347話 『ビッグキャット』再戦 side遥
『ビッグキャット』との再戦に向け、幸太の掲げた作戦は、あまりにも信じられない物だった。
たったの6人、ミューズちゃんを入れても7人しかいないパーティーで、大群を翻弄し包囲殲滅してやろうと言うのだ。
確かに、1匹づつは大した脅威にもならないケットシーだけど。
一般人ならば簡単に殺せるほどの攻撃力、低レベルの人なら確殺できる攻撃魔法、軍人さんでも手古摺る変幻自在な魔法と戦術。
『ビッグキャット』という強者に率いられた群れは、決して侮れない存在だ。
だけど、僕は反対意見を言えなかった。
代替えする、案や作戦を思いつけないからだ。
作戦は、そのまま決行される事になってしまった。
あれほど剛胆に見えるソフィアでも、緊張している様だった。
そのソフィアとミラを見送ると、すぐさまミラの魔法の音が聞こえて来た。これが聞こえているうちは、2人は健在なはずだ。
これまで見た事もないほどの数の魔法が放たれ、思わず震え上がりそうになった。
だけど、次の瞬間には、魔法の発射元に起こる爆発が、ケットシーの群れを吹き飛ばしてみせた。それが、2回も続くと、僕でも落ち着いて来る。
最も攻撃力のある、攻撃魔法の使い手を率先して狩っている。
「陣形が崩れたね、遥、エミリア、そろそろ出番だよ。」
何で君は、そんなに落ち着いてるんだい?
今聞く事ではないと思い、僕は何とか、喉まで出かかった疑問を飲み込んだ。
僕らに【コート】の魔法をかけながら、幸太はミューズちゃんに声をかける。
「ミューズ、2人をお願いね。エミリアは直感で動くから、好きにさせればいいから。遥はちょっと入れ込むところがあるから、その都度声をかけて、リズムに乗せてあげて。」
『分かったのです!任せるのですよ!!はいよ〜、エミリアーぁ!!』
え?このメンツで、リーダーはミューズちゃんなの!?
僕らあんまり信用されてない!!?
エミリアさんが走り出してしまったので、僕も慌てて後を追った。
崩れ始めた敵の陣に、突撃する僕ら。
攻撃魔法はミラたちが引きつけてくれてるし、幸太から万全の支援を受けてる今ならば、突破する事さえ出来るかもしれない。
そんな僕の思いを嘲笑うかのごとく、エミリアさんはスルリと方向を変えた。
僕も再び慌ててついて行く。
いったい、エミリアさんが何を見て、何を感じてそう動いてるのか、僕にはさっぱり分からない。作戦通りだと言えば、その通りなんだけど。そのタイミングが、よく分からない。
もう少し、陣の奥まで侵入出来たと思うのに、彼女はあっさりと方向転換したんだ。
『遥、肩の力を抜くのです。見せ場は、もう少し後なのですよ?』
エミリアさんの背負ったリュックから、ミューズちゃんが頭だけ出して、話しかけて来る。
群がって来るケットシーを切り捨てながらも、僕らは動き続ける。
『演出と似てるのです、登場して終わりではないのです。これまで、幸太の用意した演目に、幾つも出演し編集してきた遥ならば、感じ取れるのですよ。』
下草の少ない足場を僕らは疾走する。
群がるケットシーを、時に切り捨て、時に引き離し、攪乱する。
『音を聴き、リズムに合わせて踊るのです。』
そうして、ミューズちゃんの声に耳を傾けながら戦っていた。
ふと気付くと、さっきからエミリアさんは足場の良い所を選んで戦い、ケットシーを引きつけると移動していた。
『指揮者の振るタクトを見て、コンマスのリードに耳を傾けるのです。』
幸太の【光の矢】が空を走り、ミラの【爆発魔法】が炸裂する。
エミリアさんが吠え、【ベルセルク】を起動させ動きを加速させる。
『さあ、流れを掴むのです!!』
自分の身体が、自然と動き出すのを感じた。
ああ、エミリアさんは、いつもこういう感覚で戦っているのか・・・。
頭より先に身体が動き、頭脳より早く目と耳で処理しているかのようだ。
【ベルセルク】によって、力と素早さを強化されたエミリアさんが、僕でなければついて行けない速度で、暴虐の化身と化す。
彼女のタイミングを狂わせようとする輩を切り捨て、取り零しを黒い霧に変えて、彼女を加速させる。
光のタクトが振られる姿を、僕は幻視した・・・!出番だ!!
『見せ場なのです!!』
僕は、エミリアさんと競うように、『ビッグキャット』に突進した。
【幻影魔法】に【インビジブル】による透明化、翻弄されてなお楽しい!
辺りを、ケットシーに囲まれている事は理解していても、全く負ける気がしないんだ。
ただただエミリアさんと、どっちが先に当て、どっちがトドメを刺すか競っている感じだ。幻影だと思えば空間ごと薙ぎ、本物だと思えば突いてみる!
最後はソフィアにお膳立てされて、僕がトドメを刺した。
思わず口から声が漏れた。
「やった!」
集中力とMPの切れた僕たちは、その後が大変だった・・・。




