240話
それは、どう見ても女性の下着だった・・・。
薄紫色のスケスケで扇情的な、エッチな下着だった。
僕はそっと宝箱に戻して蓋を閉じる・・・。
だが無情にも、宝箱は自分の役目は終えたとばかりに、その姿を消していった。
目を逸らし、見なかった事にしたかった・・・。
『さすがはご主人様なのです!!虹箱から、エッチな下着を出すなんて!笑いの神はすでにここに居たのです!!』
ミューズが、ケラケラと笑い転げながら喋ってる。
仲間たちは全滅だ、もはや意味のある言葉を発する事も出来ないほど、笑っている。
厨二病ご用達の『邪眼のマスク』を、これほどありがたいと思った事はない。
何しろ、顔を大きく覆い隠してくれるからね!!
全員が復帰するまでには、かなりの時間を要した。
被害は甚大だ・・・、主に僕の精神面だけどね!ズタボロだよ!?
ミラなんて、まだお腹を押さえながら喋っている。
「鑑定の結果次第では、公表せずに運用するかたちをとりたい。異論はあるか?」
「それが良い!みんなカットしよう!」
『「「それはない!」」のです!』
せっかく、僕が公開処刑されずに済むと思ったのに・・・。
僕はこれから、生きて行けるんだろうか?
社会的に、死んでしまわないか心配だ・・・。
みんな、鑑定結果が気にはなる様子だけど、ちゃんと辺りに気を配れている。
鑑定は、いつも通りアデレード先輩が担当だ。
サッサと渡してしまいたい。
僕が持ってるだけでも、犯罪を疑われかねないアイテムだからね!
「アデレード先輩、鑑定よろしくお願いします。」
「はい。」
女性の下着を手渡すとか、どんな変態シュチュエーションなんだろうね!
そんな艶やかな笑顔で受け取らないでよ、鼻血が出ちゃうよ!
・・・本当に出た。
僕は、瞬時に回復魔法を行使して、鼻血を止め、みんなにバレないうちになかった事にした。
上手く、隠し通せたと・・・思う。
大丈夫だよね?何しろ手すら動かしてないからね?
よしよし。僕は、自分の技に満足した。
「そんなに凝視められると、照れますわね。」
おっと、僕の顔はアデレード先輩の方に向いてるんだった。
「似合いますか?」
その身体に、さっきの下着を当てて見せる。
そのあまりの破壊力に、僕の努力は無駄になった・・・。
勢いよく鼻の粘膜を突き破った血は、僕が止める前に、辺りに噴霧された。
鼻血を止めるのにも苦労したが、みんなの笑いが止むのに再び時間を取られてしまった。
そして、鑑定結果がこちら。
『天女の羽衣』
意中の彼を虜にする、最強の武器。これで彼もメロメロに♡攻撃力:∞なんちゃって!
DEF:8
MDEF:8
特殊:状態異常耐性
特殊:セットで着用すると、状態異常成功率上昇
ダンジョンさん?お茶目が過ぎませんか?
ここのダンジョン、実は運営が違うんじゃない?
「ふむ。これだと、天使はみんな痴女ってわけだな!なかなかウイットに富んでるじゃないか。」
「天女と天使は別ものかもしれないぞエミリア。まあ、日本の神話では、あまり神だのが空に住んでる逸話は多くない。おそらくエミリアの言う通り、天使で間違いないだろうな。皮肉が効いてるな。」
「似合いますねアデレード。」
ソフィアさん?そんなにシゲシゲと見なくても・・・。
「バラで運用しても、状態異常耐性が得られるんだね。」
「「「「ありえない。」」」」
遥くんが珍しくミスって、女性陣にダメ出しされてる。
珍しいね。
喋れない僕に代わって、わざとやったのかもしれないけど。さすがに、それはやり過ぎだよ。
止めても止めても鼻血が溢れて来る所為で、回復魔法をさらに3回も使ってしまった。
じゃなくても血圧が低いのに、そろそろ貧血になりそうだよ・・・。
ミューズはいそいそと、ティッシュを出したり、水を創り出して、僕の顔を拭いてくれたりと、お世話をしてくれている。
「ありがとねミューズ・・・!?」
その時、遠くから轟音が聞こえた。
頑張れシリアス!
最近シリアスが死んでましたからね。
三途の川を渡りきる前に、戻って来てもらおうと思ってます。




