73話
僕らの3階層探索が始まった。
3階層までは、当然徒歩で向かう。
自衛隊のみなさんが、車を乗り入れてるけど、あれは、必ず1人車に乗ってる事が前提で、運用してるんだ。そうしないと、いつの間にか、ダンジョンに取り込まれてしまうからね。
テントやゴミ、衣類、装備なんかも、置いておくと取り込まれてしまう。
1㎝以上の生き物が触れていないと、しばらくするとなくなってしまうんだ。
なので、民間人の車の乗り入れは原則禁止なんだ。
死体も取り込まれるので、事故なんか起こして逃げられても困るしね。
でも、ダンジョン内タクシーとか、あったら便利なのにね。
僕らは朝から、完全武装でダンジョンの1階層を走り抜ける。
強化された身体が、水やご飯の重さをものともせずに動く。
ただ、全身甲冑のソフィアが平然と走ってるなか、ぱっと見最も軽装のミラがなぜか辛そうなんだ。この辺に、ステータスの差が如実に現るのが、思ったよりも困りものだ。
僕だけなら、1階層を走り抜けるのに10分で行ける。
このメンツだと、30分〜1時間はみておかないといけない。当然、帰りも同じだけ時間がかかる訳で・・・。
なかなか、移動も大変なんだ。
ゲームみたいに、脱出魔法とかが欲しくなる。
この際、僕の【支援魔法】をかけてしまおうかとか、安易な考えが時々頭をよぎる。
情報を知られる事の危険性が、分かっていない訳ではないのに。つい、彼女たちならば、大丈夫なんじゃないかと、楽をしようとしてしまう。
ダンジョンの効率よりも、身の安全を優先しなければいけないのに、浅はかな事だよね。
2階層も同じ程度の移動距離だ。
階層自体は段々と広くなってるけど、階段の位置が近いので。最短距離を抜ければ、普通に日帰りも可能なんだよね。
「ミラ、無理せずに、コウタにおぶってもらったらどうだ?」
「え?僕がおぶるの?」
「そりゃあ、あたしでも構わないが、コウタが1番楽そうに走ってるからな。」
思わず僕は、みんなを見回してしまった。
なるほど、確かに。
ソフィアとエミリアは、軽く身体を動かした感じだし、ミラはぜぇーぜぇー言ってる。
僕は、未だに身体が温まり出した所だ。
「・・・いや、いい・・・。」
うん、高校生にもなって、おんぶは嫌だよね。
「ふむ、良い案だと思ったんだが。コウタは嫌か?」
「僕は特に気にしないよ、ミラさえ良ければね。」
「ミラ背負ってもらったら?」
エミリアを支持するソフィアに、悪気はないんだと思う。
だけど、見た目が小さくても、心が幼い訳ではないので、恥ずかしいんだろう。
キッと睨みつけるような眼差しが、私は嫌だと言ってるんだ!!と主張している。
2人はちょっと、感覚がおかしいからね。
ミラは、自分の感情を汲み取れそうな僕に、視線を向けて来る訳だ。
「ミラはまだ頑張れそうだし、帰りなんかに疲れたら言ってくれ。その時は運ぶよ。」
ミラは、我が意を得たりと満足そうだ。
さっさと息を整えたいところだろうに、忙しい事だ。
「そうか?その時は頼むな。」
「我慢しなくてもいいのに。」
本当に分かってないな。
むしろ、おんぶをされる方が我慢が必要だろう。
まだ走るけど、とりあえず歩きだす。
「奴らのご両親は、夫婦仲が良いのでな、いや、うちが悪い訳じゃないぞ?それだから時々ふざけてそういう事をするんだよ。だから、奴らおんぶに抵抗がないんだ。」
「なるほど・・・。」
国の違いというか、家庭の違いだね。
エミリアとか、やたら距離感が近いからね。時々困るんだよね。親しくなった気がして、それはそれで悪くはないんだけどね。
でも、そんな彼女たちがミラは大好きな訳だ。
ジト目、魔女っ子にツンデレとか属性が飽和してるな。
僕はそんな事を考えながら、歩き続けた。
「幸太、バカな事を考えてるだろう。」
ミラが、ジト目を向けて言って来る。
おまけに勘も、異常なほど鋭い。




