5話
ステータスを確認した僕は、案内してくれたお姉さんにモノクルを返してお礼を言い、ショップを見て回る。
ショップのお会計は、全てライセンスカードで行われる。
日本円での入金は出来るけど、換金は出来ない仕様の電子マネーだ。
だから、為替は常に日本円固定。日本人には安心の設定ですね、暗号資産のように乱高下する物では心配だからね。
ショップでは武器を扱っているので、販売方法もアメリカの銃器の販売の仕方に似ているようだ。ネットに書いてあった。
日本でいうと、宝石商が近いかな?
ショーケースや壁に、ずらりと武器やアイテムが並んでいる、その間にしっかりと店員さんがいて、盗難を防いでいるようだ。
出入り口も自衛隊の人が固めていて、こんな所を襲おうと思う人は居ないだろうと思われるほどに厳重だ。
壁に飾られた剣や、ショーケースに並んだ装飾品には、数千万円から億の値段が付いていて、当然僕には縁のない物なんだけど、せっかくだから見ておこう。
変な声が漏れ出てしまった気がしますが、気にしないで下さい。
やっと、お目当の物を見つけた。
ぱっと見、どこからどう見てもただのナイフです。
だけど、この『ゴブリン・ナイフ』が何故だか良く切れるのだそうだ。理由は未だに分かっていない、素材なのか、それとも別の何かなのか。
刀匠などの専門家に言わせると、技術自体は非常に拙い物だという事だから、ダンジョン産のアイテムに、高値が付くのも分かる話だよね。
このショップで売られている最安値の商品、それが、今僕の見ている『ゴブリン・ナイフ』という訳だ。
それでも、ダンジョン産の物をそのまま商品にしている訳ではない。
ダンジョンから拾って来たナイフを、砥いで、持ち手にグリップを巻いて持ち易くした物に、カバーという名の鞘を着けて売っているらしい。
グリップは野球のバットや、テニスのラケットに使われている物を流用しているのだとか。
これもネットに上がっていました。
「う〜ん。」
迷いますね。
テニスのグリップは結構柔らかいので、簡単に手に馴染む。
野球のグリップは少し固めかな?
プライスカードに鑑定された効果も書いてあり、ATK7とどれも同じ、なのに革製のグリップを巻いたやつは、お値段が違い過ぎて論外だから、このどちらかだね。
これから命を預けていく物だから、妥協は出来ないけど、最後は好みと直感かな。
僕は、柔らかめのテニスグリップのナイフを選んだ。
これだけで1万5千円、泣きそうです。
でも、普通のナイフとは切れ味が全然違うと、配信系の探索者『丸さん』の動画でやっていた。
ならば、必要経費だと諦めよう。
長い時間見せてもらって、ナイフを選び、ふと顔を上げると緑色のポンチョが目に入った。
肩にかけるやつだ。
DEF5
MDEF5
5万7千円
父さんが買ってくれると言った、入学祝いの最新型スマホを、型落ちにしてまで手に入れた軍資金と、これまでコツコツと貯めたお小遣いの、全てを注ぎ込めば買える。
買えるけど・・・。
凡人の自分には辛い選択だった、使い切ったらお小遣いがないのは当然で、父さんに無理を言ってまで回してもらった軍資金なんだ、ここで失敗は出来ない・・・。
だけど、僕はここで当初の目標を思い出した。
僕は変わる為にここに来たんだ。
僕は初日にして軍資金を使い切った、もう後には戻れない。
つい、いつもの自分がストップをかける感じ、うだうだと決められない主人公を書いてみました。
上手くいっているでしょうか?




