322話
ミラさん視点です。
キリッと引き締まった顔つきで、汗を拭うソフィアの横顔を見ていた。
パーティーのみんなと恐れずに意見を交わし、深く思考する姿は、この4年という月日を、取り返そうとしているかの様な勢いだ。
幸太に言って、週に2日、別で活動させてもらっている。
その成果は微々たるものだが、確実に全員が成長して来ている。
立ち位置、戦略、声かけなど。
出来てはいた、でも足りていなかった。幸太が、あまりに簡単そうに熟していたから、考える事すら、次第に忘れていった・・・。
追いつけない訳だ・・・。
「どうしたソフィア?何か問題点か?」
「ミラ・・・。いえ、今と似た様な事をしていたのに、何であの頃は、上手く行かなかったのかと思いまして。」
ソフィアが倒れた、パブリックスクール時代の話か。
あの頃の事を思い出し、考える事が出来るほどに、今のソフィアは回復して来ているのだな・・・。
「そうだなぁ・・・。1つは、やっぱり年齢による経験の差だろうな。あの頃はガキもガキ、クソガキ共の集まりだった。しかも、その上澄みを集めて、濃縮する様な環境だったからな。違って当然だろう。」
「おや?学年切っての問題児が、なかなか言いますねぇ?」
「いやいや!私は絡まれていただけさ、クソガキ共を全て論破してやったから、そんな風に言われてしまったのさ!」
今ならば分かる。
私に絡んで来た連中は、本当はソフィアに自分の優秀さをアピールしたかったんだ。
当時からソフィアと仲の良かった私が、邪魔だったんだろうな。
それなのに、私に論破されソフィアに注意されて、敵意だけが着々と醸成されて行くありさまだった。私たちが、男女の違いというものをもう少し理解していれば、上手くあしらってやれたのかもしれないな。
「1つは、と言いましたねミラ、他にも何かあるのですか?」
「今の私たちには、ハッキリとした道標がある。」
「・・・あの頃にも、監督生は居ましたよ?」
「そうだな。だが、私たちが目標にするには至らなかった、あの程度ではな。」
「ミュラーの名に阿る、弱さのせいでしょうか?」
監督生なのだから、もう少し堂々としていて欲しかった。
それもある、ソフィアの考えも間違いではない。
「それもある。それもあるが・・・、私の見立てでは、連中はソフィアの美貌に参っていたのではないかと、そう見ている。」
ソフィアが、キョトンとしてしまった。
「肝心な相手には、何ら効果を発揮していない程度の物ですけどねぇ?」
「全くだな。それでも、あのエミリアでさえも慌てさせ、アデレードを追い込むくらいには強力な武器なのだよ、ソフィアくん。」
「おかげで、乗り遅れました。」
「私たちは、まだまだ未熟だね。相談には乗るよ、色事にはトコトン疎い私だがね。」
どちらからともなく笑い、刹那の時間を楽しむ私たち。
幼かった昔に、返ったかの様だった。
「眩しいですね・・・。」
道標の事を言っているのだろう。
リーダーとして、指揮官として、幸太はその範疇を超えて優秀だった。
幸太ならば、ソフィアより上手くやっただろう・・・、なんてソフィアは考えているのだろう。
ハッキリ言おう、無理だ。
ソフィアの美貌と権力に、蛾の様に集まる魑魅魍魎を前にしたら、さすがの幸太も逃げ出すに違いない!!賭けてもいい!
「・・・あれ?もう1つを、聞き忘れた気がします。」
「なんだ、具体的に聞きたいのか?」
「いえ、やっぱりいいです。私も、しっかりと見て来ましたから。」
ソフィアのその表情は、完成された美に生気を湛え、ただただ美しい。
その表情を向けられたかったクソガキ共に、言ってやりたい。
ざまあみろ、と。
あれ?
キャラクターに任せてみたら、予想外の方向に飛んでったよ・・・。




