61話
時々、休憩を挟みながら、僕は遥君と2階層で狩りを続けた。
他の人たちは、チラホラ見かける程度だ。
だから、見られる事を気にせずに、僕らは勝利のダンスを継続する。
狩りを始めて、2時間弱ですでに遥君のMPは切れている。
それなのに、ゴブリンの群れを狩っては踊り、ウルフを斬っては踊るんだ。
ゲームで見た時は、こんなもんだと思ってたけど、客観的に見ておかしいよね。
もはや、狂人の如き振る舞いだ。
そろそろ10時だ、休憩を挟んでいるとはいえ、少しずつ疲れが溜まってきた。
「遥、休憩にしよう。」
「・・・了解。」
言葉と同時に、遥君は草むらに座り込んだ。
どうしても、常時魔法をかけている僕の方が、身体能力が高い。それを考えると、遥君は頑張ってついて来ていると思う。
合間、合間に、タブレットで糖分や塩分を補給しながらやってるみたいだ。
それを上回る、疲労度だろうけどね。
「幸太、荷物持たせちゃって悪いな。」
「いや、いつもやってる事だから、気にしないで。」
何も、僕が遥君の荷物まで持ってる訳じゃない。
単純に、ドロップアイテムを全て、僕が運んでるってだけだ。
僕らが、会話よりも息を整える事に専念してると。
近くから、聞き慣れた爆発音が聞こえて来た。
「あれ?ミラの魔法の音がする。」
「ミラさんの魔法?さっきの爆発音が?」
「うん。」
爆発魔法は珍しいけど、攻撃魔法は割とメジャーなので、遥君に隠す事でもない。
2人は、僕を介してカフェテリアで顔を合わせているので、ミラと言えば、誰の事か直ぐに伝わる。
攻撃魔法を習得したって話も、していたと思う。そのくらいの関係だ。
ソフィアは置いて、エミリアと2人で来たのだろうか?
「ミラさんっていうと、あの可愛くて小さい子だよね?」
「ああ、・・・
「小さいは余計だ。」
おや、ミラさん登場、もちろんエミリアも一緒だ。
さすが遥君、言葉選びが巧みだ。
小さくて可愛いと言うと、子どもを愛でる感じだけど。可愛いくて小さいだと、同級生にも通用する。あくまで、僕の感じ方だけどね。
そして、綺麗でスタイル良いって言うと、エミリアみたいなモデル体型を思い浮かべて、スタイルが良くて綺麗って言うと・・・。
今そこにいる、褐色の女性みたいな人の事を言う。
こう、大きいんだ!うん。
「やあコウタ!昨日は悪かったな。おかげであたしは笑わせてもらったよ!」
「そりゃあ、ようございました。」
思わず、ミラ張りのジト目をエミリアに向ける。
そのネタを引っ張るなよ!
「そう邪険にするなよ、これでも、こっちの勘違いで悪い事をしたと思ってるんだ私は。」
「はいはい、了解。それで、そちらの方は?時々ダンジョンで見かけるけど、2人の知り合い?」
さっきから気になっている、3人目の人物に話を向ける。
「ああ、アデレード・シュミット先輩だ、学校でも見かけるだろ?」
「マジで?」
「幸太気づいてなかったのか?」
遥君の反応を見るに、本当に同じ学校の生徒らしい、しかも先輩。
知らなかった・・・。
「幸太は、ソフィアやエミリアに目が行っていて、気づかなかったのさ。」
何でミラが自慢気なの?ミラもその場にいたよね?
何で胸を張って言ってるの?
友だち自慢なの?
エミリアもウィンク要らないからね?
何の意味があるの?
「今ならば、ミラに釘づけだけどね。装備の変更をしたんだね、魔女っ子として完成してるよ。」
「魔女っ子言うな!普通に魔法使いでいいだろう!」
小柄で、トンガリ帽子に前開きのローブに杖だ、もう、魔女っ子でいいだろう。
大っきなお友達が喜ぶ魔女っ子装備ではないけどね。
爆裂、爆裂言いそうな装備だ。
「それで、装備のお金は・・・
「私も国の支援を受ける事にした。エミリアと違って3年でLv5だ、今のペースならば、問題なく達成出来る。返済義務がなくなるんだ、受けない理由がないな。」
この様子だと、ソフィアも受けてるだろう。
本当にこの人たちは、自分に対する投資に躊躇がないな。
僕には出来ないよ。
「使ってみた感想は?」
「感じ方は人によりけりだろう、だが私としては、威力が上がったように感じているな。」
数字に表れる物じゃないからね、分かり難いよね。
ミラの攻撃魔法は、ピンポン玉大の玉を、敵の前や間に飛ばして爆発させる事が出来る。
飛距離は長過ぎてよくわからない、範囲は1m程度で、その範囲の中ならゴブリンなんて粉々に出来る。一瞬で霧に変わるので、グロくなくて助かる。
ただ、外すと、風圧で転んだり、よろけたりする程度で終わってしまう。
確実に成果を出そうとすれば、敵に当てて発動させた方が確実だ。
ミラの攻撃魔法の前には、ゴブリンなんて元々一撃だ、威力が上がったなんて言ってるけど、完全なオーバーキルだろう。
爆風が上がってるようなら、ゴブリンの群れの中央に落として、相手を転倒ないしよろけさせ、体勢を崩しておいて殲滅するのが良いかもしれない。
「それで、そちらはどなた様?」
アデレード先輩に言われて、僕らは慌てて自己紹介した。
アデレード・シュミットさん。
何度か出してた、スタイルの良い褐色の女性です!
スタイルの良い!