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閑話 村雨《むらさめ》検証中1

「よう少年!!時間通りだな。」


「え?」


 僕は、丸さんの配信を見たその直ぐ後にギルドにやって来たんだ。

 特に電話や打ち合わせなどしていないはずだ。それなのに、今野さんは待っていた。



『ご主人様の行動パターンを解析したのです!!専門家ミューズのパーフェクトな計画なのですよ!?』



 ・・・。

 マジですか?


 僕ってそんなに単純?


『ご主人様、褒めても良いのですよ?』


 ミューズがずずいと頭を差し出して来るので、とりあえず撫でておいた。

 うちの子可愛い。

 うちの子賢い!

 でも、フクザツ・・・。


 それでも可愛いから撫でるけどね!!



「おい、そろそろ話を進めても良いか?」


『「もうちょっと!」なのです!』


 ミューズを抱きしめて額にキスして、やっと落ち着いた。

 ミューズを定位置に戻して、話を聞く。


『「どうぞ。」なのです。』



「あー・・・、まあいいか。まずは奥に移動しよう。」


 今野さんが呆れた様子で何か言いたげにしてた。

 でも、諦めたみたいだ。

 僕らは移動しながら話す。目的地はいつもの会議室の様だ。


「映像は確認したな?」


「はい。実物を見せてもらえるならありがたいのですが、あれなら僕の検証は要らないのでは?」


「それがなぁ・・・、そうとも行かねえんだわ。」


 鑑定結果は分かっている、それなのに検証が必要になる、そこが僕には分からない。


「連中としては、使用よりも販売を検討しているみたいなんだ。」


「え?・・・そ、そうなんですか?」


 僕は驚きを隠せない。

 だって虹箱だ。それに性能だって、他に類を見ない性能を示している。

 まあ、長過ぎて扱い難いって事なら分からないでもない。


「連中は、お前らほどの後ろ盾が無い。そして装備も無い。分かるか?」


「・・・所持している事自体が危険・・・、なんですね?」


「その通りだ。直ぐにギルドに持ち込んだのは良い判断だ、おかげでこっちはあちこちに手を回す羽目になったがね。それでも、持ち続けるよりはずっと良い。」



『普通は配信を諦めるところなのですよ。』



 これに、僕らは思わず黙り込んだ。

 今野さんは、ミューズとの同調から沈黙を保ったのだろう。

 だけど、僕は配信する者としての理解から、言葉が出てこなかった。



「彼らは自衛隊で保護している。家族にも、出来る範囲で警護をつけてる。」


 今野さんは魔力を乗せていない、だけどはっきりとした殺気を放っている。

 民間人を護るのは自衛隊の仕事だけど、個人を護衛するのは本来の職務とは異なる。そういった不満の表れなのだろう。


 護衛をやったらやったで、やらなかったらやらなかったで、文句を言われる案件だからだ。

 要するに、面倒事を持ち込みやがって、とそういう事だ。


「自分で護る事も出来ないくせに・・・、やってくれたもんだよ。」


 今野さんの表情には、明確な怒りが見て取れた。

 彼女の立場からしたら、軽率な行動を取った丸さんたちを許せないのだろう。


 各国の軍や首脳陣とツテを作った、うちのパーティーとは違うという事だ。

 まして、彼らは警備会社との契約すらしていない。

 もしこれを放置すれば、24時間以内にご家族が凶悪犯罪に巻き込まれ、被害者になるのは目に見えている。



「・・・もしかして、僕らに買取を打診してます?」



「!?・・・どんな思考回路してんだ少年、だが正解だ。最悪の場合、だけどな。」


 出来れば自衛隊で押さえたいけど・・・、もしもの時は僕らにって感じかな?


『正解なのですか!!?・・・今野に良いように使われたのですぅ〜・・・。』


 ミューズが、不満そうに頬を膨らませている。

 珍しい表情に、僕は頬が緩む。



 会議室に到着して、椅子に座る。


「お茶は?」


「頂きます。」『お水は無いのですか?』


 それぞれに飲み物が用意され、各々口を湿らせる。


「早いところ彼らの手からは引き離したい、彼ら自身の安全の為にも、分かる選択です。でも、この状況下では国は買取し難い、そこで僕らを呼び寄せたって事ですよね?」


 彼らの安全の為にも、自衛隊の負担を減らす為にも、サッサと所有者を変更してしまいたいはずだ。

 だけど、ここで国が買取っても印象があまり良くない。

 言い方は良くないけど、家族の安全を盾に買い叩いたと思われる恐れがある。それならば第三者にお願いした方がマシだろう。


 企業等を選ばなかった理由は、僕には分からない。



「話が早いな。検証結果を自衛隊で欲しがってるって事もあるんだが、概ね正解だ。」


 多くの企業や各国が欲しがる事が予想出来るのに、僕らのところに話が回って来る。こういう、配慮ってやつが必要になるんだから、本当に社会ってのは複雑怪奇だ、意味が分からない。


「あれ?検証結果もいるんですか?」


 ちょっと意外だった。

 てっきり、買取の打診が本題で検証自体は済んでいるものだと思っていた。



「それがな?面白れえぞ?連れてこい。」



 連れてこい?持ってこいじゃなくて?

 人を呼びに行ったの?


 ギルド内で本人たちに持たせてる?

 それはないか・・・。


「ん?ああ、都築の奴に預けてるのさ。」


「それは・・・、世界一安全ですね。」


『ギルドの倉庫よりも安全な預け先なのです・・・。』


 今野さんが、機嫌良さそうに笑っている。

 ご機嫌が回復した様でなによりです。



 逆に不機嫌そうなお姉さん登場。

 勘弁して下さい・・・!


「お姉さん、どうしたんです?」


 聞きたくないけど、僕には選択肢がないんだ。

 だって、聞かない方がもっと怖いから!


「どうもこうもないわよ!!せっかく幸太くんが預けてくれた『夜叉丸』で、狩りを楽しむ予定だったのに!武器の護衛を押し付けられたのよ!?おかしいでしょう!?武器は戦う為にあるのに、なんでそれを護らなきゃならないのよ!!?おまけにやたら長いし!それに・・・!!」


「・・・それに?」


「良いわよね?」


「もちろん、見せてやってくれ。」


 今野さんの許可が出ると、お姉さんがおもむろに『村雨』抜いた。

 僕は横っ飛びだ!!


 信じられない!

 あんなに長い刀を抜き打ちして来るなんて!!

 刀身だけでも160cmはあろうかというのに、お姉さんは一息に抜ききった。


 魔眼を発動していなかった事が悔やまれる!



 ・・・うん、違うね。


「お姉さん、いきなり何するんですか?」


「やるわね。」


「机はお姉さんが弁償して下さいね。」


「その机、見てみなさい。」


 そう言われて僕は机を確認する。だけど、どこにも傷が見当たらない。

 確かに、お姉さんは机越しに僕に斬りつけたはずだ!それなのに机が壊れるどころか、傷一つない!


「これは・・・、いったい?」


「面白いでしょう?」


 先ほどまでの不機嫌が嘘の様に、お姉さんが自慢気だ。

 すっと持ち上げて見せてくれた刀身は、ゴーストの様にうっすらと青く透き通っていた。


「これが、攻撃力0の効果って事ですか?」


「さぁ?」


 ガクッ。

 ・・・お姉さん。

 仕方なく、僕は今野さんに目を向けた。


「おそらくな。」


「もしかして、これって人間を斬れないんじゃないですか?」


「はっはっは!さすがだな!これを見ただけで、そこまで察するのか!」


「まあ、あたりをつけるくらいの事ですけどね。あっ、でもお姉さん、僕らは斬らないで下さいね。ミューズやダンジョン産の装備は斬れる恐れがありますので。」


 なるほど、その為に検証が必要だったんですね。

叢雨→村雨の方が良いか検討してます。


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― 新着の感想 ―
こんにちは。 >叢雨→村雨にするか検討中 変換の手間を惜しむなら村雨のが入力し易そうですね、一発変換出来るし。叢は叢雲という単語のイメージかなぁ…。
長太刀ってか長巻って武器に近い感じかな? 槍と刀を融合させたキメラみたいな武器、、、
全長230cmで刃渡り160cmって柄が長すぎない?ツバイヘンダーみたいな近い使い方をする構造なのかな?刀で柄が70㎝近くもあったら使いづらそう
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