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393話 二足歩行の山羊2

 勝手にこけたモンスターが、仕切り直して立ち上がり戦闘になった。

 さっきのあれが嘘のような、軽快な動きだ・・・。


 器用さでもってステータス値を活かし、本来のスピードとパワーを十全に引き出しているのが分かる。


 羊の件もあったので、アデレードの護衛に意識を割いた。

 だが、どうやらこれは杞憂だった様だ。


 奴の放った電撃を、ソフィアがものともせずにやり返す。


 ギョッと目を見開く表情・・・、これがやり難い!!


「アデレード!プラズママイン!!」


「巻き込まれないでよ!『プラズママイン』!!」



 ・・・今、奴の骨格が見えた・・・。



 このアメコミモンスター、力が抜ける・・・。

 真っ黒コゲなのに、目と歯だけがやたらと白いし。目をパチクリさせて黒い煙を吐く、こういうところも周到だ・・・。


 未知の現象に、仲間たちも追撃の手が出せないでいる。おかげでリズムが作れない。

 笑っているせいでもあるけどね。

 特にミューズとエミリアは爆笑だ。


 その隙に距離を取られた・・・、また仕切り直しだ。



「あいつ・・・、尻尾を水に浸けてる?」


『黒コゲなので、身体を冷やしているのではないですか?』


「その可能性もあるか・・・。幸太、分かるか?」


「いや・・・、釣りかなぁ・・・。」


「「「『は?』」」」


 いや、そんな顔で見ないでよ・・・。

 僕だって分からないんだってば!でも、水の中にあるものといえば、水とモンスターしかない。


「おい!奴が尻尾を出したぞ!?」


『ご主人様正解なのです!!?』


 ・・・嫌だなぁ。

 こんなの当たって欲しくなかった。


 奴はニタリと嗤い、尻尾に喰い付いてる『魔鯛』を両手に持って魔法を起動した。深淵しんえんが『魔鯛』に絡みつき飲み込んでいった・・・。

 久々に僕の右眼の魔眼が発動して、痛みと共に新たな魔法を届けてくれる。


『生贄召喚』

 生贄を捧げ、ランダムにモンスターを召喚する。但し、自分を上回る強さのモンスターは召喚されない。




「モンスターが来るよ!!」


 僕は仲間たちに注意を呼び掛ける!

 生贄に2匹使ったんだ、それなりのモンスターが出て来てもおかしくない!!


 呼び出されたのは変態羊、いや、『ホワイトシープ』!!

 僕らは慌ててアデレードを守る陣形を形成する!



 ・・・走り出すと同時に、水辺に落ちて沈んでいった・・・。



 避けようよそれくらい・・・。

 アデレードにまっしぐらになるのは分かるけどさぁ。もうちょっと周りも見ようよ!


『さすがは魔性の女なのです・・・、アデレード恐るべし!』


 ミューズのナレーションと、山羊の伸ばした手が切ない・・・。

 だが、こっちの負ったダメージも少なくない、ミラの肺と腹筋がそろそろ限界だ。さっきから笑い過ぎでフラフラしてる。


 エミリアの鍛え抜かれた肉体は、度重なる笑いにもなんとか耐えていて、まだ戦えそうだ。だが遥は足にきてる、酸欠で動きが鈍い。



 それでも敵は待ってくれない!

 尻尾に喰い付いて残った最後の『魔鯛』を生贄に、再度召喚を実行する!!



 ・・・ウサギ・・・。



 サッと周りを見渡すと、文字通り脱兎となって逃げ出した。

 うん、豊田でも見るウサギだもんね。そりゃあ戦わないよね・・・。


『引きが強いのです!!』


 ミューズが身体を捻ってゲラゲラ笑っている。



 奴が尻尾を水に浸けて、再び釣りを開始しようしたので、僕らは必死に止めに入る。

 いつもなら間に合う、遥とエミリアの動きが鈍い!


 2人を追い越し奴に斬りつけようとしたら、何かが飛んで来て、僕は体勢を崩して避けた。


 それはなんと、目ん玉と頭蓋骨、入れ歯と伸びた舌だった・・・。

 奴のお尻に、『フライングシャーク』が食いついていた。



 お尻への攻撃はアメリカアニメの定番だと思うけど、イラッとした僕は魔法をしこたま叩き込んで、ソフィアと2人で奴をフルボッコにしてやった。


 ソフィアと抱き合い、いまいち笑いどころが分からない寂しさを2人で分かち合った。


 奴が悪魔ではなく山羊だと確信したのは、この後アイテムを鑑定した時だった。

 名前にゴートってついてるから、半々くらいかとは思ってたんだけどね。




 他のパーティーと合流するべく中央付近の集合場所に戻ったら、『ア・モルテ』のジエゴ・ペレイラさんが膝を抱えて燃え尽きてた・・・。

 生きたまま死んでるかの様なその表情は、その胸中を察して余りある無念だろう・・・。


 これは、絶対ハズレを引いたんだ・・・。


 うちはミューズのおかげで結構宝箱を開けてるから平気だけど、普通のパーティーは多くて5、6個だと聞いている。

 その内の一つがアレだったら・・・。

 僕なら耐えられない!



『マドリード・ブスカドル』との対比が激しい。

 彼らは、今日1日で2つも宝箱を開けてお祭り騒ぎだ。その実力が遺憾なく発揮された結果だろう。



 ローザさんのところの、愛人3号さんも悲惨だった。

 順番に餌を担当したそうなんだけど、彼は防御力が足りず女の子にjobチェンジする寸前なんだそうだ・・・。

 僕はローザさんとソッと取り引きし、彼の未来を守った。


 号泣して喜ぶ彼には、同じ男としてエールを送りたい。

 でも、イケメンに抱きつかれても嬉しくないから離れてもらっていいかな?



 トドメはゴールドさんだった・・・。

 昨日の配信の再生数に気を良くしたのか、人魚になって登場してみせた。


 マッチョな肉体に、ホタテの貝殻が真っ赤で無駄にセクシーだった。


 ゴールドさん、人類としての尊厳はどこに捨てて来たんですか?

 お願いですから、急いで拾って来てください。

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― 新着の感想 ―
こんにちは。 今回の顛末だけでも配信したいですね…。笑いから同情まで、様々な感情と共に再生数が凄いことになるでしょうしww
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