223話
僕らは2台に分乗してギルドへ向かい、すでに用意してあったパーティー倉庫から装備を引き取り、車の中で着替えを敢行する。
『こういう時に、ご主人様のものぐさな性格が活きるのですね・・・。』
「そうだね。幸太は、普段からシレッと装備着て登校してるからね。こういう時には楽だよね。」
『いっくら制服の改造やら変更が大目に見られる校風とはいえ!ご主人様ほど、防具で身を固めて登校してる生徒は1人もいないのですよ!?』
「うちの学校って自由だよね〜。」
うん、うちの学校って割と制服の改造やら変更には寛容なんだ。まあ、さすがにブレザーを変えたら怒られるだろうけど、ネクタイやリボン、カッターにズボンまで、派手だったり、露出を増やしたりしなければ、まず怒られない。
遥くんや武藤くんみたいなオシャレさんは、暑くなってきてカッターを水色の物に変更してるし。エミリアも、レースや刺繍の入ったブラウスを着て登校してる事が多い。
それを良い事に、着替えが面倒くさい僕は、ポンチョ以外の防具を着て通学している。
こうする事で、アパートに帰ったらすぐにダンジョンに向かえる。
まあ、その所為で下駄箱に靴を入れておけないんだけどね!だって、盗難が怖いからね!
『幸太くん、もう話を始めても良いのかね?』
「はい、大丈夫です!お待たせしました大使。」
『いや、待っていないよ・・・?』
『ものの15秒の早業なのです・・・。もはや、呆れるしかないのですよ。』
通信機越しに、大使の呆れた声が響いてくる・・・。
ミューズと2人して・・・、酷いや。
もう1台の車からは、女性陣の賑やかな声が響いている。
『・・・もう少し、待とうか・・・。』
「そう、ですね。」
『メートル!?今、メートルって言ったか!!?』
『アデレード、さすがにそれはおかしいですよ!』
『まさに、桁外れだな!まあ、コウタは大っきいのが大好きだからな!きっと喜ぶぞ?』
おかしい?なぜ、エミリアが僕の趣味を知っている?
僕が言うはずはないし、教えた覚えなんてあるはずもない。
『はいはい。あら?これ私の帽子じゃないわ。ミラ、そっちに私の帽子無いかしら?』
『ん?ああ、これはアデレードの帽子だったのか?すまない、気づかなかった。』
『同じ帽子じゃないんですか?』
『一緒だろ?』
『そうなんだけどね。頭の大きさや髪型の違いがあるから、私用に調整してもらったのよ。』
『少し大きいと思ったら、そんな違いがあったのか。ソフィア、着替えの手伝いが必要なら言えよ?』
『もう!もう慣れましたよ、1人で着られますぅ!』
『最初の頃は大変だったからな〜。そういえば、私の槍は乗ってるのか?』
『トランクかな?』
・・・槍は、僕の足元に転がっている。
え?これ、答えるところ!?
だって、え?会話が筒抜けだって、伝えるの!?
『1号車に繋ぎましょうか?』
ナイス!誰だか知らないけど、貴女の配慮に感謝します!!
『お願いします。コウタ、あたしの槍って、そっちに乗ってるか?』
「あ〜、あるよ。」
『そっか、なら良いんだ!』
『コータさん、私の剣もそちらですか?』
「え?剣?」
僕は、慌てて辺りを見回す。
『ご主人様、後ろに積んであるのですよ!』
「お、ミューズナイス!有るって〜!」
『幸太ぁ〜。どこから聞いていたぁ?』
ひぃ!!?
ミラさん、僕の所為ではないんです!これは、あれですよ!フィッシャー大使のミスだって!
いや、運転手さんかな?どっちだっていいけど、僕は悪くないって!!
『アデレードのお乳の話からなのです!!』
ミューズぅぅぅう!?
『なんだ、つまらない。』
ええ!?
いったいその前は、どんな話をしていたっていうんですか!?心配になる発言はやめようよ、ミラ!
『あたしもまだまだ育ってるからな!期待しとけよコウタ!』
「え?あ、う、うん・・・。」
何て答えればいいんですかぁ!!?
助けて遥くん!!
僕が遥くんに顔を向けると、遥くんが腕で大きくバツ印を作ってみせた。
何て薄情な奴なんだ!そんな奴だとは思わなかったよ!!
『私も育ってますよ〜!』
ソ、ソフィア・・・?
君らは、僕にどうしろと言うんだ・・・。
『私も育ってるわよ〜。』
あれ以上ですかぁ!!?アデレード先輩!?
『驚きなのです・・・。すでに、学校1のお乳なのですよ?』
『滅びればいいのに・・・。』
ミラの怨嗟の声が、車内に静かに響いた。
『そろそろ、話をしてもいいかな?』
『『『「「はい!」」』』』
御宅の娘さんの声にも怯みませんね大使、さすがです!
ちょっと気まずい雰囲気の幸太くんでした。
伝わりましたか?
ちょっと、緊張感が足りないでしょうか?
難しいものですね〜。
シリアスにし過ぎると、ライトさが失われ、日常と非日常の境目がはっきりしてしまいます。これが、彼らの現実なんだと、そう感じていただけると嬉しく思います。




