34話
「という事で、ラーメンだなコウタ!」
「ごめん、エミリア。どうしてこうなったのか、サッパリ分からない。」
せっかくの休みだってのに、休憩をしにダンジョンの外まで出て来たところを、エミリア、ソフィア、ミラの3人組に捕まって、連行されたのがラーメン屋だったんだ。
京風ラーメン『あかさたな』、和風出汁がきいたサッパリとした味わいが特徴の名店だ。
デザートのクリーム白玉が、個人的には激推しだ。
数ある和風デザートの中に、なぜか存在するこの逸品。モチモチの白玉を、濃厚なソフトクリームと一緒に口に運ぶんだ。これがとっても罪な味がするんだよね。
ただ、このお店、1つだけ問題がある。
「無理に誘った、今日は私が奢ってあげよう、感謝するように。」
「ミラ、恩の押し売りはダメよ、普通に頼みましょう。」
彼女たちは何か思惑があって、僕を誘ったようだ。
それなら遠慮は要らないな。
「ミラ、ゴチになります。」
「ゴチになります!」
「エミリアにまで奢るとは言ってない。」
そして、僕らは店内に足を踏み入れた。
このお店の問題は、ラーメン屋のくせに、女性のリピーター率が高すぎて、僕が浮くって事だ。
今も、土曜日のお昼時だってのに、ほとんどが女性だ・・・。
僕が二の足を踏むのも、分かってもらえるだろう。
人気のイタリアンと一緒なんだ、男性率が低過ぎて、若干、居心地がね。
店内も清潔でオシャレで、ここラーメン屋?って言いたくなる。
「コウタ!ここのオススメは何だ!?」
「京風ラーメン1択、デザートにクリーム白玉を付ける事も忘れちゃいけない。」
「よし!あたしはそれで!」
「僕も。」
ここ数日、毎日会ってるからエミリアの対応には慣れたものだ。
まあ、クラスメイトだし、当然だね。
この前クラスメイトとダンジョンに行って、翌日からどうなるかと心配したけど、今のところは問題は起きていない。
普通にみんなと話せているし、装備や探索者の動画サイトの感想を言いあったりもしてる。
未登録組は大変だったみたいだ、入り口の混雑を抜けられずに、苛立った人とぶつかって喧嘩に発展しそうだったそうだ。
お互いに穏健な人が相手に詫びて、事なきを得たとか。
やっぱり、適切な人数で別れないと、厳しいよね。
「とりあえず、聞いてくれ、愚痴らせてくれ。」
「ミ、ミラ?」
「この間、クラスの連中とダンジョンに行って来たんだ。」
うわぁ、ミラもか。
オチが読める、でも、聞くしかないかぁ・・・。
「私は適当に別れて潜ろうって言ったのに、クラスの奴がみんなで行こうって、聞かないんだ。効率を考えれば、数人に別れて行動する方が良いに決まってるのに、なぜか聞かない。その上、未登録の奴らまでいるんだぞ?ずらっと並んだ登録待ちの列を見た時に、私はもう1度別行動を提案したんだ。なのに頑なに聞き入れない。」
・・・ミラが、暗黒面に堕ちそうな勢いです。
僕としては、とっても共感出来る内容で、ミラに親しみが湧いて来る。
「だから、私はそいつらを放り出して、ソフィアと2人でダンジョンに向かったんだ。」
なんて行動力だ、僕には、とても真似出来ないよ・・・。
尊敬を通り越して羨望を抱くよ。
それで、今日は会った時からジト目だったんだね!
おかげで、用件も聞かずについてきてしまった。
2人のクラスは一緒だったんだね。
「そうしたら・・・、ダンジョンに向かうところからナンパだ!ソフィアがいるから、ある程度はしょうがないが、断っても断っても、うじゃうじゃと寄って来やがって!!」
うわぁ・・・。
日本にも身の程しらずが沢山居たか、イタリア人じゃあるまいし。
「ダンジョンの中でもだぞ!?やけにしつこい奴までいて、探索どころじゃなかった。よっぽどか亡き者にしてやろうかと思ったよ。」
「うんうん、僕個人としては殺っちゃえって言うところだけど、法律的にはやっぱりマズイよね〜。」
「さすがは幸太、話がわかる。」
何がさすがなのか、ちょっと分からないけど、ここはスルーで。
「翌日学校にいったら、クラスメイトが協調性がどうとか文句を言ってくるし!お前の間違った協調性の認識を、私に押し付けてくるな!!てな感じで、朝からそのバカを叱りつけて、クラスの雰囲気が最悪だ。」
「本当に、あの人はどうかと、私も思います。」
ソフィアさんも思うのか、協調性よりも、自主性や独立性を重んじる人たちなんだね。
ん?もしかして、バカな仕切り屋は男なのか?
と、なると、ソフィア辺りに対する下心で動いているのかも?
おっと、ラーメンが来た。
醤油ベースの出汁の良い香り・・・、これだよね!
「それなのに、エミリアはクラスメイトと上手くやれていて。ついに昨日、Lvが1に上がったそうなんだ。」
おお!エミリアも放課後にダンジョンに行っていたのか。
しかもクラスメイトと。
ああ、あのグループはやる気がありそうだったからね。
男子組も頑張ってるらしい、僕は一緒には行っていない。
遥君に、追いついたら一緒にやってほしいって言われてる。本当に彼は周りへの配慮が出来る人だ。
天は彼に、身長以外の全てを与えたんじゃないだろうか?
僕よりも、2〜3㎝低いからね。
それでも、導火線を探したくなるほどのイケメンぶりだけどね。爆発しないかなぁ。
リア充じゃなくても、イケメンは爆発しろ主義だからね僕は。
「あ、エミリアLvアップおめでとうございます。」
「ん?ん!」
うん、ラーメンを食べながら返事をしなくても良いからね。
せっかくの美人が・・・、輝いてるね。
本当にエミリアは美味しそうに食べるなぁ。
「エミリアのLvが上がったって事は、私たちも、後少しである可能性が高い。そこで、幸太にはナンパ避け兼引率をお願いしたい。ソフィアやエミリアを前にしても、ダンジョンの探索をぬかりなく続ける事が出来る、君が適任なんだ。」
まあ、2人を見れば邪な心が働いて、探索そっちのけになるのも頷ける。
「何なら、君次第では、今後パーティーを組んでも良い。どうだろうか?」
パーティー、ゲームをする人にはお馴染みで、説明も要らないだろう。
一緒に探索、探検をする仲間の事だ。
ギルドで正式に登録しておくと、若干の優遇措置があるのだとか?
ただ、ゲームと違って、パーティーを組んでるだけではLvは上がらない。
探索や討伐に貢献した人に、経験値的な何かが貯まってLvが上がるんだ。
これを、誰の基準で分けているのかはわからないし、誰が分けているのかも分からない。ダンジョンなのかモンスターなのか、あるいは神なのか。
「・・・今日の事に関しては、別に構わないし、時々一緒に探索するのなら、それでもいい。ただ、パーティーを組む相手は慎重に決めたい。」
ミラはニヤリと笑った。
たぶん、ミラの事だから、ここで飛びついて来る奴なら要らないとでも、思っていたのだろう。
それを察した訳じゃないけど、僕の返答は彼女の満足いくものだったようだ。
彼女は思った以上に、友達思いなところがあるらしい。
僕のは、ただの本音だ。
僕はダンジョンに入る事で、特別な何かに変われると思ってやって来たんだ。
どうすればいいのか、未だに見当もつかないけど、僕なりに一生懸命やっている。だからパーティーを組む人は、思いは違ってもいいけど、同じくらいの熱量でダンジョンに向かえる人じゃないと嫌なんだ。
そうじゃないと、長続きはしないと思うんだ。
まあ、最近ちょっと、ダンジョンに潜る事自体が目的になって来てる所はあるけどね。
ここで1度、目的意識を失っていませんアピールを入れておきました。
ちょっと苦しい?
だいぶ苦しいですよね!ごめんなさい。




