35話
ミラが喋り過ぎて、遅れてラーメンを食べているのを横目に、僕たちはクリーム白玉を頬張り、店を出る。
モチモチの白玉が、ソフィアの感性に刺さったのか、とても嬉しそうで、僕は眼福だった。
イタリア人じゃなくても、ワンチャン狙ってみたくなるのも頷ける。
まあ、僕はそこまで無謀じゃないけどね。
「くっくっく、これで、あのクラスのバカ女を見返してやれる。」
ああ、うるさい仕切り屋は、男子だと思っていたけど、女の子だったのか。
少数の方が効率が良い証明になるという意味で、ミラは見返すと言ったのだろうと、僕は当たりをつけた。
何か、他にも言われたのかもしれないけどね。
「城咲ね、さすがにちょっと鬱陶しいのよね。今日もどうするんだとか聞いてきて、ダンジョンよりも買い物に行こうとか、余計なお世話なのにね。」
「連日、あんなにクラスの雰囲気を悪くしておいて、よく私たちを誘う気になるよな。あれは絶対ソフィアを餌に、男を釣り上げようとしてるな、間違いない!」
城咲さんね・・・、それにしても、相当、面の皮の厚い人らしい。地雷キャラみたいだし、踏みたくないから覚えておこう。
女の子でも、そういう形の下心があったりするんだね。
ダンジョンに戻って来たけど、入学シーズン最初の土日だ。
入り口に近い辺りは、この間と同じ混雑ぶりだ。
僕を先頭に、人の群れを縫って奥に進んで行く。少し意外に思ったのは、僕がいる程度でも、ナンパ避けとしてきちんと機能している事だ。
それでも、これ見よがしの陰口や舌打ちは数知れない。
これらを全て無視して、2階層の入り口付近まで足早に移動して行く。
こんな時、平岩君なら『愚民共の怨嗟の声が心地良い!』とか、言ってくれるんだろうけれどね。
僕には出来ないね。
僕は、平岩君並みのレベルになれる日は来るのだろうか?なれても困るけどね。
怨嗟じゃなくて、嫉妬だと思うとかツッコムのが、僕の出来る精々かな。
彼と一緒に、ダンジョンを探索出来たら楽しかっただろうに。親に薦められた名門校を、渋々受けて、受かっちゃうんだもんね。
本当に彼は非凡だよね、色々な意味で非凡な人だったよ。
日曜日の朝にやってる、アニメの魔女っ子ショーを見に行こうとか、展示場までお供したのは黒歴史だけどね。
そうこう余所事を考えているうちに、人の群れを大きく離れて、目標の場所に到着した。
「ここまで来れば良いでしょう。あっちに2階層への入り口があります、あれの周りを回る感じでゴブリンを探してみましょう。」
「あー、悪いコウタ。あたしは大丈夫なんだが、2人がお疲れだ。」
しまった。
結構な距離を早足で進んで来たんだった、Lv0の2人にはきつ過ぎた。
失敗だ。
普段から僕は、【支援魔法】を使っているから、数分で走りきれるので、忘れていた。
「ごめんね、2人とも。」
「いえ、大丈夫。それでも、少し、休ませて・・・。」
「・・・。」
ソフィアは息も絶え絶えだった、ミラは声を出すのも辛そうだ。
水分補給をして、少し休憩した。
【支援魔法】もなしに、ついて来れるエミリアは、初期ステータスが相当高かったのだろう。
これまでの、本人の努力の賜物だから文句はないけど、正直、羨ましい。
「エミリアさんは、クラスメイトとダンジョンに来てるんですよね、調子はどうですか?」
2人がお疲れなので、必然的にエミリアと時間を潰す。
「いい加減、エミリアで構わないぞ?菊池たちも一生懸命やっている、女の子の美に対する欲求を舐めちゃあいけない!」
「・・・少しずつ、努力します。」
「努力が必要な事なのか?まあ、いい。ラーメンはカロリーも高いし、肥らない身体は是が非でも欲しい!日本に来てからあたしは肥ったからな。」
僕はおもわず、エミリアの細いお腹を凝視した。
さっき食べたラーメンと白玉が、どこに入ってるんだと言いたいくらいに細い。
「コウタ、見るならこっちだろ?」
エミリアはそう言って、両手で自分の小ぶりの胸を持ち上げてみせた。
僕は、自分の顔が上気していくのを感じた。
「な、な、な、・・・なんでだよ?」
「ふふふふ、コウタも動揺するんだな!あたしたちに全く興味を示さないから、あたしに魅力がないのかと思ったよ。」
「え?えええ・・・。とっても、綺麗だって思ってるよ?」
「そうなのか?意外だな。先ほどまで、全くこちらに意識が向いてなかったように思えたんだが、あたしの気のせいだったか?すまない。」
「いえ。」
はい、確かに向いてませんでした、すみません。
でも、人が多くて、奇襲の恐れもなさそうだったし、許して下さい。
そういう意味で、言ってる訳ではない気もしたけど、勘違いだと恥ずかしいので考えない事にする。
「ちなみに、肥ったのはこっち!」
その話、まだ続けるんですね!?




