。
いっつも、買い取りカウンターかショップにいるのは、それが理由だったのか。
いる場所が固定されてない、お姉さんの方が異常なのかもね。
「なぁに幸太君、静香を見つめちゃって〜。ああいう子がタイプなのぉ?」
お姉さんは、ふざけているつもりなんだろうけど、本気でやめてほしい。
突き刺さる視線が痛いからね。
お姉さんには、この程度の殺気、そよ風にもならないのだろうけど、僕には辛いから!
口に出すのは、マズイと思って黙っていたけど・・・、この視線を逸らす為には仕方ない。
「そうですね、『鑑定魔法』って便利そうですよね。」
「「「・・・。」」」
「・・・えっと、な、なんの事かなぁ〜・・・。」
誤魔化す気があるのなら、もう少し上手くやってほしい。
髪の長いお姉さんも、書類を書く手が止まってしまっている。
「別に吹聴したりしませんよ。だけど、鑑定アイテムに見える物くらい使って見せないと、直ぐにばれますよ?」
お姉さんたちが、顔を見合わせている。
このお姉さんたち、ひっかけだったら、どうするつもりなんだろう・・・。
「コウタはすごいな・・・。」
「鑑定スキル、鑑定アイテムは、世界的に足りていないからな。ばれたら直ぐに狙われるな。」
「ダンジョン産アイテムの偽物が出回る原因ですね?偽ポーションが特にひどいとか。」
ミラはこれをネタに、優先的な買い付けでも出来ないか考えているのだろう。
ソフィアのは、ただの情報共有?もしかして、上手くのってるつもりだろうか?むしろ、話が逸れてる気がするんだけど。
「ミラ、お姉さんに警戒される前にやめておいて。僕は、まだ死にたくないよ?」
「チッ、値下げ交渉に使えると思ったのに。」
「残念、上手く行きませんでした。」
「お前ら悪どいな・・・。」
値引きの方だったか!なるほどね。
ソフィアもその気だった事に、僕は驚かされた。
そして、エミリアに言われちゃってるよ。
「黙っておいてね!その代わりに、今回の『修繕費』はまけておくわ。どうかしら?」
『修繕費』というのは、ダンジョン産アイテムの修繕にかかる費用の事で、変形させるのと同じ用法で直す事が出来る。
壊れてさえいなければ、元どおりに出来るすごい技だ。それだけに、お値段も1個1万円とお高い。それが今回に限りタダ!!
「「「「よろしくお願いします!」」」」
迷うまでもない判断だ。
僕は、その場で武器やポンチョを渡してお願いした、ウサギの尻尾はもちろん外しておく。
コットンシャツもお願いしたいけど、家からこの服で来ているし、着替えがないので断念しておく。エミリアたちは、急いで更衣室に飛んで行った。




