408話
「それで、さっきのはどうやったの?」
「ああ、新しい私のスキルだ。【倍加】って書いてあったぞ?」
倍加か・・・、今見た感じだと2発飛んだ様には見えなかった。威力が倍加したのか、魔力が倍加したのか・・・、範囲って事はないよね?明らかに、常軌を逸した範囲だったからね。物理攻撃なんかにも適応されるのだろうか?
「コピー出来なかったのか?」
「うん、今のところは出来てないね。武技に分類されるとは思えないけど・・・、錬金なんかと同じ特殊系なのかなぁ?ちょっと、分からない事だらけだね、今度検証しよう。」
それにしたって、あまりにも酷い性能だ。
魔力の流れが見える、僕だからこそ平然としていられるけど、そうじゃなかったら恐慌を起こしても仕方のないスキルだ。
僕の眼には、ミラが纏った魔力が1度の魔法で消し飛んでいるのが見えている。
持続可能なスキルではない様だ。
まあ、それも練習次第だけどね・・・。
それよりも、今は他のパーティーとの合流を急ごう。
謝らないといけないので、正直気が重く、いつもより脚が重く感じる。
砂に足を取られてるから、だけではないはずだ。
移動中に、辺りを観察するのも忘れない。
この辺りは完全な砂漠地帯のようだ、砂つぶは液状化も結晶化もしていないところを見ると、温度自体はそれほでもでもない様だ。
それでも雑魚モンスターが1匹もいない、これこそが魔力の乗った攻撃のなせる技だ。
大使は、アメリカにも魔力相殺レポートを渡してくれただろうか?
これで、魔力の有無がモンスターに与えるダメージの決定的な違いだと、アメリカが理解してくれると良いのだけど。
ダンジョン前には、『コスピアトーレ・ローザ』だけが残っていた。
理由も、見れば納得だ。
ローザさんやマッティオさんはピンピンしてるし、ジェームズさんとイライジャさんは元気そうだけど、愛人1号、2号さんが地面に転がってる。酸欠だろうか?早速手当てをしておく。
因みに、3号さんは怪我が原因で、今回は不在だ。
オランダの変態羊に轢かれて骨折したそうだ、あの人は、もっと鍛えた方がいい・・・。
「すみませんローザさん、ご迷惑をお掛けしました。」
「いや、こちらこそ手間を掛けさせて悪かったね。」
とりあえず、先制して謝っておいたのだが、予想外の返事が返って来た。
「他のみなさんは中ですか?」
状況が分からないので、ちょっと探りを入れてみた。
だけど、なんの事はない。
彼らは、ダンジョンを目前に大量のモンスターに阻まれていたらしい。
だから、ミラの放った一撃を不甲斐ない彼らへの叱咤であり、援護だと勘違いしたらしい。
それでも僕らは正直に話して謝る。
それが、今後の信頼に繋がると信じて・・・。
「あれが調子に乗った結果だって言うのかい!?とんだ八つ当たりもあったもんだね!スケールが違うよ!!はっはははっ!!」
「・・・さすがだな・・・、常軌を逸してるな。」
マッティオさんの感想がひどい。
普段物静かな人柄だけに、その発言がズシッと来ます・・・。
「信じられないよ・・・、うちのマルコ達が可愛く見えてくるよ。」
「あれで彼らと同格だと勘違いしていたんだ、さながら奴らは哀れな道化だな。」
イライジャさんの感想もひどい。
まあ、彼の場合ガッツリ切られてるからね、その辺容赦もなくなるかもね。
「あいつらは、ダンジョン内の探索にあたってるよ。ダンジョンの入り口はあたしらで守るよ、悪いけど、あんたらは契約通り、もう一つのモンスターの発生源を何とかしておくれ。でなきゃ、怖くてダンジョンに入れやしない!」
「了解です。」
ローザさんの言う事が道理に適っている。
ダンジョン内に入ったら、入り口と内側から挟み討ちにされたんじゃ堪らないよね。
「マッティオ!案内してやんな!!」
「・・・分かった。ジェームズ、後を頼む。」
「了解です!」
2人は、すでにこのパーティーで信頼を得ている様だ。
良かった。
マッティオさんの案内に従ってダンジョンの入り口から、1kmと少し移動すると、砂地の中からアリが這い出して来るじゃないか。
「ここが、そのポイントですか?」
「ああ・・・、結構な範囲から這い出して来るので、正直なところ、BOSS本体がどこに埋まっているのか、サッパリ見当もつかない。」
僕は魔眼に意識を集中させ、魔力の揺らぎを見て取る。
ふわり、ふわりと漂う魔力の残滓を見て、だいたいの当たりをつけながら歩いていく。
途中、這い出るアリンコを切り捨てる。
・・・ダメだ。
マッティオさんの言った通り、結構な範囲から魔力の光が漂ってる。
さながら、光る綿飴の中を歩いてる様だ。密度自体は大した事がないので、見る分には問題はない。
しかし、嫌な表現になると、蜘蛛の巣だらけのお部屋を散策してる感じだ。
僕は、奥の手を使う事にした。
(「ミューズ、ちょっと手伝ってくれない?」)
(『みゅ?もちろんなのです!ミューズに何でも言うのですよ!!』)
(「僕には、この辺りにふわふわと魔力が漂ってるようにしか見えないんだ。」)
(『ふむふむ!』)
(「ミューズなら、どの辺が魔力が濃いか分かるかと思って聞いてみたんだだけど、どうかな?」)
辺りをキョロキョロと探るふりをしながら、ミューズとコソコソと内緒話だ。
何だか、とっても滑稽で、少しだけ楽しい。
(『幸太の左足の30cm向こうなのです!!ジョバーって、出てるのですよ!ジョバーって!』)
(「さっすがミューズ、頼りになるぅ♪」)
キャーキャーと嬉しそうなミューズの声を聞きながら、僕は行動を開始する。
ミューズに言われた地点を右脚で踏み、そこを支点にコンパスの様に足で円を一周描く。
「ここだエミリア!!やれ!」
さあ、第2ラウンド開始だ!!
咳だけがなかなか治らない・・・。
味覚は戻って来たのにね!




