閑話、自衛官三橋さん4
この日も、俺は食後の時間を利用して、いつもの配信を見ていた。
「三橋、おまえさん相当気に入ったんだな、その配信主。」
「もちろんっすよ!めちゃくちゃすごくないっすか!?あの『インペリアル・ブシドー』の近藤さんに、勝っちゃうんすよ!?」
「俺の目から見たら、何がなんだか分からんが、おまえさんには分かるのか?」
「あったり前っすよ!いや、真似はできないっすよ?あのスピードで、技を崩さず使うなんて、尋常じゃないっすよ!!」
「俺には8階層到達と、記者会見の発表の方が気になったけどな。」
それは・・・、もちろんっす。
この九州の危機的な状況を、多くの人に正しく届けてくれた・・・。
注目度の高いあの場面で、楽観の余地も、誤解の余地もない仕方で。
俺たちの努力と、みんなの犠牲が、無駄にならなくて済みそうで、ホッとしたっす。
「最初、CGかと思ったっす。」
「ああ、あれな、剣が光ってるやつな!もしかして、あれならゴーストに効いたりもするんだろうか?」
「ああ〜、あり得そうっすね!ぜひ九州に来たら試してほしいっす!」
あの光の剣で、ゴーストをズバーっと!
うっひゃー!良いっすね〜!!
「まあ、おまえさん向きのスキルだわな。」
「欲しいっす!」
「習得したら、九州のダンジョンから離れさせてもらえなくなるぞ?」
「うへぇ!俺、豊田で鬼とやり合ってみたいっすよ〜。」
双葉の奴なんか、もう移動願いなんて受け取ってすらもらえないっすよ。攻撃魔法なんて、習得すると大変っすね〜。
「名古屋(豊田)のダンジョンに行けたら、今野の奴によろしく言っといてくれ。」
「何すか!?先輩この司会の美人さん知ってるんすか!!?」
「ああ、スキルを習得しちまった、可哀想な奴の代表だな・・・。」
うへぇ・・・。
そっちっすか?
「何処からか、Lvアップが美容に効くって聞きつけて、入隊しちまった変わり者だな。めちゃめちゃ良い大学出で、あのルックスだぞ?当時は、バリバリのエリートコースだと思ったもんだが。今やギルドの顔だ、どっちが良かったのかねぇ?」
それは・・・、どっちすかね?
「今の時代、出世よりも私事の充実こそが大事だって奴も多いし。あれは自衛官より、民間の方が肌に合いそうな奴だったよ・・・。」
優秀な人も大変っすね〜。
「それよりおまえさん、いい加減自分のタブレット買えや!!」
「面倒臭いんすよ〜。設定だ、契約だって、あいつら散々時間かけやがって!こっちを素人だと思って舐めてるんすよ!」
「あーあー、分かった、今度一緒に行ってやるから、買ってこい!そのくらいの貯蓄は、おまえさんだって持ってるだろ?」
面倒見の良い先輩は、変わらないっすね〜!こういう人をもっと出世させなきゃダメっすよ!
「あのストライキ以来、給料自体は上がってるっすからね!先輩、使ってる時間がないっす〜!!」
「それは俺もだよ!だからって、キャバクラや風俗に走って身持ちを崩すなよ?」
「もちろんっすよ!どっかのアホの二の舞はごめんっすよ!」
「「酒と女は嗜む程度で!」肝に銘じるっす!」
先輩と笑っていると、宿舎に緊急出動音が鳴り響いた。
『九州のダンジョンにて氾濫が発生!繰り返す、九州のダンジョンにて氾濫が発生!総員直ちに出動せよ!!なお、これは訓練ではない、これは訓練ではない!!』




