295話
本来ならば、十分な時間をかけて準備するはずの事業を、僕らは突貫作業で成し遂げる。
なぜならば、両軍がダンジョンから出てからコンサートを開催するなら、彼女である必要はないからだ。それに、今唐突に行う必要だってない。
だけど、今後、長い時間をダンジョンの中で過ごす計画を立てる時、隊員に娯楽が必要になって来る。その時のテストケースとして、今回行う事に価値が出て来るんだ。
これまでの二の舞にしない為にも、ストレスの発散とリラクゼーションは課題だからね!
って事をミラから説明されました〜。
うん!僕がそこまで考えて発言してる訳ないって!!
戦地に、歌や娯楽を届けたって、何かで見たから言ってみただけだよ!?
どっかの大統領が、わざわざ戦地に行って鼓舞した、なんてのもあったね。
僕なら、絶対アーティストが来てくれた方が嬉しいけど、軍人になるような人は違うのかな?ちょっと分からないね。
「でも、どうすればいいんだろう?」
「遥、こういう時は、言い出した本人に聞くのが一番早い。それを元に叩き上げて行くんだ、もっと時間のある時なら、歌い手と話し合って決めるのが最善だが、今回は何しろ時間との勝負だ。」
せっかく遥が頑張って考えてくれてるのに!ミラなんて事を言うんだ!?
それじゃあ、僕が考えなきゃいけないじゃないか!!
これなら、丸投げ出来ると思って提案したのに、台なしだよ!?
「ぅ〜〜っ!!仕方ないかぁ、悔しいなぁ、僕が演出してみたかった・・・。」
遥!?諦めるな!諦めたら、そこで試合終了だよ?って言葉があるじゃないか!!
え?ダメ?僕が考えるの?
そうですか・・・。
みんなの視線が、僕に向いてる。
せっかく会見が終わったのに、早くも打ち合わせが必要な事態だからね・・・。
・・・ダンジョン、行きたかったなぁ。
「もちろんダンス大会の踊りを流用する。それと、パーティー毎に1曲、踊ってもらおう。アラジ○の曲だけど、分かるかな?」
「ええ!それなら大好きよ!」
さすがディズニ○、ノルウェーでもしっかりと知られている様だ。それなら、もう一つ、僕でも分かる曲をお願いしよう。
「ジブ○の曲は、何か分かる?出来れば、楽しい曲が良いな。」
「○ブリは大体分かると思うわ!」
これなら、みんなやりやすいはずだ。
知らない曲に合わせるのは難しいからね、これまで、何十曲と踊って来てる僕が言うんだ、間違いないよ。まあ、最近は2回も見れば踊れるけどね・・・。
僕も成長してるなぁ・・・。将来はダンサーかな?
「ミラ、みんなが知っていそうな曲を数曲選出してくれ、出来れば歌えるレベルの物が良い。だけど、国歌はなしだよ?僕らが歌ったら、しらけるといけないからね。」
『はいはいはい!第9が良いと思うのですよ!!知名度も十分なのです!それに、配信を見た事のある人なら、高揚する事間違いなしなのです!!』
「「なるほど!」」
ミラや遥が納得したなら、間違いないね。
シセルさんも頷いてるし、これから覚える必要はなさそうだ。
「ミラは、軍人さんに手紙なんか届けてたよね?」
「ああ、最近は減ったが、子どもの写真なんかを時々届けてるな。産まれたての赤ん坊は、すぐに大きくなるからな。それが、どうかしたか?」
「それとなく、歌詞を回しておいてくれない?数人で良いんだ。」
「・・・それは、盛り上がりそうだね。」
「なるほど・・・、みんなで歌えば一体感も増す。良い手だ・・・。」
ミラ・・・、コンサートに一直線な遥を見習おうよ。明らかに、政治的、もしくは軍事的な視点で発言してるでしょう?
シセルさんなんか、みんなと歌って盛り上がる所を想像して、ワクワクしてるよ?
『みゅ?おお、早過ぎるのです・・・。菊池が、保護者の同意書をさっさと寄越せと、言って来てるのですよ。』
「今、大使が用意してくれてるよ。学校で渡すって言っといてよ。」
まさか、その日が終わる前に、書類を請求して来るなんて・・・。
その後も、知名度の高い曲を選出していった。
まあ、素人の僕らに2時間は無理だ。なんとか1時間をめどに計画を立て、両国には了承してもらう。
また、忙しくなりそうだねぇ・・・。
どの程度の娯楽が、必要とされるのでしょうね?
最前線に行く部隊のサポートスタッフ。効率を考えるなら、常在するしかない訳で、電波も通らないダンジョンに常在・・・。
この程度は、必要だと思います。・・・たぶん。




