410話
せっかくなので、マッティオさん視点でお贈りします。
私が彼らを案内したのは、仮に女王蟻と呼ばれるモンスターの近くだ。
我々も他のパーティーと一緒に探してみたし、地面に武器を突き刺してみたりもした。ゴールド君なんて、すっごい大暴れをしてBOSSを誘い出そうと頑張っていた、それでもなしのつぶてだった。
それがどうだ!?
たった数十秒で当たりをつけ、一撃で奴を引きずり出したではないか!
信じられない!
15mを超す程の巨体を前に、私は恥ずかしながらも足が竦んでしまった。
(あくまでも彼の主観です。)
魂も震え上がるような叫びに、腰を抜かしてしまった。
だが、彼らは違う!
あっと言う間に囲み、あの巨体を前に果敢に挑んでいる!!
飽くなきチャレンジ精神と強靭な胆力を持って、立ちはだかる巨体に対して、小さな身体で裂傷を無数に刻みつけ続けている!
もしあのモンスターの大きな手が当たったら、人なんてひとたまりもないだろうに。彼らは、躱し受け流して攻撃を試みるんだ・・・。
やがてモンスターは度重なる斬撃に耐えかね、ついに、傷ついた身体から緑色の体液が滴り落ちる。
これを見て、私は震えた。
絶望的な程の体格差だというのに、彼らの攻撃は確かにBOSSに届いている!!
無数に湧き出る手下を少年たちが屠れば、少女たちが確かな連携でもってBOSSにダメージを蓄積させていく。
緑色の体液で、奴の肌が完全に塗装された頃、悲劇は起きた。
「あら?」
それまで正面で奮戦していた少女が、奴に捕らわれ、持ち上げられたのだ!
「キャー、タスケテー。」
この危機に、少年が動いた。
滑るような足さばきでBOSSに近づくと、振るわれたその腕を伝って、身体を駆け上がるではないか!?
彼が、突き刺さったままになっていた槍の背を蹴りつけると、まるで弾丸のように槍が発射され、完全にBOSSの身体を貫いた。
その傷口に彼が手を添えると、BOSSが内側から破裂してしまった。
盛大に飛び散った肉体は、広範囲を黒い霧で覆い、その中から彼女が吹き飛ばされてきた。
彼は、とっさに飛行魔法を使い、捕らわれた彼女を受け止めると、そのまま大空に舞い上がった。
空を一周大きく回ると、私たちの元に戻って来た。
地面に降ろされると、ソフィア嬢から口付けされ、仲間たちに祝福されていた。
まるで、映画のワンシーンを見ているみたいだ・・・。
私は、涙が止まらなかった。
『完璧なのですソフィア!!』
「ついにやったなソフィア!おめでとう!!」
「おめでとう。強敵の出現に、私また焦っちゃうわね。」
「いや、うまい事やったなソフィア!」
「うん!最高の絵が撮れたよ!!」
だけど、何だかちょっと雰囲気がおかしい・・・?
すごい、良い場面だったよな?
これが『ダンジョン・フィル・ハーモニー』の喜び方なのか?
強敵を倒して喜んでいるというよりも、2人の仲を祝福している雰囲気が伝わって来るんだが・・・。
冗談だろ?BOSSを倒したんだぞ?
もっと、こう・・・、あるだろ?
え?これが、彼らにとっての日常なのか!?
信じられない・・・。
これが世界一の探索者パーティー、『ダンジョン・フィル・ハーモニー』か・・・。
非公式ながら、世間でそう言われる片鱗を私は垣間見た気がした。
「アイテムを拾って来て良い?」
『ダンジョン内部じゃないです、ほっといても消えたりしないのですよ?』
「でも・・・、ソワソワとして落ち着かないんだ。」
『ご主人様はこんなダンジョン馬鹿ですが、末永くよろしくお願いするのです!』
オランダでも色々と聞いたし見せてもらった、だが、この戦闘が一番凄かったのではないだろうか?流れる様な連携、心に余裕のある戦いぶり、実に見事だ!
彼らと縁を結べた、この幸運を活かそうとジェームズたちが考えるのも分かる話だ。
私もローザに進言してみるか?良いかもしれない。
いや、単純にジェームズたちとともに立ち会えば、色々と聞けるかもしれないな。私たちもまた、前に進む事が出来るだろう。
笑ってしまうな、私にもまだ、前進する意欲が残っていたとはな・・・。ジェームズやイライジャみたいな、若い奴らの影響を受けているのかもしれないな。
彼らの、アイテムを拾って喜んでる姿を見ていると、初心を思い出す気分だ。
「羽だよ羽!!」
『トンボの羽に見えるのですよ?』
「きっと飛べるよミューズ!?一緒に飛ぼう!」
『おおぉぉぉぉ!!?ナイスなのですよご主人様!!飛ぶのです!飛ぶのですよ!?あい、きゃん、ふらーい!!』
飛んだ!おおぉ・・・遅い!!?
ミューズちゃんが、実にのんびりとした速度で飛んでる・・・。蚊なみの遅さだ。
ここまで飛んで来た身としては、あの時のような飛行速度を期待してしまう。
『・・・速度が上がらないのですよ?』
「あれぇ?素早さ依存なのかなぁ?」
「残念だったな、ミューズはスピード狂なのにな。」
『NOooooooooooooooo!!』
それは・・・、御愁傷様。




