387話
魔眼を発動した僕には見えてしまった。
「はっははははは!地面に突っ伏して、地中に宝箱でも見つけたかぁ?」
ゴールドさんにも見えている!?
・・・訳ではなさそう。
「うん、そんなとこ。」
「「「「はっ?」」」」
「リチャード軍曹!!オランダは僕らに何か隠そうとしているのかな?」
「no!sir!!」
僕がわざと本名で呼んだ意味を、彼はきちんと理解している様だ。
「では、マップの提供などに偽りはないという事だね?」
「はい!上層部からは特に口止め等制約は課せられておりません!自分も情報の出し惜しみなどはしておりません!!」
「さっき、羊は見て確かめろって言ってなかった?」
「そ、それは・・・!」
ふむ、あれは冗談の類か。
では、僕の眼前に広がるこの景色はなんだ?
未発見領域か・・・。
道理で・・・、宝箱とモンスターが少ないなんて情報が入って来るはずだ。
「遥手伝ってくれ。」
「いいよ。何をすればいい?」
僕は腰の剣を地面に突き立てる。
それを見て、遥も同じように剣を地面に突き立ててくれる。
その感触に遥が驚いている。
「四角くくり抜こう。」
2人の刺した剣をL字に動かし、僕らが今踏んでいる地面をくり抜いていく。
手に伝わる感触が、ただの地面ではない事を否応なく僕らに伝えてくる。
「幸太、これは・・・?」
僕は遥の質問に答えず、次の指示を出す。
「エミリア、槍を斜めに刺して持ち上げてくれ。ソフィア、エミリアを手伝ってあげてくれる?」
そうして持ち上げられたのは、植物が幾層も重なった物だった。
そして、その先には水が・・・。
そう、僕らが立っているのは、地面ではなかったんだ・・・。
水に浮遊する堆積物と植物の塊、それが僕らの足場だ。
「・・・こ、これは・・・。」
「地球上にも存在する自然の神秘ってやつを、このダンジョンは再現したんだ。実物よりも水が綺麗に見えるのは、有機物の差だろうね。ダンジョンの水はいつだって綺麗だ・・・。」
僕は思わず掬って舐めた。
『幸太・・・、このお水は美味しいのですか?』
僕に水の違いがどれほどわかるか分からないけど、これはきっと純水だ・・・。
その水にはあまりにも濁りが無く、澄んでいて透明だった。
僕は、ミューズに嘘はつけない、吐きたくない!
「人間には飲める物だけど、美味しくは感じないんじゃないかな。」
それでも、一縷の望みをかけて僕の顔を覗き込むミューズを、僕は止められなかった。
頭上から降ろしたミューズを、ダンジョンの水に浸けてやる。
『・・・もういいのです・・・。』
オランダのダンジョン、その1階層を覆うほどの水量、その全てがミューズが望む物ではないと分かった瞬間だった・・・。
僕は残念そうなミューズを優しく撫でて慰める。
「ミューズ見てごらん、みんなの顔を・・・。」
『みゅ?』
「見ておかないと損でしょう?」
『ぷふっ!良い顔が並んでるのです!!』
これだけの人数が、驚愕にアホ面並べてるのを見る機会なんて滅多にないからね。
我ながら性格の悪い事だと思いながらも、ミューズのご機嫌取りに使ってしまった。後でみんなにはお礼を言っておこうね。
「な、なあ!本当に宝箱が見えるのか!?」
ああ、ゴールドさんはこの後に及んでそっちに興味があったんですね。
「ええ、見えてますよ。」
僕は水中を指差しながら言ってやる。
ただ・・・、なんだかあの宝箱は怪しい!
「まだ別行動をとっていませんし、今回はみんなで分けましょう。」
「な、なら!俺が開けてもいいか!?」
「僕は構いませんよ?」
最初から他の人に開けさせる気だったし、ゴールドさんがお笑いアイテムの餌食になってくれるというなら、僕は喜んで譲ろう!!
でも、やっぱりあの宝箱は怪しいんだよね。
宝箱のくせに、やたらと存在を主張してる気がしてならない。普通は『気配遮断』で存在を隠してるはずなのに、僕の魔眼越しにすぐに見つかった。これは変だ。
僕がこの事をゴールドさんに伝えるか悩んでるうちに、彼はパンツ一丁になっていた・・・。
『・・・まさかの事態なのです。あの破廉恥で真っ赤なブーメランパンツを、着用してる人類がいるのです!!?』
「ん?似合うだろ?」
まさかこんな事が・・・。
エミリアと同じ趣味の人が、この世界に実在する事に僕は心底驚いた。
同じメーカーじゃないよね?
「では皆、行ってくる!とう!!」
見事な飛び込みを決めたゴールドさんは、みるみる内に水の中へ潜って行った。
(「幸太、何か迷ってただろ?どうした?」)
(「ミラ・・・。あの宝箱、なんだか怪しいんだ。それと・・・。」)
しまった!?
あのブーメランパンツに驚いて、伝えるのを忘れてしまった!
「水の中にはモンスターがいるんだ!!」
慌ててみんなで彼の行方を追うと、ちょうど慌ててこちらに引き返してくる所だった。




