3話
法律の事とか、自信がないのでさらっといきます!
両親には無理を言った。実家からでは遠過ぎるし、豊田市には親戚も居ない。
なので、高校を豊田にして、近くにアパートを借りてる。ダンジョンが現れて地価が暴落して、家賃も暴落したとはいえ、一般家庭でそれを捻出するのは楽な事ではないはずだ。
もしかしたら、貯蓄を切り崩したのかもしれないし、父さんが昔からやっていた株を一部売ったのかもしれない。
ダンジョンで僕が大成功するとは思っていない、だけど、覚えておいていつか返そうと僕は決めている。
高校が始まるまでには、まだ少し日にちがある。
だから、僕は当然ダンジョンに向かった。今日は登録と少しだけダンジョンを覗いて帰る予定だ。
登録は、原付免許を取得するより簡単だ。でも一応、ライセンスとも呼ばれている、そのうちちゃんとした法制度を作るつもりなのだろう。
ギルドに到着した、僕の借りてるアパートから歩いて10分ちょっとだ。
ダンジョンが現れて、専門の省庁とか自衛隊の部隊とか色々と大変だった・・・らしい。
その辺は詳しくないから知らないけど、『探索者』と言われるダンジョンに潜る一般人の為の施設が、ダンジョンの直ぐ前に建てられた、これが『ギルド』だ。
正確には、長ったらしくて小難しい名前の組織なんだけど、通称『ギルド』とみんな呼ぶ。
社会のテストでも正式名称が出題されていたけど、僕は書けなかったよ。
良いんだよ!世界的には『ギルド』で通用するんだし、正式に『ギルド』で登録してる国も1つや2つじゃないんだから!
来年の国会で改名するんだし!テストに出さないでよ!!
まだ、決まってる訳じゃないけど、あの麻生総理が言ってるから、ほぼ決まりだろうね。今の政治家に、麻生総理に逆らえる奴は居ないよね。
むしろ、世界の標準に合わせないと、世界に置いて行かれかねない。何かあったら、責任は麻生総理に取って欲しいだろうから、無駄に邪魔をして、国民に無能呼ばわりされたい政治家はいないだろう。
「いらっしゃいませ。本日はどの様な御用件でしょうか?」
「えーと、『探索者』登録がしたくて・・・。」
僕はついにギルドの窓口に立っていた。
ちょっと緊張する。
銀行や市役所の窓口に近いだろうか?
だけど、正面玄関といい窓口といい、豊田市の財力を感じる・・・。
実家のある地元とは違うなぁ、窓口のお姉さんも綺麗だし。
「申し訳ありませんが、ご年齢をお伺いしてもよろしいですか?」
「あ、はい、15歳です。今年中学を卒業したばかりです。」
この辺の情報は確認済みだ。
最初日本では、民間人のダンジョン侵入は忌避されていた。だが、毎年増えるダンジョンに、日本は対応を迫られていた。
法律の改正を毎年のように行って、民間人の侵入の許可が出て、成人している事が条件になり、15歳以上になり、そして、今年から年度ごとに改正された。
誕生日によって区切ると、不公平感が出るからだ。
学年で学校には行けるのに、年齢で区切られるのはおかしいという建前だ。
まあ、実際には、政府がダンジョンにどんどん人を送り込みたいのだろうと言われている。
学校が始まってからにすると、春休みの時間が無駄になるので、中学卒業に統一されたんだ。
この辺からも、本当に切実なのだろう。
徴兵してる国々は、徴兵直後の人たちをどんどんダンジョンに送り込んで、探索を進めているそうだからね。
「本日は、何かご本人確認が出来る物をお持ちでしょうか?」
「はい、これを・・・。」
僕はマイナンバーカードを出した。
保険証も持って来たけど、マイナンバーカードの方が情報が多くて、入力する必要事項が少ないとHPに書いてあったからだ。
「はい、お預かり致します。」
お姉さんが専用タブレットに読み込ませている。
何もある訳ないのに、僕はドキドキしながら待っていた。
「ありがとうございます、こちらお返し致します。こちらをお読み頂いて、ご理解いただけましたら同意を押して頂き、サインをお願いします。」
お姉さんがタブレットを出して来るので、言われた通り読んで理解する。
これを見てない、聞いていないって言うとライセンスを即時停止されるそうだ。
命に関しては自己責任ですよ、ダンジョン内で問題を起こさないでね、モンスターがダンジョンの外に出てしまった時に限り、強制召集される事があるけど了承してねって事が、難解な言葉で書いてあって、僕は理解するのに少し時間がかかってしまった。
目の前にずっと綺麗なお姉さんが居ると、緊張してしょうがない。
おかげで焦って、余計に理解に時間がかかってしまった・・・。
「出来ました。」
「はい、ありがとうございます。研究協力登録はされますか?」
「いえ、なしでお願いします。」
これは、またまた正式名称が長ったらしい、日本探索者スキル研究・・・なんたらかんたらって言う制度への加入の事だ。
これに入ると、月に5回以上ダンジョンに潜らないといけない、その代りに毎月『鑑定』が受けられるという制度だ。
『鑑定』と言うのはダンジョンから得られた特殊なアイテムを使うか、Lvアップ時にもらえるスキルで行うしかない『ステータス』を確認する手段の事だ。
だけどこれ、研究機関の人たちに、僕の『ステータス』がダダ漏れになる事を意味している。
自分に自信のない僕としては、なんとしても遠慮したいところだ。
「分かりました。後々でも登録出来ますから、もし気が変わりましたらご登録下さい。」
「あ、・・・はい。」
僕の気が変わる事はないだろうけど、とりあえずそう答えておいた。
登録料を渡し、探索者のライセンスカードを受け取った。
後は、初期ステータスを確認して完了だ。