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384話

まだまだ、ジェームズJr.さん。


「マッハ軍曹と呼んでください!!皆さんのご案内を任されました、よろしくお願いします!」


 ・・・こんな頭の軽い奴が軍人でいいのかオランダ・・・。

 軍人もピンキリだろうに、何でこんな奴を選んだんだ?


「お久しぶりですマッハさん。」


「あっ!先生!!ご無沙汰しております!」


「いえ、先生じゃないですけどね・・・、まあいいや。」


 藤川くんは、訂正するのを早くも諦めた。

 その雰囲気から、この問答が今日始まったものではない事が伺える。


『彼は空飛ぶお兄さんで有名な、通称「マッハ軍曹」なのです!!本名はリチャード、音速を追い求める事に情熱を燃やす軍曹なのです!傑物なのですよ!?せっかく定着した愛称が惜しくて昇進を蹴ったとさえ噂される存在なのです!得難いキャラクターなのです!!』


 それは傑物じゃなくて変人だよ?

 ああ・・・、なるほどね。類友・・・。


『単独飛行という人類史に残る偉業を達成し!転職のチャンスで、昇進も昇給も思いのままなのに!!ご主人様との縁を優先して、軍に残って探索者をやってるのです!』


 ・・・!!

 いや、確かに傑物だよ・・・、良い判断だ。世界初の飛行魔法、それだけでもインパクトは十分だ。

 だけど、彼との縁を深めておけば、さらに上に行けるだろうからね。企業でも、軍でも、政治の世界でもね。


 どうやら、頭の軽さだけで飛んでる訳ではなさそうだ。


「速度も良いですけど、Lvを上げて身体も鍛えてくださいね。音速を超えるとどうしても空気抵抗がひどくてコントロールが乱れます。バードストライクで死にたくはないでしょう?」


「な・・・、なるほど。」


 会話の内容まで常軌を逸してるな・・・。

 そんな事を心配してるのは、普通は空港の関係者くらいだろうに。

 安定させるのが難しい飛行中に、鳥にぶつかればコントロールを失って墜落死だぞと、彼はそう言って警告してるんだ。


 では、何故それがLv上げに繋がるんだ?

 同じ疑問を抱いた彼が質問していた。


「防御力次第では、安全に墜落出来るかもしれませんし、そもそも目で見て鳥を避けられる可能性が上がります。」


 安全に墜落・・・。

 ぜひ着陸する手段を模索していただきたいものだ。それからなら、僕も使ってみたい魔法だ。




 ダンジョンに移動すると、オランダの軍人たちが敬礼して出迎えてくれる。


 だけど、あれは僕らに向けられたものではないのだろう。

『ダンジョン・フィル・ハーモニー』、もしくは彼個人に向けられた敬意だ。


 僕らに、他国の軍人たち、世界中の探索者という武力から敬意を集める個人の存在、今権力を握ってる連中がこれに危機感を覚える事は理解出来る。

 彼は、僕が想像した以上に強力に人を惹きつける。



「イライジャ、君はどう思う?」


「このスキルお試し会の事か?それとも・・・、他の事か?」


 チラッと周りを見渡せば、試し撃ちしたアイテムのスキルに興奮して、そこかしこで雑談が盛り上がりを見せている。僕らが喋っていたって少しも目立たない。


「僕らとスポンサーの思惑について、かな。」


「スポンサーは、彼らの利益を守るために的を射た行動をしてると思うよ。ただ、俺たちも探索者の一部なんだって事が、頭から抜け落ちてるみたいだけどね。」


「僕らが3流なら、スポンサーの意向を汲んで動く事しか出来ないだろうね。」


「1流なら、彼らのように自由に行動する場面かな?でも、俺たちは1流じゃない。」


 さすがはイライジャ、共通認識はバッチリだね。

 装備を頼りにぶん回してLvを上げた僕らは、とてもじゃないけど1流だなんて言えない。

 それでも・・・。


「そうだね。それでも、なんとか2流には踏み止まりたくない?」


「そうだな。表向き、スポンサーとの契約は、装備の貸し出しと有望探索者の紹介だったはずだ。それを盾に、シレッと解約されるまで探索者を続ける事も出来るな。」


「スポンサーの意向に従う事は、契約内容には含まれてないもんね。」


「当たり前すぎて契約書に記入漏れがあったとしても、こっちの落ち度ではないからなぁ。」


 僕らは、顔を見合わせてニヤリと笑った。

 覚悟を決めたら、次は今後の展開を考えておかなきゃいけない。


「あの3人は納得するかな?」


「さあなぁ。これまで良い装備を振り回して少し増長してたからなぁ、パーティーを抜けるって言うかもしれないな。」


「まあ、パーティーを抜けたって借り物は返さなきゃいけないんだけどね。」


「念のため、それぞれの名義にしといて良かったな。」


「まったくだね。」


「ジェームズ。」


「ん?何?」


「次は、もう少し背中の預けられるメンバーを集めよう。」


「はっはは!僕も同じ事を考えてたよ。」



 僕らがダンジョンから戻ったら、スポンサーから連絡が入っていたので、僕は丁重にお断りしておいた。

 装備は月末にお返ししに行く事にして、僕はパーティーへの説明と、これからの展望を考えるのに忙しい。

 連中が、余計な事をしないと良いけど・・・。

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