24話
人生初めての『宝箱』を開けて、トラップの脅威から意識が飛びそうになった僕。
『宝箱』の中身をジーンズのポケットに雑に押し込み、身体の不調から力の入らない身体を引きずり、ダンジョンの外を目指す。
ステータス的には、【支援魔法】の効果も続いていて通常よりも高いはずなのに、身体の不調の所為でせっかくのステータスを活かせない。
今度からは、体調不良や寝不足なども考慮しなければならない。
そんな事を回らない頭でツラツラと考え、重い足を引きずるようにダンジョンの出口を目指す。
やばい・・・。
またギルドのお姉さんに、お小言をもらうかもしれない。
個人的には、綺麗なお姉さんに叱られるのは嫌いじゃないので、歓迎したいところなんだけど、今の体調では本当に倒れるかもしれない。
人によっては、ご褒美ですとか言うらしいけど、僕はそんなハイレベルな変人さんじゃない。
中学の友人である、平岩君ならきっと言う!
あのお姉さんほど綺麗な人なら、平岩君も納得だろう。
彼は変人だけど、凡人じゃない。
そこが良かった、僕はそんな彼が羨ましかったんだ。
何しろ毎日が楽しそうだったからね。
そう考えると、少しだけ元気が出てきた。
女性は偉大だね。
想像するだけで力が湧いてくるよ。
平岩君のおかげだとは思いたくない、何しろ彼は変人だからね。
春休み中に、1度くらい一緒に遊びに行けばよかった。
そうしたら、オススメの春アニメとかで、盛り上がれたかもしれない。
いや、ないか。
彼はハイレベルの変人さんだ、絶対に幼女向け魔女っ子アニメを推して来るに決まってる!!
もうちょっと、ロボットとか、ファンタジー物とかあるでしょう!?
ただ、ファンタジー物は、ダンジョンが出来てから規制がかかっている。
制作禁止ではなく、実在するスキルと強さ、モンスターの姿を使えって言われているらしい。政府は公にし難い情報を、こうした所から国民に浸透させていこうと模索しているようだ。
ただ、それをすると主人公が無双したり、ど派手な魔法をぶっ放したり出来なくなってしまうんだ。
それで、製作会社も二の足を踏んでいるとは、平岩君の話だった。
「おっと・・・。」
傍らから奇襲をかけて来たゴブリンを、雑に切り捨ててしまった。
いけない、まだダンジョン内だ、集中しないと。
【支援魔法】がまだ持続していたからよかったものの、今のは危なかった。
僕が近づいて来るのをすすきの陰から、ジッと見つめて潜伏していたのだろう、本当に見事な奇襲だった。それを僕は、ステータスに物を言わせて、脊髄反射で上下に切り裂いてしまった。
なんとか、僕は雑念を振り払い、ダンジョンの入り口にたどり着いた。
色々と考えさせられる時間の探索だった。
ギルドに入ると、珍しくいつものお姉さんが居なかったので、僕は慌てて鑑定室の使用を申請する。
先ほど拾ってきたアイテムの存在を、僕は思い出したからだ。
ドキドキしながら扉をくぐり、いつもの鑑定アイテムを作動させる。
いつもと違う人に見られていると、なんだかちょっと落ち着かない。
鑑定結果が出た!
『MPリング』、着用者のMPを+50する腕輪。
DEF:3
MDEF:3
MP+50
!!?
マジか!?
ギルドHPで、能力値を上げるアイテムが2種類ある事は知っていた。
物を着用した時に効果を発揮するタイプのアイテムだ!
その上、防御力つきアイテムだ!
ゲームではど定番でも、今の時代には高価な品物だ!!
今後、ダンジョンからの産出量が増えれば、値段が下がり、御守り代りになるかもしれないって、ネットに書いてあった。
ダンジョンではこういったアクセサリーが、まれに出て来る。
だけど、今はまだまだ高価だ。
MP+100のアクセサリーが、このギルドショップでも売っていて、5000万円くらいの値段だった事を僕は覚えている。
それの半分って事はないのは、分かっているけれど。僕の拾って来たアイテムにも、ついつい期待してしまう。
まあ、売る気はないけどね。
これがあれば、僕は常時【支援魔法】を行使して戦える。すなわち、もっと先へ、もっと強くなれる!
もう1つの能力値を上げるアイテムだけど、こっちは食べるタイプのアイテムで、上がり幅は極小さいけど一生もののアイテムだ。
もちろん億単位のお値段で、ここのギルドショップにも売っていない。
あんな高い物をいったい誰が買うのやら。
僕は『MPリング』を服の下、二の腕の付け根にギュッと取り付け、鑑定室を出る。
僕が意気揚々と鑑定室を出ると、いつものお姉さんが恐い笑顔で立っていた。
さっき・・・、居ませんでしたよね?
ダンジョンの世間への影響も、少しずつ書いてみたいと思ってます。
服の下にしたのは、レア装備を人目に触れさせない為の処置です。




